2000年度、私の選んだワーストテンです。例によって、面白くなりそうだと期待を抱かせながらその期待を大きく裏切った作品に対しては厳しいスタンスで臨んでおります。対象期間はベスト20と同様、'99年12月〜2000年12月としました。なおアンダーライン付の作品名をクリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
スペース・トラベラーズ 本広 克行
ダンサー フレッド・ギャルソン
ゴジラ2000 ミレニアム 大河原 孝夫
千里眼 麻生 学
ケイゾク/映画 堤 幸彦
長崎ぶらぶら節 深町 幸男
ワールド・イズ・ノット・イナフ マイケル・アプテッド
救命士 マーチン・スコセッシ
ストップ モーション 寿野 俊之
10 ブレア・ウィッチ・プロジェクト ダニエル・マイリック/エドゥアルド・サンチェス
バトルフィールド・アース ロジャー・クリスチャン

 

 ワーストワンに輝いたのは「スペース・トラベラーズ」。出来の悪い作品は他にも多いが、期待裏切り度ではこの作品が最大。作品評にも書いたが、前半のペースでは我が国で成功した例がほとんどない破天荒なライト・コメディの快作を予感させたのに、ラストでメロメロの腰砕けになってしまったのは許せん。前作「踊る大捜査線」が笑いとサスペンスを巧みにブレンドしたスケールの大きなエンタティンメントとして成功しており、こうした作品を連発してくれれば日本映画界に風穴を開けられたのに、本作ではスケールもストーリー・テリングもガクッとトーンダウンしてしまったのはつくづく残念である。つまりはそれほど本広克行には期待しているのである。ワーストワンはその期待の現われと思って欲しい。
 「ダンサー」はリュック・ベッソンの原案・脚本という事で、これも期待したのに、なんという不出来!。同じく彼の脚本作「TAXI:2」もトホホな出来だが、あちらは初めからおバカ・コメディとして作られているからあまりガッカリはしない。しかし本作は感動の力作まがいの宣伝を行っているだけに腹が立った。耳の聞こえないダンサーが如何にして困難を克服して成功するか・・・というストーリーは確かに感動作になるだけの要素はある。しかし、その道具が何に使うのか意味不明の新発明品だというのには唖然となった。こりゃほとんどナッテイ・プロフェッサーの珍発明に近い。いったい最近のベッソン、何考えてんだか・・・。作品もヒドいが、配給会社(老舗のヘラルドである)の宣伝のいいかげんさこそワーストワンであろう。金返せ!
 
ゴジラ2000 ミレニアム」も期待裏切り度が高い。大河原孝夫はその前に秀作「誘拐」を手掛けてぐっと点数を稼いだだけに、4年ぶりのゴジラには大いに期待が高まったのだ。なんだこのフヤけぶりは!まあ責任は大河原監督だけでなく、プロデューサーの富山省吾にもあると思うが・・・。が、それで反省したのか、新作「ゴジラ×メガギラス」が意外と良く出来ていたのには感心した。やりゃ出来るじゃないか!
 「千里眼」のヒドさは作品評を見ていただきたい。トホホ度ならこの作品がダントツだろう。脚本段階でデタラメさをチェック出来なかったプロデューサーの無能ぶりが日本映画のダメさを象徴している。配給した東映のダメぶりについてはまとめて後述する。
 ケイゾク/映画」の堤幸彦は、テレビ界ではこの「ケイゾク」や「池袋ウエストゲートパーク」などをヒットさせているが、しょせんテレビでしか通用しない“目新しさ”だけでもっているだけである。だからテレビではごまかせても、映画になるとボロが出てしまう。テレビを見ていないと何のことだか判らない(映画の本筋には全く関係ない)エピソードも不親切(少なくとも「踊る大捜査線」はテレビを見ていない私でも面白かった)。昨年は堤の他、本広克行や「ホワイトアウト」の若松節朗、前述「千里眼」の麻生学(こいつは堤幸彦の弟子だそうだ)、「長崎ぶらぶら節」の深町幸男と、やたらテレビ・ディレクターが監督した作品が目立ったが、ことごとく失敗作である。テレビでは優れた佳作を演出して、私も好きな深町幸男ですら、映画を演出したらかくも無残な出来にしかならない。もっと映画をたくさん見て、研究すべきではないか。
 「ワールド・イズ・ノット・イナフ」(題名なんとかならんか!)は、007ものとしては近年最低の出来である。最近の007はアクションの工夫だけでなんとかもっている状態で、そのアクションがいま一つ冴えなくては面白くなるはずがない。悪役にも魅力がない。“痛みを感じない”という設定もまるで生かされていない。つまらなくて途中で寝てしまったぞ。
 「救命士」は、ポール・シュレーダー脚本、マーティン・スコセッシという傑作「タクシー・ドライバー」コンビの新作という事で期待したのだが、なんじゃこれは!支離滅裂もいいところで、何がなんだか判らないうちに映画は終わってしまう。何の救いも、サスペンスもない。あの強力コンビがこんなヒドい作品を作るとは・・・だけど考えたらあの「タクシー・ドライバー」からもう25年も経っているのですね。キネ旬ベストテンで127位(わずか3点!)という結果から見てもそのヒドさが解かります。
 「ストップ・モーション」のダメさは作品評を参照のこと。製作プロセスや、ポスターの惹句を見て、ひょっとしたらと期待したのに、あまりにもお粗末な出来にガックリ。余程の映画ファンですら存在を知らない作品であるが、見ない方が幸いである。「やっぱり日本映画はダメだ」と思い込む若い観客を今以上増やさなかっただけでもよかった…と言えば言いすぎになるかな。
 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」。何も言う事はない。話題作りのうまさだけは誉めてあげよう。パート2も作られたが、もうまったく見る気が起きませんね。
 次点の「バトルフィールド・アース」はまあおマケみたいなもので、もうここまでやってくれると笑えてしまって怒る気にもなれない。だいだい1000年後の地球になんで20世紀の戦闘機が残ってるんだ?コメディではないのにトラボルタのマヌケ・メーキャップに大笑いしてしまう、昨年度のサイテー映画の代表としてここに挙げておこう。
 惜しくも(?)ワーストテンから洩れた凡作を、題名のみ列挙しておきます。「アナザヘヴン」(飯田譲治)「ISOLA多重人格少女」(水谷俊之)「仮面学園」(小松隆志)「ヴァージン・スーサイズ」(ソフィア・コッポラ)「2番目に好きだったこと」(ジョン・シュレジンジャー)。

 さて、東映である。この会社はこれまでも90年代のワーストワン「北京原人」をはじめ、「超能力者・未知への旅人」(2本とも監督佐藤純彌・脚本早坂暁・プロデュース岡田裕介という、私が名づけて東映3バカトリオ?!による作品)などという珍品を作っているが、昨年も相変わらずのインチキ宗教団体のPRアニメ映画を全国拡大公開したり、上記テンに入った作品や「死者の学園祭」「仮面学園」なんかのワースト作品(このテンに入れる気にもならない凡作)や、東宝の「リング」シリーズのヒットにあやかった「うずまき」等の低級ホラー作品を製作・チェーン公開して、結果として若い映画観客に日本映画を見る気にさせなくしてしまっている(前年の「ドリーム・メーカー」もしかり)。そのくせ「はつ恋」「ekiden」なんかの秀作はミニシアター系でごく限られた地域でしか公開しない。これらの作品はうまく宣伝すればそこそこ客は呼べるはずである(ましてやせっかく久しぶりのアイドル・スター田中麗奈が出演しているのに・・・)。もはや東映にはそういういい映画を作る意欲も(これらは独立プロ作品である)、宣伝や営業努力で客を集める能力も徹底して欠けてしまっているのではないか。そういうことの結果が昨年特に顕著に現われたのではないか。おまけに昨年度の封切一覧表を見ると、とうとう東映自社製作作品がゼロになっていた。子供の頃から東映映画を見続け、映画ファンたる私を育ててくれた東映の惨状を見るにつけ、暗澹たる思いにかられているのは私だけではあるまい。自民党ではないが、解体的出直しを図らないとどうしようもない所に来ているのではないかというのが結論である。

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