ゴッド and モンスター (ビデオ)  (米:ビル・コンドン 監督)

 かつて'30年代、「フランケンシュタイン」(31)「フランケンシュタインの花嫁」(35)「透明人間」(33)などのユニバーサル・ホラー映画の古典的傑作を監督したジェームス・ホエール('57年、自宅のプールで謎の水死)の、死の直前の数日間を虚実を織り交ぜて描いた作品。低予算のインディペンデント作品ながら、アカデミー賞の脚色賞(コンドン)、主演男優賞(イアン・マッケラン)、助演女優賞(リン・レッドグレイブ) にノミネートされ、コンドンが脚色賞を受賞した。主演のマッケランが素晴らしい。伝説の名監督でありながら、ホモである事を隠さなかった為半ば隠遁に近い余生を送り、そして庭師として雇われたクレイトン(ブレンダン・フレイザー。好演)に次第に好意を寄せ、少年時代から第1次大戦、映画監督時代の回想を語りながら自身のすべてをさらけ出して行くプロセスが文字通り鬼気迫る熱演である。ここにはホモとかどうとかいう事など関係なく、孤独で人の愛を求め続ける人間の魂の叫びがあるのだ。彼に嫌悪しながらも、その叫びに次第に惹かれて行くフレイザーもいい。そして彼に15年間も家政婦として付き添うリン・レッドグレイブもまた素晴らしい。ホエールの性癖を忌み嫌いながらも密かに彼を愛し続けているという難しい役柄を的確に演じている。まさに素晴らしい俳優たちのアンサンブルである。しかし演出は固いだけでなく、とぼけたユーモアもあり、そしてホエール作品を含めた、映画作りそのものに対する限りない愛に満ち溢れている。映画を好きな人ほど見て欲しい、素敵な珠玉の名作である。忘れられたホラー映画監督の人生を描いたという点では、ティム・バートンの「エド・ウッド」とも共通するものがあるが、そのバートンの近作「スリーピー・ホロウ」にはホエールの2本のフランケンシュタイン映画から引用したシーンが多いというのも面白い。(くわしくは後述、日本公開推進広報委員会のページを参照ください)           
 これほどの力作が、現在の所日本未公開というのは残念である(ビデオではリリースされているが、本編はワイド版なのにビデオはスタンダード画面であり、また字幕にも誤訳が多いという)。この作品に惚れ込んだ熱狂的ファンが、1年も前に独自に
日本公開推進広報委員会を結成し配給会社に積極的に働きかけた結果、ようやく2001年の正月、東京でレイトショー公開にこぎ着ける事が出来た。これは快挙と言っていい。委員会に賛同した人たちが横断的に支援活動を行っているというのも素晴らしいことである。こうなればなんとか東京だけでなく、全国で公開し、そしてヒットして欲しい。ともかく東京での成功を祈りたい。
  委員会のHPは下の通り。↓
 
     
 
http://www02.u-page.so-net.ne.jp/ka2/take-m/gandm.html