千里眼 (東映:麻生 学 監督)
こちらも水野美紀主演のサスペンス・アクション。しかし出来の方はとんでもない凡作。米軍基地にマインド・コントロールされた男が侵入し、ミサイル発射パスコードを変えてしまうという出だしでこれはダメだと思った。アメリカ軍のセキュリティがそんなに甘いはずがないのはシロウトでも知っている。しかもどうやって侵入したかのプロセスも描いてないからまるで説得力がない。そして何億通りもあるパスコードを短時間にたった3回で見破るに至っては開いた口がふさがらなくなった。まあ最初のは理由があって許してもいいが、普通ならコードを解いた人物が逆に疑われてもおかしくない。それがラストでまた同じシチュエーションになって、ここでもまた3回目でパスコードを見破るのである。その見破った理由がまったくあてずっぽうに近いのだから何をか言わんや(普通、見破られない為にはデタラメに入力すると思うが…。そもそも入力した人物がそういうクセを持っているという事を主人公はいつ知ったのか?)。航空自衛官のはずの水野が暗号解読のプロというのもヘンだが、その彼女がクライマックスで突然カンフー・アクションを始めるのにはのけぞった。自衛隊ではカンフーも練習するのか?しかも彼女がカンフーの達人であるとはそれまで全く描かれていないのだ。この作者たちは伏線という言葉を知らないのだろうか?
聞く所によると、最初監督に起用されたのは「FOCUS」「破線のマリス」等の新鋭井坂聡だったのだが、原作者の松岡圭祐自身が参加した脚本を手直ししようとする監督と松岡とが衝突し、井坂が怒って降りたということだ。松岡は自分を何様だと思っているのだろうか。監督が脚本を手直しするのは当然で(しかも前述の如くムチャクチャな脚本だ)、監督に渡したらどう脚本をいじられようと脚本家は文句を言ってはならないのは当然である。こんなワガママな作者は映画界の方からボイコットすべきだろう。 ()