VERSUS−ヴァーサス− (北村 龍平 監督)

 北村龍平。−弱冠32才。17才でオーストラリアに映画留学し、帰国後、26才の時予算30万円で撮った「ダウン・トゥ・ヘル」が第1回インディーズ・ムービー・フェスティバルでグランプリ受賞。28才の時「ヒート・アフター・ダーク」で劇場映画監督デビュー…。なかなか見事な経歴である。そして本作はと言えば、…まあとにかく見るべし。痛快、パワフルなノンストップ・アクションの快作である。
 お話は、脱獄囚2人が奇妙な組織と遭遇し、迷い込んだ森の中で、彼らや、森のゾンビ(これがなんと!2挺拳銃を乱射して向かって来る(笑))と戦ったり、遥か昔に戦った不死身の男と時空を超えた壮絶なバトルを繰り広げる・・・と書いてもあまり意味がない。とにかく、ガン・アクションあり、刀を使ったチャンバラあり、ワイヤー・スタントによるカンフー・アクションありと、ホラーからSF、時代劇まで、あらゆるジャンルを超越し、映像的にはタランティーノ(「レザボア・ドッグス」+「フロム・ダスク・ティル・ドーン」)、サム・ライミ(「死霊のはらわた」)、「マッド・マックス2」に「ハイランダー」に香港アクションまでリスペクトしまくり(知らんヤツはすぐパクリだと言う(笑))、これでもかとばかり繰り出すエネルギッシュかつパワフルな迫力には圧倒される。これほどアクションまたアクションで押しまくる新人監督は、「突撃!博多愚連隊」「狂い咲きサンダーロード」で登場した頃の石井聰亙以来ではないだろうか(いや、それ以上だ)。
 無論、予算が少ない為、特殊効果や特殊メイクはやや寂しいし、俳優も素人か新人ばかりで演技的には物足りない点もある(ただし主演の坂口拓は元ボクサーだそうで、後半はだんだん良くなる)。しかしそれでも画面全体から漂うパワーとエネルギーはそれらを補うに十分である。もっと予算と時間を与え、キャリアを積めば、世界にも通用するアクション派監督になれる素質は十分ありと見た。
 そういう才能をあちらのプロデューサーが見いだし、既にハリウッド進出が決定しているのも素晴らしい事である。そして本人は、「ハリウッドに行くのは最初から考えていた」と、こともなげに言い切る。その意気込みやよし。はたして日本のジョン・ウーになれるか(いや、映画界のイチローになれるか)、ここは是非注目したい。先物買いの意味で、採点はやや甘く
しておこう。