番外編第9回 「藤竜也のクレイジー・クールな世界」

 
開催日: 1976年4月24日(土)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 10:30

テーマ: 番外編もいよいよ今回が最後で、庄内さんの無頼社主催の4回目となる藤竜也の特集。同2回目で梶芽衣子特集を行っているので、これで日活ニューアクション、特に「野良猫ロック」シリーズで活躍したコンビが出そろった事となる。番外編のトリとしては申し分ない番組と言えよう。取り上げる作品も「三人の女 夜の蝶」を除いて日活ニューアクションの代表作ばかり。また、サブタイトル「日活ニューアクションのアンチ・ヒーロー」にある通り、渡哲也や宍戸錠らヒーローの影で、藤竜也はクールなアンチ・ヒーローとして異彩を放っていたと言えるだろう。こういう視点で藤竜也という俳優を改めて見直すのも、面白い試みである。

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(注)プログラムはすべてB4サイズです。印刷したい場合はB4が印刷出来るプリンターなら問題ありませんが、A4プリンターであれば、B4→A4への縮小プリントを行ってください。

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(作品紹介)

 野獣を消せ

 製作:日活
 封切日:1969.02.22  上映時間:84分  カラー/日活スコープ
 企画:増田弥寿郎 
 監督:長谷部安春 
 脚本:永原秀一、中西隆三 
 撮影:姫田真佐久 
 美術:木村威夫 
 音楽:坂田晃一 
 助監督:蔵原惟二
 出演者:渡哲也、藤竜也、尾藤イサオ、川地民夫、集三枝子、山野俊也、杉山俊夫、吉岡まり、 藤本三重子

それまで、野村孝監督の傑作「拳銃は俺のパスポート」、東宝の加山雄三主演「狙撃」などのハードボイルド・アクションの秀作の脚本で注目されていた永原秀一と長谷部安春監督がタッグを組んだだけあって、日本映画には珍しいハードバイオレンス・アクションであり、日活ニューアクション初期の傑作となった。
渡哲也はプロハンターで、レイプされ自殺した妹(吉岡まり)の仇を討つ為、基地周辺で好き勝手に暴れまくる不良グループと対決する。その不良グループのリーダーが藤竜也で、仲間に尾藤イサオ、川地民夫らがいる。渡は不良たちに捕まりリンチを受けたりするが、隙を突いて逃げ出して逆襲に転じ、ショットガンで不良たちを次々と血祭りに上げて行く。その殺戮描写が凄まじい。銃で撃たれた川地民夫の肉塊が壁にビチャッと張り付いたり、内臓がはみ出したりとスプラッタ・ホラー顔負けの残酷描写だ。
藤竜也たち不良グループの暴虐無人ぶりが強烈だ。それ故ラストで彼らが渡に徹底的にぶち殺されるシーンは西部劇的な快感がある。ラストで渡が基地の米兵に投降するシーンが、日本は未だにアメリカの属国であるという皮肉も感じられ面白い。この米軍基地問題、不良たちの反逆というテーマは、後の長谷部監督による傑作「野良猫ロック セックス・ハンター」にも受け継がれる事となる。
残酷なバイオレンス描写と言えばサム・ペキンパーを思い出すが、ペキンパーの血みどろバイオレンス西部劇「ワイルドバンチ」の公開は同年8月。2月公開の本作の方が早い。

  

 斬り込み

 製作:日活 
 封切日:1970.03.07 上映時間:88分  カラー/日活スコープ
 企画:園田郁毅、藤浪 浩
 監督:澤田幸弘
 脚本:永原秀一
 撮影:高村倉太郎
 音楽:小杉太一郎 
 助監督:蔵原惟二
 出演者:渡哲也、郷^治、藤竜也、沖雅也、岡崎二朗、藤健次、扇ひろ子、杉良太郎、中村竹弥、青木義朗

この作品の紹介については、第6回上映会「不死鳥・渡哲也の横顔」に掲載済に付き、ここでは省略します。お読みになりたい場合は、左のリンクバナーをクリックしてください(左の目次からも参照出来ます)。

  

 野良猫ロック セックス・ハンター

 製作:日活/配給:ダイニチ映配
 封切日:1970.09.01 上映時間:85分  カラー/日活スコープ
 企画:高木雅行、沢田喜代一 
 監督:長谷部安春 
 脚本:大和屋竺、藤井鷹史(=長谷部安春) 
 撮影:上田宗男 
 音楽:鏑木 創 
 助監督:白井伸明
 出演者:梶芽衣子、安岡力也、藤竜也、岡崎二朗、小磯マリ、青木伸子

この作品の紹介については、第4回上映会「野良猫ロック フェスティバル」に掲載済に付き、ここでは省略します。お読みになりたい場合は、左のリンクバナーをクリックしてください(左の目次からも参照出来ます)。

 予告編   https://www.youtube.com/watch?v=zAP9eR-r3Oc

 

 三人の女 夜の蝶

 製作:日活(配給:ダイニチ映配)
 封切日:1971.04.24  上映時間:89分  カラー/日活スコープ
 企画:三浦 朗、佐々木志郎 
 監督:斎藤光正 
 脚本:宮下教雄、来栖三郎 
 撮影:萩原憲治 
 音楽:鏑木 創 
 助監督:岡田 裕 
 出演者:松原智恵子、梶芽衣子、山本陽子、藤竜也、二谷英明、川地民夫、青江三奈

これは藤竜也出演作としては珍しい、夜の風俗ものである。藤はなんと冒頭で松原智恵子をレイプするヤクザ役。噂が広がり、婚約者にも去られ、町に居られなくなった松原は東京に移り、新宿のクラブでホステスとして働く事となる。ここで知り合った二谷英明と親しくなり、幸せを掴むかと思われた時、自分を襲った藤竜也と再会する。最初は反感を持つも、藤が相手の組との揉め事で傷を負い、成り行きで介抱した事から二人は恋仲となるが、藤は敵対する組との手打ちの結果、殺されてしまうという結末。
青江三奈がクラブで歌うシーンが何度も登場する等、日活お得意の歌謡ドラマの味もあるが、ヤクザ社会の汚さを描く辺りはニューアクション的でもある。梶芽衣子は藤の幼馴染のホステス役で出演。

    

 流血の抗争

 製作:日活(配給:ダイニチ映配)
 封切日:1971.06.10  上映時間:86分  カラー/日活スコープ
 企画:岩井金男、佐々木志郎 
 監督:長谷部安春 
 原案:三城 渉 
 脚本:永原秀一 
 撮影:山崎善行 
 音楽:鏑木 創 
 助監督:白井伸明 
 出演者:宍戸錠、佐藤允、梶芽衣子、藤竜也、植村謙二郎、三条泰子、沖雅也、戸上城太郎、内田良平、郷^治

ヤクザの血で血を洗う抗争をスタイリッシュに描いた、長谷部安春監督の日活一般映画としては最後の秀作である。脚本が長谷部監督の「野獣を消せ」「女番長 野良猫ロック」、澤田幸弘監督の秀作「斬り込み」の永原秀一だけあって、これもまた日活ニューアクションの快作となった。藤竜也は宍戸錠の弟分、佐藤允が錠の旧知のヤクザ、梶芽衣子がその佐藤の妹役を演じている。ただ、宍戸錠と芽衣子が恋仲というのは年齢が離れ過ぎてる気もするが(笑)。
本作が見事なのは終盤のシークェンス、次々と仲間を殺された宍戸錠が佐藤、藤と共に敵の組に殴り込みをかけ、相手を倒すも佐藤は死に、錠と藤も瀕死の重傷を負いながらも最後のボス・戸上城太郎を待つ長いシーン。藤竜也が錠に「兄貴、寒くないですか?俺は昔から暖ったけえ所が好きだった」と語りかけながら、やがて静かに息を引き取る。ここは泣かせる名シーンだ。そして帰って来たボス戸上を錠が倒す。長谷部の「縄張はもらった」でもラストで旭と錠が戸上城太郎のボスを倒していたのを思い出す。ラストシーンは錠と藤が乗った車が路上で停止し、クラクションが鳴り続け、二人の死に顔にエンドマーク。このラストも見事だ。余談だが長谷部の暴力団ものは、縄張はもらった」から「広域暴力 流血縄張(小林旭主演)そして本作流血の抗争」と、題名がしりとりのように繋がっているのが面白い。

 

 不良少女魔子

 製作:日活(配給:ダイニチ映配)
 封切日:1971.08.25  上映時間:83分  カラー/日活スコープ
 企画:今戸栄一、沢田喜代一、佐々木志郎 
 監督:蔵原惟二 
 脚本:藤井鷹史、黒木三郎 
 撮影:山崎善行 
 美術:木村威夫 
 音楽:鏑木 創 
 助監督:伊藤亮爾 
 出演者:夏純子、戸部夕子、美波節子、原田千枝子、藤竜也、小野寺昭、岡崎二朗、相川圭子、宍戸錠、深江章喜

トリは、日活の一般映画として最後の作品「八月の濡れた砂」に併映された作品。不良少年、不良少女もの2本立てとは、いかにも日活一般映画の最後を飾るのに相応しい番組だ。監督は蔵原惟繕の弟で、これが監督デビュー作となる蔵原惟二。脚本の藤井鷹史は長谷部安春監督のペンネームで、長く長谷部作品の助監督を務めた蔵原の昇進祝いに書いたと思われる。藤竜也は夏純子扮する魔子の兄で安岡組組員を演じている。魔子が仲間を引き連れ、自由奔放に活動するシーンは、長谷部監督の「野良猫ロック」シリーズを思い起こさせる。愛した男と体を重ねた後、車を降りて歩き出す魔子の姿を、意識的にピントをボカして撮る等、蔵原監督のスタイリッシュな演出が見どころ。ラストは、仲間や愛した男を殺した安岡組を許せず、魔子は兄・藤竜也を刺し殺し、最後に仲間を裏切った小野寺昭をプールサイドで刺し殺す。ここで夏純子の目のアップとなり、「邪魔だなあ、みんなどいてよ」との気だるいモノローグでエンドとなる演出が斬新。蔵原惟二監督の鮮烈なデビュー作として記憶に残る力作である。


(回想記)

 日活一般映画末期に突如登場した日活ニューアクション、その中でもクールなワルや不良少年、ヤクザ組織の下っ端といった、はみ出し者を嬉々として演じて来た藤竜也の代表作を並べた今回の特集、日活ニューアクション・ファンには十分満足出来る上映会だったと思う。…しかし、この6本で、藤竜也はいずれも最後に死んでいる。偶然か、あるいは庄内さんが意識的に選んだのかどうか、今となっては分からない。

 
 DVD/ビデオソフト紹介
 


VHSのみ

「恋のつむじ風」とのカップリング

   

 ※次回プログラム  第20回  「笑和狂画傳 PartU」