お待ちかね、私の選んだ'2003年度・ベスト20の発表です。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、'2003年1月〜12月の間に
大阪にて公開されたものが対象となっております。従って、大阪公開が2004年1月以降となった「ヴァイブレーター」「美しい夏キリシマ」などは(期待しているのですが)対象外としました。ご了承ください。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
赤目四十八瀧心中未遂 荒戸 源次郎
シティ・オブ・ゴッド フェルナンド・メイレレス
東京ゴッドファーザーズ 今 敏
ぷりてぃ・ウーマン 渡邊 孝好
HERO <英雄> チャン・イーモウ
ボウリング・フォー・コロンバイン マイケル・ムーア
ラスト・サムライ エドワード・ズウィック
座頭市 北野 武
めぐりあう時間たち スティーヴン・ダルトリー
10 シカゴ ロブ・マーシャル
11 阿修羅のごとく 森田 芳光
12 戦場のピアニスト ロマン・ポランスキー
13 ホテル・ハイビスカス 中江 裕司
14 ジョゼと虎と魚たち 犬童 一心
15 キル・ビル クエンティン・タランティーノ
16 黄泉がえり 塩田 明彦
17 ゲロッパ! 井筒 和幸
18 ロッカーズ 陣内 孝則
19 おばあちゃんの家 イ・ジョンヒャン
20 g@me 井坂 聡
刑務所の中 崔 洋一

 

 個々の作品評については、以下の文中のアンダーライン付作品名をクリックしていただければそれぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

 本年度の1位は「赤目四十八瀧心中未遂」に決定です。こういうズシンと腹に応えるタイプの作品が最近少なくなっただけに、貴重な存在です。とにかく心に深く響きました。寺島しのぶが素晴らしい。予想通り(以上?)ほとんどの映画賞総ナメ。大楠道代もいつもながらうまい。撮影(笠松則通)もいい。荒戸監督、次回作期待してます。
 2位は、ブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」。1位とほとんど同率です。くわしくは批評を参照していただきますが、その荒々しいパワフルな映像が実に魅力的。そして見事な青春映画にもなっている。深作映画を彷彿とさせるが、私は同時にデビュー当時の石井聡亙(「突撃!博多愚連隊」など)を思い起こした。最近の邦画界にはそうしたエネルギッシュなパワーを発散させる若手監督が少ない気がする。出でよ、第二の深作欣二。
 3位は世界が注目するアニメ作家、今敏監督の力作「東京ゴッドファーザーズ」。米アカデミー賞にもノミネートされそうな勢い。…だと言うのに、わが日本での盛り上がりの無さはどうした事か。宮崎駿だけに注目が集まる傾向が強いが、もっと、目立たない所で頑張っている作家にも関心を持って欲しい。海外で話題になって、やっと日本でも騒ぎ出す…というなさけない状況はいいかげんにして欲しいと思う(押井守も北野武も山村浩二もみんなそうだった)。
 4位「ぷりてぃ・ウーマン」。ほとんど話題になりませんでしたが、私の推奨する“正しい娯楽映画”路線の一本としてイチオシしておきます。見れば絶対感動するのですがね…。
 5位「HERO<英雄>」。これは問題ないでしょう。落葉舞い散る野原での真っ赤な決闘シーンは、今でも目に焼き付いています。劇場で2度も観てしまいました。― 以上5本、甲乙付け難いベスト作品です。…ただ、昨年の「たそがれ清兵衛」のようなダントツの傑作がなく、ややドングリの背比べだったような気がしてちょっと残念ではありました。
 6位は「ボウリング・フォー・コロンバイン」。アメリカの抱える病巣に鋭く迫った快作。ブッシュ大統領に噛み付く威勢の良さが爽快です。振り返って、小泉首相に噛み付く反骨のジャーナリストもしくは映画人が何故日本にいないのでしょうかね。
 7位「ラスト・サムライ」。これが日本映画として作られなかったのが無念です。頑張れ日本映画!。
 そこへ行くと、日本映画で一人気を吐いたのは8位「座頭市」を作った北野武だったと言えるでしょう。なにせ興行収入は30億円と大ヒット。ヴェネチアでは監督賞に、トロント映画祭では観客賞、日刊スポーツ映画賞でも監督賞、そしてキネ旬はじめ、ウルサ型の映画賞でも軒並みベストテン入り、そして素晴らしいのが、キネ旬読者選出ベストテンで、ベストワン!…と、日本映画の中で作品レベルの高さと興行的成功とを共に勝ち取った作品は、間違いなくこの作品一本きりでしょう。それだけでも凄いことです。昨年は「Dolls」をワーストに挙げましたが、今年は文句の付けようがありません。それだけ期待が高い事を心に受け止め、さらなる力作を作って欲しいものです。頑張れ、北野武。
 9位に「めぐりあう時間たち」。いい映画です。これも2度観てしまいました。ヴァージニア・ウルフについてもっと知りたくなりました。調べればもっとこの作品の良さが分かるかも知れません。10位「シカゴ」。ミュージカル好きにはコタえられません。それにしてもリチャード・ギアのタップがもっと上手だったら、も少し上位になったかも知れません(笑)。―以上、ベストテンです。

 11位は「阿修羅のごとく」。森田も昨年はワースト2位でした。北野武といい、私がハッパをかけたらちょっと本気を出したのでしょうか(笑)。いやこれは冗談。しかし期待している作家がカムバックしてくれる事は嬉しいですね。ワーストテン作りにますます気合が入ろうというものです(笑)。
 12位「戦場のピアニスト」。文句のつけようがない力作です。完璧すぎて却って優等生のような物足りなさを感じてしまい、こんな所に落ち着きました。私的にはどこか荒削りの方が魅力があるのです(ちょっとアマノジャク?)。
 13位「ホテル・ハイビスカス」、17位「ゲロッパ!」、18位「ロッカーズ」―いずれも元気いっぱいの日本映画です。こういう元気が出る映画がいずれもミニシアター上映なのがもったいない。これらを全国的に上映させ、大ヒットするように(いや、させるように)、興行関係者、配給会社の人、頭を切り替えて研究してください。
 14位「ジョゼと虎と魚たち」。年末ギリギリ公開で、かろうじて滑り込み。ピュアな恋愛映画の佳作です。犬童一心監督、「二人が喋ってる」の頃はまだぎこちなかったけれど、1作ごとに着実に力をつけています。これからが楽しみ。池脇千鶴も熱演。
 15位の「キル・ビル」―私のように昔のB級映画ファンが喜ぶのは分かるが、興行的にも大ヒットするとは思わなかった。売り方がうまいと言えばそれまでだが…。ちょっと複雑な気分です。その点、16位の「黄泉がえり」がヒットしたのは素直に喜ばしい。塩田明彦監督、これを足がかりにさらなる飛躍を望みます。
 19位「おばあちゃんの家」。あまりどこのベストテンでも入っていないですが、とても心が温まる素敵な映画です。韓国では400万人を超す異例の大ヒットだそうですが、お隣の日本で何故これをヒットさせられないのか不思議です。
 20位「g@me」。わが国ではなかなか作られないコン・ゲーム的サスペンスを成功させた点を買う。
 次点の「刑務所の中」もいい映画ですが、観てから時間が経ってしまうと印象が薄くなってこんな位置にまで下がってしまいました。

 以上でベスト21の紹介は終りですが、やっぱり(笑)例によってもっと取り上げたい作品があるので、以下できる所まで紹介いたします。
 22位「わたしのグランパ」。好きな作品です。ベストに入れようと思ってましたが、次々ランクインさせたい作品が出てきてとうとうこんなランク外に…。しかし石原さとみが私の予想通り新人賞を総ナメにしてますのでちょっと気分がいいです。
 23位「六月の蛇」。塚本晋也監督独特のテンションの高さで一気に魅せられる。役者(黒沢あすか、神足裕司、塚本晋也)がみんないいです。
 24位「船を降りたら彼女の島」。これも個人的には好きな作品なんですけどね。
 25位「ファム・ファタール」。ブライアン・デ・パルマ復活。今度はDVDでじっくり観たい。
 26位「アバウト・シュミット」。私には身につまされる作品です。ハイ。
 27位「アイデンティティー」。くわしくは作品評を見てください。昨年一番気持ちよくダマされた映画です(笑)。
 28位「アイデン&ティティ」(あれれ?似た名前の作品が続いてしまった。まぎらわしいですね(笑))。ロックを通して描かれた青春映画の佳作。田口トモロヲ演出は、これが初監督とは思えない素敵な出来栄えです。ボブ・ディランへのオマージュが泣けます。
 29位「トーク・トゥ・ハー」。アルモドバル監督らしい不思議な恋愛映画。観ている間より、観終わってからいとおしくなる映画です。
 30位「ぼくんち」(阪本順治監督)。これも不思議な映画。鳳蘭と観月ありさの快(怪?)演を観るだけでも値打ちあり。

 …以上、ほとんどベスト20候補です。どれも入れたかったのですがね。
 そして、例によってまだベスト候補作品がありますので、あと7本だけ追加します。
31位「フォーン・ブース」
32位「オールド・ルーキー」
33位「ヘヴン」
34位「茄子 アンダルシアの夏」
35位「ドッペルゲンガー」(黒沢清)
36位「卒業」(長澤雅彦)
37位「猟奇的な彼女」(クァク・ジェヨン)
(「ファインディング・ニモ」がどこかへ行ってしまった。…まあ今回はイマイチでしたが…)

  
   ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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