恒例の、2003年度の私の選んだワーストテンを発表します。いつも書いておりますが、単につまらない作品をあげつらうのではなくて、面白くなりそうだと期待を抱かせながら、その期待を大きく裏切った作品に対しては厳しいスタンスで臨んでおりますので、そのつもりで…。対象期間はベスト20と同様、'2003年1月〜12月としました。なお、あまり数はありませんが、アンダーライン付の作品名なら、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
魔界転生 平山 秀幸
ドラゴンヘッド 飯田 譲治
ドリームキャッチャー ローレンス・カスダン
ハルク アン・リー
ザ・コア ジョン・アミエル
ハンテッド ウィリアム・フリードキン
昭和歌謡大全集 篠原 哲雄
死ぬまでにしたい10のこと イザベル・コヘット
シベリア超特急3 MIKE MIZUNO
10 スカイ・ハイ<劇場版> 北村 龍平
天使の牙 B.T.A. 西村 了

 

 ワーストワンは、深作欣二の秀作のイメージを台無しにしてくれた「魔界転生」。平山秀幸は好きな監督で、これまでどんなジャンルのものでも面白く見せてくれただけに、期待は大であったのだが…。テンポは悪い、アクションは冴えない、出演者も佐藤浩市以外まったくダメ。窪塚洋介なんて旧作の沢田研二に比べたらまったく存在感なし。CGを出せばいいってもんじゃないでしょう。一番ダメなのは、魔界から蘇えった剣豪が少しも強く見えないこと。ラストに出てきたあの人物(徳川○○)も意味不明。これでは深作作品を再映した方がマシだった。平山監督、是非次はリベンジしてください。

 2位の「ドラゴンヘッド」は映画評を参照。飯田譲治はテレビのホラーものを演出している程度ならいいのだが、スケール感のあるこうした作品では力不足を露呈。それよりも、やっぱり脚本の弱さがたたっている。膨大な原作をどう2時間にまとめるか。昔なら橋本忍(「日本沈没」)が得意だったのだが…。つくづくこの分野の人材不足を痛感する。

 3位は「ドリームキャッチャー」。原作・スティーヴン・キング、脚本・ウィリアム・ゴールドマン、監督・ローレンス・カスダン…。すごい豪華な顔合わせである。なのに、何だこれは。「スタンド・バイ・ミー」風な出だし、それが途中でオカルト風になって、??と思っていたら、後半は侵略SF??。前・中・後で全然別の映画を見ているようである。で、どれも中途半端。だいたいタイトルの“ドリームキャッチャー”がストーリーに全然関係ないというのも問題。キャッチコピー「見せてあげよう、見たことを後悔するものを」が、あまりにもこの映画の感想にピッタリだったというのも、ちょっと情けなさ過ぎる。文句なしの洋画のワーストワンである。

 4位「ハルク」。これも映画評を参照。「恋人たちの食卓」「いつか晴れた日に」のアン・リー監督、どうしちゃったんでしようね。ハリウッドでチヤホヤされて、舞い上がったんでしょうか。パンツがゴムのように伸び縮みする…というのもなんだかねぇ(笑)。マンガチックなCG特撮と、深刻な心理的葛藤とが水と油。いっそおもいっきりデフォルメしたCGで笑えるマンガにするか、特撮をぐっと抑えて心理描写に重点を置くか、どちらかに徹底すべきではなかったか。

 5位「ザ・コア」。これもトホホですね(笑)。「アルマゲドン」の地底版…てな安易な発想からして問題。しかも科学的考証まったくいい加減。都合よく耐熱装甲素材と地底に穴を開けるマシンとが同時に開発されていた…というのも、あまりにもご都合主義。それに、地底で水爆を爆発させれば、そのエネルギーで地球がぶっ壊れてしまうのでは?―突っ込みどころ満載で、それを楽しむ…という手もあるが、水爆があれば何でも解決…という発想が許せない。日本人は特に怒るべきだろう。

 6位「ハンテッド」も、監督がウィリアム・フリードキンだけに期待したのだが…。ベニチオ・デル・トロは「ランボー」のキャラクターそのまんま。しかし見知らぬ土地でやむにやまれず巻き込まれて行くランボーに比べて、こちらは何でそんなに暴れるのか意味不明。都会のすぐ近くでサバイバル・ゲームもないでしょう。トミー・リー・ジョーンズの元教官がベニチオを見つけるプロセスも手抜き気味だし…。とにかくつまらなかった。フリードキン衰えたり―という所でしょう。

 7位「昭和歌謡大全集」は、俊鋭篠原哲雄監督だけに、期待したのだが…。ブラック・ユーモア的な原作を、「はつ恋」「命」の叙情派篠原哲雄に演出をまかせたのが問題。殺し合いがどんどんエスカレートして行く展開はいいとしても、バスーカ砲の次が原爆とは、あまりに飛躍しすぎ(次は戦車くらいでしょう)。あれは笑えませんよ。出演者全員の誰にも感情移入が出来ないのも困ったものである。評価する人もいるが、私はブラック・ユーモア作品は、毒と棘のある監督でないと難しいと思っている。昔なら石井輝男か鈴木則文、今なら三池崇史くらいしか適任者がいないのではないかと思う。プロデューサーの監督人選の失敗ではないだろうか。ラストに流れる「また逢う日まで」が、キューブリックの「博士の異常な愛情」のラストに歌われる「さようなら、また会いましょう」を思い出させて、そこだけニヤリとしましたがね。

 8位「死ぬまでにしたい10のこと」。ペドロ・アルモドバルが製作総指揮をしたという事で注目したのだが、余命がわずかである事を知ってやった事が不倫…というのはねぇ。黒澤の「生きる」とまでは求めないが、他にやるべき事があるんじゃないのかね。シナリオ次第ではもっと感動できる作品になったと思うのだが。

 9位の「シベリア超特急3」については、もう勝手にやってください…の一言。今回は現代が舞台で、61年前にシベリア超特急内で起きた謎の未解決殺人事件とそっくりの密室殺人が起きて、その真相は…というものだが、いろんな過去に作られた謎解きミステリーのネタを寄せ集めただけ…という印象。相変わらず演出は平板だし、水野晴郎センセイのドヘタな棒読みセリフもこれまた相変わらず。同じように評論家から映画監督になった原田眞人が、監督手腕も一流だけでなく、俳優としても「ラスト・サムライ」で見事な演技力を見せているのを見るにつけ、あまりのその落差に溜息が出てくる。周りもちょっと持ち上げ過ぎ。「−2」の批評にも書いたが、ホント、この人は日本のエド・ウッドですねえ(笑)。

 10位「スカイ・ハイ<劇場版>」。北村龍平監督は私が期待しているホープだが、本作はいただけない。「VERSUS」は傑作だったが、それ以降「ALIVE」、「DUEL:対決/荒神」と、似たようなバトル・シーンが続き過ぎ(そのわりにスケール感に乏しい)。本作でもまたまた、テレビ版にはなかったチャンバラ・アクションが登場するが、ちょっと食傷気味のうえ、本筋に関係しているとも思えない。もうそろそろ、我々をアッと言わせ、感動させる演出を見せて欲しい。ワーストに入れるほどの作品でないとは思ったが、期待が大きいゆえのランクインと考えていただきたい(昨年のワースト1、2位監督が本年は見違える傑作を作っているので、そのジンクスにあやかりたい…という気もあるが(笑))。

 次点はせっかくの大沢在昌の傑作SFハードボイルドを、なんとも気の抜けた凡作にしてしまった「天使の牙 B.T.A.」。他人の身体を借り、恋人さえも欺かなければならないアスカの苦悩、そして容貌は他人でも心は元のままのアスカを恋人の古芳は愛せるのか…という重要なポイントがまったく描けていない。ヘタなどんでん返しに力を入れるより、そちらをきちんと描けば秀作になったかも知れないのに。残念である。悪の組織のボスを演じる萩原健一も貫禄不足。こういう悪役を演じられる役者の不足を痛感する。 
 

 という所です。あと、批評では好意的に書いたが、厳しい目で見るなら、「踊る大捜査線 THE MOVIE2」「スパイ・ゾルゲ」あたりもワーストに入れたいところです。いずれも、作りようによってはもっと傑作になったかも知れない作品ではないかと思いますので…。

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