リトル・ダンサー  (英:スティーヴン・ダルトリー 監督)

 炭鉱の町に生まれた少年が、バレエ・ダンサーになりたいと願い、さまざまな障害を乗り越えその夢を実現するまでの物語で、こういうお話に私は弱いのである(“炭鉱夫の息子”という共通点から、傑作「遠い空の向こうに」を連想するが、これも自分の夢をかなえるまでの物語であった)。主人公ビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルの演技が素晴らしい。彼は実際にタップが出来るそうで、そのダイナミックなタップを見た父親が彼の才能に気付き、ストを破ってまで彼の為に一肌脱ごうとするのにも十分な説得力がある。彼のタップを見るだけでも金を払って見る値打ちはある。そしてこの映画を貫くテーマは“愛”である。少年のバレエに対する熱い愛、息子の将来を思う父親の家族愛、ビリーの才能を見いだし、彼を暖かく見守り指導する先生(アカデミー助演賞にもノミネートされたジュリー・ウォルターズ)との師弟愛、そしてビリーの友人であるゲイの少年の彼に対するプラトニックな愛(このくだりがいやらしくなく爽やかに描かれているのもいい)。それらの思いが見事に融合するラストはそれゆえ余計感動を呼ぶ。単なる“夢の実現”の映画に留まっていない所が素敵なのである。