殺し屋1  (日本=香港=韓国:三池 崇史 監督)

 三池崇史を、“石井輝男の後を継ぐカルトの鬼才”…と私が呼んだのは「DOA」評の時。そして本作を見て、ますます石井色が濃くなった…と感じた。なにしろ、とにかくエグい。グロテスク度、スプラッタ度はあの怪作「極道戦国志・不動」を更に上回り、特殊メイク、CG合成がレベルアップしている事もあって、もうホントにこの監督は、狂っている!としか思えない(ホメ言葉ですよ(笑))。なにしろ、浅野忠信の口が裂けてる!そしてタバコの煙がその裂け目から出てる…あのシーンを見るだけでも目がクラクラしそう(笑)。この浅野の怪演を見るだけでも金を払った値打ちはある。そして本来の主役である、大森南朋(「カルテット」も良かった)扮する、泣き虫の殺し屋…というキャラクターが秀逸。すごく気が弱いのに、ジジイと呼ばれる、正体不明の男(塚本晋也。これも怪演)に殺し屋として教育され、マインドコントロールされたイチというキャラクターが、浅野にキャラとして負けていない。これは、互いに心に傷を負い、どう生きるか、そしてどう心が満たされるかを探し求める、寂しい男たちの魂のさすらいのドラマなのである。どぎついスプラッター描写も、あまりにメチャクチャなので逆に笑えてしまう(ピーター・ジャクソンの「ブレインデッド」を思い出した。あれ、快作ですよ)。週刊文春の映画星取表では、品田雄吉氏は“始めて”という黒星をつけ、おすぎは採点放棄したくらい、評論家からは総スカンを食らってるが、なに、石井輝男が「徳川いれずみ師・責め地獄」や「恐怖奇形人間」を発表した時でも評論家はこれらを徹底して無視してたのだから(今では傑作として評価されている)。
 断言してもいい。この作品、10年後にはカルトの傑作になっていると思う。三池崇史、すごい! 目をそむけたくなる場面は確かに多いが、とにかく、顔を覆いながらでも、見るべし(笑)。