回 路 (大映:黒澤 清 監督)
アイデアが面白い。インターネットを覗いているうちに、得体の知れないサイトに入り込み、その中にいる幽霊(?)に導かれるように世の中がどんどん侵蝕され人間が消えて行く・・・という展開で、まあ「リング」のインターネット版と思えばよろしい。しかしあれのビデオより、インターネットの世界の方がよっぽど正体不明の相手が多くて怪しく、かつ電話回線さえあればどこからでも侵入できるからタチが悪い。これはうまくいけば「リング」と並ぶホラーのムーブメントになり得たかも知れない・・・のだが、あの黒澤清がそんな時代迎合作品を作るはずがないのであって、やはり途中からインターネットはどうでも良くなって、ひたすら正体不明の悪意がジワジワと街を包み込み(モノ言わず、目のあたりがボヤけている幽霊らしきものが不気味でコワい)、次々と人類が消滅して行き、最後は世界の終末さえも暗示させる。ちょうど前作「カリスマ」のラストとも繋がっているように、飛行機が建物めがけて墜落し、街中に火の手が上がり、無人の廃墟が広がって行く。映画ではこの悪意の正体はボカされているが、黒澤自身が映画と並行して書いた小説版「回路」では、その正体は宇宙から来たエイリアンだということだ。それはそれでも面白いが、正体が分からない映画の方がずっとコワい。まさに“悪夢のような”と形容すべきホラーの佳作である。もしDVDが出れば、これは深夜にパソコンのモニターで見る事をお勧めする。凄くコワいと思いますよ(・・;)。 ()