ボウリング・フォー・コロンバイン (マイケル・ムーア 監督)

 本年度のアカデミー・長編ドキュメンタリー賞を受賞した、最近稀に見るドキュメンタリー映画の傑作。とにかく面白い!
 監督のマイケル・ムーアはジャーナリストで、アメリカ国内において銃による犯罪が多発しているのは何故か、その原因を本人がレポーター・インタビュアーとなって追求して行く。
 銀行の景品で銃が簡単に手に入る、スーパーで売っていた銃弾で高校生による銃乱射事件が起る・・・そういう実態を聞くだけでも我々にとっては衝撃的である。しかし同じように多数の銃が出回っているカナダではほとんど銃による犯罪は起きていない。その違いはどこにあるのか…ムーア監督はインタビューの過程でその真相に迫って行く。
 こうした、内容的には深刻になりがちなテーマであるのに、不思議とユーモラスな味わいがあるのは、ズングリした体にヒゲ面、野球帽といういでたちのムーア監督のキャラクターによる所が大きい。やがて、アメリカ人がすぐ銃や武器で事件を起すのは、その潜在意識に“恐怖心”があるからだ…というテーマにたどり着く(以前、日本人留学生が他人の庭先に入っただけで射殺された事件があったが、これを聞けば納得できる。コワい事だが…)。イラクへの先制攻撃も根は同じ所にあるのかも知れない。銃社会を擁護する全米ライフル協会会長・チャールトン・ヘストンへの突撃インタビューも収録されており、私はこれを観ていて、わが「ゆきゆきて、神軍」を連想した。マイケル・ムーアは言ってみれば奥崎謙三と原一男監督を合体したようなキャラクターであると言えよう。アカデミー授賞式でムーア監督は「ブッシュよ、恥を知れ!」とスピーチしたが、まさにその過激さは奥崎謙三を彷彿とさせる(笑)。(しかし、こんな発言を行っても迫害される事も投獄される事もないという点では、このスピーチは、自由と民主主義の国・アメリカの宣伝にもなっているのではないか?)
 ともあれ、アメリカと、アメリカ人の精神構造に鋭く、しかしユーモアも交えて迫った本作は、まさに時代を写す鏡とでも言うべき問題作である。必見。