恒例の、2005年度の私の選んだワーストテンを発表します。例によって、単にどうしようもない作品だけに留まらず、この作家なら…と期待したにもかかわらず、その期待を大きく裏切った作品に対しては厳しいスタンスで臨んでおります。対象期間はベスト20と同様、'2005年1月〜12月。なお、あまり数はありませんが、アンダーライン付の作品名なら、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
ステルス ロブ・コーエン
フォーガットン ジョセフ・ルーベン
同じ月を見ている 深作 健太
北の零年 行定 勲
MAKOTO 君塚 良一
セブン・ソード ツイ・ハーク
スクラップ・ヘブン 李 相日
オーシャンズ12 スティーブン・ソダーバーグ
阿修羅城の瞳 滝田 洋二郎
10 エリザベスタウン キャメロン・クロウ
TAKESHIS’ 北野 武

 

 ワーストワンはここのところ日本映画が続いていたが、久しぶりに洋画が、それも1、2位を占めた。「ステルス」のワーストワン理由は批評を参照。単に出来だけの問題ではない。勝手な正義を振りかざし、大勢の無関係な人を大量虐殺し(どっちがテロ国家なんだか…)、それを全然反省していない傲慢ぶりが許しがたいからである。エンタティンメントだからいいってもんじゃないだろう。

 2位の「フォーガットン」の酷さも映画評を参照。もっとも一番ひどいのは、いかにも感動のサイコ・ミステリー風に宣伝した配給会社の方かも知れないが…。

 3位の「同じ月を見ている」は、深作監督への期待が高かった故のワーストと考えていただきたい。チャレンジ精神は大いに買うが、まだまだ修行不足である。アクションでもビデオシネマでも、他人の助監督でもいい、経験を積み重ねてまた戻って来て欲しい。待ってるよ。

 4位の「北の零年」も映画評を参照。行定監督は秋には「春の雪」も監督し、こちらはまあまあの出来だっただけに、やっぱり脚本(那須真知子)に問題ありと考えるべきだろう。昨年の「デビルマン」に続き、那須真知子はワースト脚本家の常連?になりつつある。

 5位「MAKOTO」。君塚良一は「踊る大捜査線」の脚本で有名になったし、「脚本通りには行かない」という本も出して、これも面白く読んだ。しかし監督デビュー作の本作は、全然面白くない。“死んだ人の霊を見ることが出来る”という設定は「シックス・センス」と同じ。なのに物語は平板、意外な展開もないし、演出も単調でこれと言った山場もなく、要領を得ないうちに終わったという感じ。まあ著作のタイトル通り、“監督業は脚本通りには行かな”かったという事か。退屈さに関しては昨年のワーストワンであった。おかげで監督第2作「容疑者・室井慎次」まで観る気をなくしてしまった。

 6位は、香港のスピルバーグとも言われたツイ・ハーク久しぶりの監督作「セブン・ソード」。「七人の侍」と設定が似てる…とか言われていたので大いに期待したのだが…。ちっとも面白くない。物語のメリハリはないし、ダラダラと長く、とってつけたようなチャンバラ・アクションシーンが時たま登場するだけ。しばらく監督してないうちに腕がナマったのだろうか。こんなつまらないツイ・ハーク作品は初めてである。チャンバラものなら韓国製の「MUSA」の方がずっと面白かった。

 7位「スクラップ・ヘブン」。'60年代を舞台にした青春もの「69 sixty nine」を撮った李相日監督作品。社会に対する不満を爆発させる若者たち…という話は悪くないが、もう少し主人公たちに感情移入できるように描けないものか。前作もそうだが30年前に作られたような、手垢のついた古めかしさが感じられる。それにやたらトイレに落書きするシーンが出て来るが、汚らしくてうんざりである。李監督は前作でもバリケード封鎖した高校の校長室にウンチをばらまくなど、他人に迷惑かける事を何とも思っていないような描き方はどうかと思う。オダギリジョーや、栗山千明など、個性的な役者が出ているだけに残念な出来であった。

 8位「オーシャンズ12」。オリジナルの「オーシャンと11人の仲間」は、シナトラ一家総出演の他愛ない泥棒コメディで、気楽に楽しめたが、リメイク版の「オーシャンズ11」は、豪華キャストの割りには、サスペンスもユーモアも不足したつまらない出来だった。それでも、オリジナルのエッセンスは多少残ってはいたが…。ところが、続編となる本作は更に輪をかけてつまらない。あっちウロウロ、こっちウロウロするだけで、何がどうなったのかさっぱり要領を得ない。ソダーバーグの演出も気合が入っていない。前作がそこそこヒットしたから、とりあえず同じメンバー集めて続編作っちゃえ…、てな安易な思いつきで、豪華スターのスケジュールを押さえたはいいが、ストーリーを練る時間もなくて見切り発車した…という所ではないだろうか。退屈でアクビが出て、最後は寝てしまったぞ。

 9位「阿修羅城の瞳」も批評を参照。ファンタジーとして、いくらでも面白くなる題材だけに惜しい。滝田監督、昔はもっと破天荒で楽しかったのに、最近は小じんまりとまとまり過ぎてる気がするのだが…。

 10位「エリザベスタウン」。靴が売れなかったのを、ブルーム1人の責任にするなんてあり得ない。夫の葬式で妻が壇上で猥談するのもあり得ない。葬儀中に飛行機中で知り合ったスチュワーデスとラブラブになることも不謹慎過ぎてあり得ない。―そういう展開も問題ありだが、登場人物の誰にも感情移入出来ない脚本の酷さにもがっかり。この監督の前作「あの頃、ペニーレインと」は好きな作品だし、予告編を観れば誰でも感動作かと思うだろう。観る前からの期待裏切られ度では一番かも知れない。

 次点は「TAKESHIS’」。ワーストに入れようかどうかかなり迷った。確かに、北野作品中では出来の悪い方だが、その支離滅裂、無茶苦茶な作り方も北野監督の狙いだとすると、ワーストに入れてしまうとまんまと狙いに引っかかった気もするのである。あなどれない人である(本人はどれだけワーストに入るのかを楽しんでるフシがある)。で、こちらもその手に乗るか…と考え、次点ということに。うーむ、お互いアマノジャクだなあ(笑)。
 

 番外として単につまらなかった作品をいくつか…。マスク2(ローレンス・グーターマン監督)は、前作がいかにジム・キャリーのキャラクターでもっていたかを証明しただけの作品。CGが派手になっても面白くなるとは限らない。ダニー・ザ・ドッグルイ・レテリエ監督)は、ジェット・リーが犬の真似をするヘンテコ作リーはいいかげんリュック・ベッソンと手を切って香港に帰った方がいいと思う。ドミノトニー・スコット監督)もゴチャゴチャしてしまらない出来それにしてもスコット監督、最近やたらブレまくりの映像をコラージュしている作品が多いが、目が疲れるだけなのでいいかげん止めて欲しいよ。

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