ステルス (コロムビア:ロブ・コーエン 監督)
近未来、人工知能を搭載したステルス戦闘機(愛称:エディ)が開発される。が、落雷を受けたエディが突然自我に目覚め、暴走を開始する。
…と、こうストーリーを書けば面白そうだと思う。CGをフル活用したVFXも素晴らしい成果を見せている。
が、映画を観ているうちに腹立たしくなって来た。なにしろ、このステルス部隊が、テロリスト撲滅という大義の元に、勝手に相手国に不法侵入し、テロリストのいるビルを爆破攻撃するのである。その為に大勢死のうがお構いなし。…なんだこれは。まるで「チームアメリカ/ワールドポリス」ではないか。にしても、あちらは世界の警察を自認するアメリカという国を徹底して皮肉り、笑い倒しているから楽しめるが、こちらは真面目に作っているつもりなのだから困ってしまう。脚本もいろんな映画の継ぎはぎだらけだからストーリーに一貫性がない。例を挙げれば、出だしは「トップガン」、人工知能に全てをまかせ、それが暴走するあたりは「2001年−」、「地球爆破作戦」、落雷を受けて人工知能が自我に目覚めるのは「ショートサーキット」そのまんま、後半になって来ると今度はエディと主人公のベン(ジョシュ・ルーカス)とが心を通わせ、友情で結ばれて行く…て、これ、まんま「アイアン・ジャイアント」じゃないかい。ベンを守る為、自己犠牲で体当たりするくだりもそのまま。―とすると、エンドタイトル後に用意されているというオチ(わざわざ冒頭に注意の字幕が出る)もまさかあれじゃないだろうな…と思ったら、本当に「アイアン・ジャイアント」のオチそのままだったので、思わずイスからズリ落ちそうになった。
一方ではまるでとって付けたように、ヒロインが北朝鮮に不時着し、ベンが救出に向かう。これは「エネミー・ライン」か。救出の為、捕獲されていたエディを乗っ取って脱出するあたりは「ファイヤーフォックス」である。…いちいち挙げてたらキリがないが、こういう継ぎはぎをやってるものだから、前半の感じでは、暴走するエディをベンたちが知略を繰り広げた末に退治する…という結末になるかと思いきや、大して伏線もなくベンとエディが仲良くなってしまい、尊敬すべき上官どのは後半では一転して悪役になる…とまるで支離滅裂。主人公の仲間のはずのジェイミー・フォックスは途中で消えてしまうし…。お話が繋がっていない、こんな脚本をよくまあ採用したものである。何の落ち度もない、不法侵入者を捜索しているだけの北朝鮮兵士をバタバタ殺しまくって反省の色もない。悪の枢軸国の連中は殺しても構わないとでも思ってるのだろうか。まったくトンでもない映画である。過去の名作の継ぎはぎと言えば「ザ・コア」なんていう珍作もあったが、あれに匹敵するバカ映画である。おバカなだけなら許せるが、ブッシュとネオコンの意向を反映したようなアメリカ=世界の警察的思想の作品をさも感動作のように作る発想がそもそも許せない。「パール・ハーバー」に並ぶ愚作である…と言っておこう。
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