ワーストと言っても出来の悪い映画は沢山あるが、私の選考基準は、面白くなりそうだと期待を抱かせながらその期待を大きく裏切った作品に対して厳しいというスタンスであります。従ってもともと期待していない作品なんかハナから無視しています。ここにランクアップされるということは、それだけ名誉(?)だと思っていただきたい。では発表します。

順位 作  品  名 監    督
スターウォーズT/ファントム・メナス ジョージ・ルーカス
お受験 滝田 洋二郎
ドリーム・メーカー 菅原 浩志
梟の城 篠田 正浩
たどんとちくわ 市川 準
ホーンティング ヤン・デ・ボン
グロリア シドニー・ルメット
奇蹟の輝き ヴィンセント・ウォード
メッセージ・イン・ア・ボトル ルイス・マンドーキ
10 菊次郎の夏 北野 武
ユー・ガット・メール ノーラ・エフロン

 

 別項の作品批評につけた×の数がランキングに比例しない場合がありますが、ここでは作品の出来よりも私の期待の大きさと映画を見ての失望度合いとの差が大きいものが上位になっておりますので、そのつもりで。以下ワーストにした理由を記します。なおアンダーライン付の作品名をクリックすれば作品批評にジャンプします。 (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)

 まずなんと言ってもこの作品「スターウォーズ:エピソードT/ファントム・メナス」。あの、映画ファンを狂喜させた大傑作「スターウォーズ」1作目(エピソードW)から待たせること22年!。当時20歳台後半だった私もはや50歳を超えてしまった!。よくまあ待たせてくれたもんである。当然期待も大きいわけで、出来上がった作品を見て私がどれだけ落胆し失望したことか。その落差と言うか期待に対する裏切り度としてはやはり'99年度作品中ワートスワンである。富と名声を得たうえ今回もマーチャンダイズが大成功のJ・ルーカスは事業家としては一流でも映画作家としては堕落したと言わざるを得ない。どんな点がダメかは私の作品評を参照してください。
 「お受験」のラストの裏切りも許せない。あのラストは決してお受験合格を意味しないという擁護論(寺脇研氏等)もあるが、そんな問題ではない。男の夢と誇りを賭けたラストランを途中で捨てるという行為を容認する姿勢が許せないのだ。現実が息の詰まるようなストレスに満たされているからこそ(お受験もその代表)、観客はせめて映画の中で爽やかな夢に浸りたいのである。脚本は、10年前には「私をスキーに連れてって」のような爽やかでスカッとする秀作を書いていた一色伸幸。ここ数年は「七人のおたく」「熱帯楽園倶楽部」とワースト候補作品ばかり。いつまで期待を裏切り続けるのだ!。

 「ドリームメーカー」のダメさは言うまでもない。初めから期待していないのならワースト上位にはしないのだが、脚本が「二人が喋っている」(監督も)「大阪物語」となかなか面白い作品を書いている犬童一心(共作)、監督が「ぼくらの7日間戦争」でやや注目された菅原浩志というスタッフにちょっぴり期待したゆえに失望度も大きかったということである。そういう意味では今から35年程前に「異聞猿飛佐助」「暗殺」などの当時としては斬新な時代劇を作ったこともある篠田正浩監督の「梟の城」もガッカリ度が高い作品であった。

 私は食べ物を粗末にしたりギャグに使ったりする作品は根本的に嫌いである。「たどんとちくわ」は、事もあろうにナニをおでんの鍋に浸けて「ここにちくわがある」と言わせる愚劣な作品。そんなの何が面白いのか。この原作を読んで私は椎名誠が嫌いになったのだが、これをまた映画化するという神経が理解できない。映画そのものもてんでつまらない。カネ返せ!。市川準監督もこれで嫌いになりそうである。
 「スピード」という快作を作って我々を喜ばせたヤン・デ・ボンも、その後「ツィスター」「スピード2」と失速気味。今回の「ホーンティング」はロバート・ワイズの「たたり」のリメイクであるが、低予算だった前作に比べ格段に金をかけ、ILMのSFXもフル活用しているにもかかわらずまったく怖くなく凡庸な出来であった。次回こそ捲土重来を期待したいところなのですがね。
 リメイクと言えば「グロリア」。ジョン・カサベテスの前作は傑作だったが、今回のシドニー・ルメット版は主役も演出もダメ。前作は主役のジーナ・ローランズがちょっとくたびれかけたオバサン風で、これがいざ逃避行になると俄然シャキッとなるあたりがハードボイルド風でカッコ良かったのだ。シャロン・ストーンでは貫禄負けである。ボインを強調した衣装もかえってマイナス。ラストも緊張感がまるでない。ベテラン、シドニー・ルメットも衰えが目立って来たようである。
 「奇蹟の輝き」。天国と地獄を映像化したSFXが凄い(アカデミー視覚効果賞受賞)。ただそれを見せるだけの作品でドラマとしてはまったくつまらない。丹波哲郎サンが喜びそうな作品ではありますがね。
 「メッセージ・イン・ア・ボトル」。原作はベストセラーだし、ストーリーを聞いただけでは面白そうだったのだが、映画はモタモタした展開で盛り上がらないまま、ケビン・コスナーがあっけなく死んで終わる。ポール・ニューマンもおいしい役どころなのに、それなりに貫禄を示すのに存在感が希薄である。監督は「男が女を愛する時」というこちらも面白くなかった作品のルイス・マンドーキだから、監督の起用に問題ありか。同じようにベストセラーに挑戦したクリント・イーストウッドが「マディソン郡の橋」で大成功したのとは対照的である。この所プロデューサーとしてのコスナーはスランプのようである。
 北野武は私の見る所、「キッズ・リターン」を頂点にパワーが落ちてきているようである。評判の「HANA−BI」も私は買っていない。ヴェネチアで賞を取ったからといって過大評価は禁物である。(余談になるが、「うなぎ」という今村昌平としては「にっぽん昆虫記」「神々の深き欲望」の頃に比べ格段に衰えている作品にグランプリを与えるような海外の映画祭は信用しない方がいいというのが私の持論である)今回の「菊次郎の夏」も、いくつか印象的なシーンはあるが、主人公菊次郎に対する作者の視点が一貫しないのが欠点。ラスト間際の遊びのシーンは単にたけし軍団を使ったテレビ・バラエティをなぞっているだけでありつまらない。バス停に2日も野宿した間、たけしの顔に不精ヒゲが全く生えていないという演出上の手抜きも困りものである(手ぶらで旅をしてるのだから髭剃りをもっている筈がない)。ヒゲが目立って来たのでホテルに泊まったとした方が自然である。少年が祖母に声もかけずにに旅に出たまま何日も音信不通である点にも注意が払われていない(途中で祖母に電話しているシーンくらいはどこかに入れるべきだろう)。誰かがこんな点は注意すべきだろうし、それを聞き入れる寛容さがなければ映画作家としては一流になれないと思う。北野武という作家が好きである故の苦言である。御容赦。
 「ユー・ガット・メール」。退屈。わが森田芳光の「(ハル)」の方がもっと面白かった。 以上。

 「ゴジラ2000/ミレニアム」 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」もワースト圏内だが正月公開作品ゆえ来年度回しに・・・。 あと、見ていないが見る気がしないし、見たら絶対ワーストに入れたくなるだろう作品は以下の通り。「サイコ」(名作を冒涜するな!)「ノストラダムス」(・・・・)「英二」(予告編見て見る意欲をなくしたという珍しい作品)「ナイル」(某教授が原作のミステリーと聞くだけで止めとこうと思った。快楽亭ブラック師匠もワーストと言っとります)

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