さて、'2001年度、21世紀最初の年の、私の選んだベスト作品の発表です。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考対象期間は、'2001年1月〜12月の間に
大阪にて公開されたもの…としました。ご了承ください。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
GO 行定 勲
蝶の舌 ホセ・ルイス・クェルダ
山の郵便配達 フォ・ジェンチイ
ウォーターボーイズ 矢口 史靖
リトル・ダンサー スティーヴン・ダルトリー
千と千尋の神隠し 宮崎 駿
EUREKA (ユリイカ) 青山 真治
ギャラクシー・クエスト ディーン・パリソット
ココニイルコト 長澤 雅彦
10 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 原 恵一
11 アメリ ジャン=ピエール・ジュネ
12 光の雨 高橋 伴明
13 JSA パク・チャヌク
14 かあちゃん 市川 崑
15 風花 相米 慎二
16 ターン 平山 秀幸
17 殺し屋1 三池 崇史
18 ゴッド・アンド・モンスター ビル・コンドン
19 あの頃、ペニーレインと キャメロン・クロウ
20 ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 金子 修介
カルテット 久石 譲

 

 個々の作品評については、以下の文中のアンダーライン付作品名をクリックしていただければそれぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

 今年も1位を何にするかでずいぶん悩んだ。日本映画でも「GO」「ウォーターボイズ」どちらを1位にするかで悩んだ。心情的には批評にも書いたように“正しい娯楽映画”の王道を行く「ウォーターボーイズ」を1位にしたいのだが、やはり、重苦しくなりそうな題材を軽やかなフットワークで描く…という、誰も考えなかった手法を見事成功させた「GO」が、21世紀の幕開けにふさわしい…と考えてこれを1位にした。洋画の「蝶の舌」は、先生と教え子の心の交流を淡々と描き、それだけでも十分見応えがあるのに、あの衝撃的な幕切れにはさらに打ちのめされた。衝撃度ではナンバー1であろう。「山の郵便配達」は、父の人生、親子の情愛を淡々と描き深い感銘を受けた。昔の古い日本映画を思い起こさせる秀作である。この4本は、どれがベストワンでもおかしくはない、ほとんど横一線に並んだ傑作群である。
 
「リトル・ダンサー」がやや遅れて続く。これも傑作。「千と千尋の神隠し」も好きな作品である。昔なら絶対ベストワンにしたが、こんな位置になったのはトシのせい?
 「EUREKA(ユリイカ)」は、年初に見た時にはベストワンにしたいと思っていたが、次々秀作が出てきてだんだん後ろにズレてしまった。それだけ、昨年は秀作が多かったという事である。
 以上、7作品が問題なく昨年のトップクラスの秀作。いずれも、見ればズーンと感銘すること間違いなし。映画ファンなら、この7本は絶対に押えておいて欲しいと思う。
 8位、「ギャラクシー・クエスト」はガラッと変わって笑えるおトボケ作品。しかしこれも作品評に書いたが、ニセモノが奮起して最後にホンモノになり勝利するという娯楽映画パターンのツボをおさえた秀作である。こういう作品を、テレずに大物スターを起用して作るハリウッドはやはり凄い。
 9位「ココニイルコト」は、ご贔屓、長澤雅彦の爽やかな佳作。最新作のアクション大作「ソウル」にも期待したい。これが成功すれば、この人は第2の長谷川和彦になれるかも知れない(あ、でもそれっきり映画が作れなくなっては困ります(笑)が…)
 そして10位は、出ました
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(長い題名だ(笑))。これ、恥をしのんで子供たちばかりの劇場に行って正解だった。子供アニメでありながら、絶対に40才以上のオトナでなければ感動できない(??)こんな傑作を作った原恵一はスゴい。この人には、ぜひオトナ向け実写映画の監督をさせてあげたい…と思う。「映画秘宝」でも、そして敬愛する映画フリーク、快楽亭ブラック師匠もベストワンにしてるくらいだから、その面白さが分かるだろう。ブラック師匠は、「これがキネ旬のベストテンに入らなかったら生涯認めない」…と言ってたが、やはり入らなかった。「せめて読者のベストテンには入ってないと…」という事で、2月5日発売の決算号に期待しましょう。…ムリかな?

 11位は「アメリ」。これまでなんとなくダークでデモーニッシュなカルト作を作って来たジャン=ピエール・ジュネが、まったくおシャレでキュートな快作を作った。見ていて、心がウキウキして来る。あちこちに仕掛けられた、楽しい映画マジックも素敵。久々のフランス映画の快作です。
 「光の雨」は、あの連合赤軍事件を、現在の眼から捕えた秀作。正面からでなく、事件を題材にした映画作りというスタイルにした事で、陰惨にならず、さまざまな角度、世代から多面的にこの事件を見つめ返す事に成功している。世代的には失踪する映画監督(大杉漣)と近い事もあり、全共闘世代の高橋伴明監督の思いが痛いほどに感じられた。事件に関心のある人は、是非とも見て欲しい。「JSA」も、政治状況のはざまで心に傷を負って行く若者たちを見つめた韓国映画の秀作。これは“今”の現実であるだけに余計考えさせられる。
 市川崑監督の変わらぬ若さには敬服する。「かあちゃん」は、86才とは思えぬ気合のこもった秀作。岸恵子もいい。ただ、若い俳優に存在感が希薄なのが残念。今の時代ではそれを望むのは無理なのだろうか。
 相米慎二の突然の死去はショックだった。遺作「風花」は、いつもと変わらぬ落ち着いた風格ある映像に堪能し、もっと歳を取れば成瀬巳喜男のような映画を撮れるのではないか…と期待していただけに無念である。それにしても、彼のような実力派監督がここ数年、ミニシアターの低予算映画ばかりしか撮れない・・・という現実の方がなおさら悔しいのであるが…。
 「ターン」もよかった。平山秀幸はどんな題材も適確にこなす一流監督の風格が出てきた。次回作「OUT」も楽しみである。そして三池崇史!昨年も多作でレベル低下が心配だったが、「天国から来た男たち」も悪くなかったし、年末の「殺し屋1」も凄い気合のこもった快作だった。CGを含めた特殊効果を実に丁寧に取り入れている所も注目して欲しい。
 「ゴッド・アンド・モンスター」は伝説の名監督、ジェームス・ホエールの謎の死を描いた作品で、アカデミー脚本賞を獲得している。ミニシアターのレイトショーでしか公開されなかったので見ている人は少ないが、ビデオででも是非見て欲しい。私は最初ビデオで見て感動したので、批評はその時のもの。劇場で再見したら、こちらの方が余計感動できた。…ので、本当は劇場で見て欲しいのですが…。「あの頃、ペニーレインと」は説明不要でしょう。ケイト・ハドソンはいいですね。
 「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」についても批評を参照。これも「クレしん」と同様、子供向けの営業は不愉快。東宝は、こういった作品を大人でも入りやすいよう考えて欲しいものである。次点の「カルテット」も好きな作品。いろいろ批判もあるけど、昔ながらの娯楽映画の定番をきちんとこなしている点は評価されるべきだと思う。こういう、オーソドックスなエンタティンメントが少ないだけに、もっと暖かい目で見るべきではないだろうか。

 さて、これでベスト21は終わったが、やっぱり昨年同様、もっと紹介したい秀作がいっぱいあるので、 できる所まで以下紹介することとする。
22位「ムーラン・ルージュ」。とにかく楽しい作品です。
23位「真夜中まで」。和田誠さんらしい、映画ファンとしての思いが溢れた快作。いつもながらのカメオ出演者を眺めるだけでも楽しい。
24位「花様年華」(ウォン・カーウァイ)。これも悪くはないが、何となくズルズルこんな所まで落ちてしまった。もう一度見たらもっと楽しめるかも知れないが…。
25位「ショコラ」。26位「みんなのいえ」
27位「連弾」…。あれあれ、これら、見た時はベストテンに入れようと思ってたのに、いざ選考を始めたらなぜかこんなところに・・・。どれもよく出来てはいるのだが、時間が経つと印象が薄れてしまったようである。
28位「A.I.」。みんなスピルバーグ+
キューブリックという事で、「E.T.」+「2001年」くらいの作品を期待し過ぎているのではないか。私は結構楽しめましたけどね。ま、確かに期待したほどの傑作ではないですが…。
29位「リリィ・シュシュのすべて」。うーん、後味の悪ささえなければもっと上位にしてもいいのだが。岩井俊二は、もう「Love Letter」のような爽やかな傑作は作らないのだろうか。
30位「回路」(黒沢清)。コワいです。

 …と30位まで来たが、まだもう少しある。あと7本だけ・・・。
31位「バンパイアハンターD」(川尻善昭)
32位「オー、ブラザー!」(ジョエル・コーエン)
33位「チキンラン」(ニック・パーク/ピーター・ロード)、34位「シュレック」(アンドリュー・アダムソン/ヴィッキー・イェンセン)どちらもドリームワークス配給作品。
35位「VERSUS」(北村龍平)
36位「天国から来た男たち」(三池崇史)
37位「火垂(ほたる)」(河瀬直美)

  

  ワーストテンも作りましたので、そちらもご覧ください。

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