ケイゾク/映画 -Beautiful Dreamer (東宝:堤 幸彦 監督)

 洋画専門誌「ロードショー」が“日本映画が面白い”と題して日本映画の特集をやっており、メインで取り上げられたのが前掲の「スペ・トラ」とこの「ケイゾク」、それに「アナザヘヴン」の3本。確かにいずれもメディアミックス戦略等で話題になったし、会話やストーリー展開も洋画に近い感覚であり、若い人たちにウケる要素はある。しかし残念ながらいずれも表面だけ新らしがった作りで底は浅い。この作品については、刑事ものでありながらクリスティか島田荘司か金田一少年ものなんかで見たような謎解きトリック(監督はテレビ「金田一少年の事件簿」の堤幸彦)があり、結果として刑事ものとしてもトリック・ミステリーとしても中途半端。テレビを見ていなければ分かりにくいエピソードが脈絡なしに出てくるが思わせぶりなだけである。サブタイトルは押井守の傑作アニメからのいだきであるが、押井作品の奥の深さと壮大なテーマとは似ても似つかない。「ケイゾク」ならぬ「ケイハク」な凡作である。この程度の作品を持ち上げて洋画ファンに紹介するくらいなら、「ナビイの恋」や「はつ恋」あたりの“本当の日本映画の秀作”をこそ取り上げるべきである。