第6回 「不死鳥・渡哲也の横顔」

 
開催日: 1975年2月15日(土)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 10:40

テーマ: 第6回にして、初めてテーマが人気映画スター主演作特集となった。実を言うと、メンバーの多くがそれぞれに大好きな俳優がおり、いずれはスター特集をやりたいという思いは強かったが、さて、最初に誰を選ぶかという点で侃々諤々、結局は丁度この日(2月15日)から、渡哲也の東映移籍後の主演第1作「仁義の墓場」(深作欣二監督)が公開される事になり、それを記念して渡哲也特集をやろう、という事になった経緯がある(従って上映会のサブタイトルも「祝・東映初主演記念!」とつけられた)。さて、今度は作品の選定だが、これまた議論百出、最終的に、デビュー当初から脂の乗った頃までの代表作までを順に追う事となり、こういうラインナップとなった。いずれにせよ5本ではとてもカバーし切れないのは毎回同じ悩み。なお、多分最高作であろう「紅の流れ星」は既に第2回で上映済につき、今回は残念ながら外れる事となる。

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(作品紹介)

 真紅な海が呼んでるぜ

 製作:日活 
 封切日:1965.07.03 上映時間:83分  カラー/日活スコープ
 企画:山本 武 
 監督:松尾昭典 
 脚本:雨宮 隆、芦沢俊郎、松尾昭典 
 撮影:岩佐一泉
 助監督:千野皓司
 出演者:渡哲也、二谷英明、中原早苗、松原智恵子、藤竜也、金子信雄、郷^治

渡哲也の映画デビューは、1965年3月の「あばれ騎士道」(小杉勇監督)。この作品は宍戸錠主演だが、2作目「青春の裁き」(小杉勇監督)にして早くも主演を果たし、本作はデビュー3作目に当る。以後立て続けに映画出演が続き、この年だけで出演作は7本に上る。日活の、新スターにかける期待の大きさが分かる。いかにも日活らしい、海と密輸船が出てくる海洋アクション…であるが、特に派手な見せ場もない、可もなし不可もなしといった出来。渡の、デビュー当初らしい初々しさを拝見出来る辺りが見どころか。なお本作は、後に多くの作品でコンビを組む松原智恵子との初共演作でもある。

 

 骨まで愛して

 製作:日活 
 封切日:1966.07.09 上映時間:91分  カラー/日活スコープ
 企画:仲川哲朗 
 監督:斎藤武市 
 原作:川内康範
 脚色:川内康範 
 撮影:荻原憲治 
 音楽:小杉太一郎 
 助監督:丹野雄二
 出演者:渡哲也、浅丘ルリ子、松原智恵子、宍戸錠、金子信雄、深江章喜、郷^治、城卓矢
 
ミリオンセラーとなった城卓矢の大ヒット曲「骨まで愛して」を主題歌にした歌謡アクション映画。当時はこういった具合に、大ヒットした流行歌をタイトルにし、歌った歌手を、演技が出来る場合は主演、そうでない場合はほんのチョイ役で出演させるケースが沢山あった(本作の場合は無論後者)。事実この直前の渡哲也の出演作は、園まりが主演する「逢いたくて逢いたくて」。その前はアイ・ジョージと共演の「赤いグラス」。渡の次回作はまたまた城卓矢のヒット曲「あなたの命」といった具合(ちょっと続き過ぎだ(笑))。
しかし、お話の方は、タイトルからはあまり想像出来ないが、小林旭主演の「渡り鳥」シリーズと似た本格的なアクション映画である。なにしろライバルとなる宍戸錠の役名が“ダイスの政”(笑)。そう言えば監督も「渡り鳥」シリーズの斎藤武市であった。後半のクライマックスでは、広い岩場で宍戸錠と凄まじい殴り合いを繰り広げる。ちょっとグレゴリー・ペック主演の「大いなる西部」をも思わせる。ここはなかなかの見もの。まさに、“遅れて来た日活無国籍アクション”と言えるのではないか。

 

 東京流れ者

 製作:日活 
 封切日:1966.04.10 上映時間:82分  カラー/日活スコープ
 企画:仲川哲朗
 監督:鈴木清順
 原作:川内康範
 脚色:川内康範
 撮影:峰 重義
 美術:木村威夫
 音楽:鏑木 創 
 助監督:葛生雅美
 出演者:渡哲也、松原智恵子、二谷英明、北龍二、江角英明、郷^治、川地民夫 

日活時代の鈴木清順監督作品の中では、人によっては好みが分かれるだろうけど、アクション映画としては最も好きな作品(青春映画としては「けんかれじい」がベストなのは異論がないだろう)。お話としては、組の解散で東京を追われた“不死鳥の哲”(渡哲也)が、各地を流れ歩いた末、東京に戻って、裏切った親分に杯を返す…というラストまで、特に新味はないのだが、随所に盛り込まれた不思議な色彩、シュールな空間描写(美術は清順監督と絶妙のコンビ・木村威夫)、キザなセリフ(「流れ者には女はいらねえ」、「女と一緒じゃ歩けないんだ」)、と、まあ清順監督が自由奔放に遊びまくった快作であり、初期の渡哲也の代表作と言えるだろう。硬い映画雑誌やマスコミには無視されたが、学生を中心とする若い世代間ではジワジワと人気が高まっていたのである。なお、鈴木監督へのインタビューによると、ラストシーンでは“緑の月”がかかっていたのだが、会社にカットされたのだという。観たかったなぁ。

オープニング


 無頼・人斬り五郎

 製作:日活 
 封切日:1968.11.02 上映時間:88分  カラー/日活スコープ
 企画:岩井金男
 監督:小沢啓一 
 原作:藤田五郎 
 脚色:池上金男、小沢啓一
 撮影:高村倉太郎
 音楽:伊部晴美
 助監督:澤田幸弘 
 出演者:渡哲也、松原智恵子、佐藤慶、小林千登勢、藤竜也、小池朝雄、岡崎二朗、秋とも子 

舛田利雄監督による「無頼より・大幹部」を第1作とし、2作目以降を新人小沢啓一監督が引き継ぎ、計6作が作られた渡哲也主演の「無頼」シリーズの第4作。五郎(渡)が、獄死した弟分(藤竜也)に死に際に頼まれた彼の姉を探した街で、心ならずもヤクザと対立し、ラストは塩田での壮絶な決闘となる。
小沢監督の演出は歯切れが良く、かつフェリー乗り場での松原智恵子との別れのシーンでは、“無頼のテーマ”の音楽をタイミングよく鳴り響かせ、切なさあふれる名場面とした。佐藤慶扮する殺し屋の屈折したキャラクターもいい。シリーズ中の最高作であろう。
なお本作から、それまではトランペットのメロディだけだった「無頼のテーマ」に歌詞が付き、渡哲也が歌っている。内容がヤクザの暗い運命を歌っているせいか、レコードも発売中止になった。いい曲なのだが。

 

 斬り込み

 製作:日活 
 封切日:1970.03.07 上映時間:88分  カラー/日活スコープ
 企画:園田郁毅、藤浪 浩
 監督:澤田幸弘
 脚本:永原秀一
 撮影:高村倉太郎
 音楽:小杉太一郎 
 助監督:蔵原惟二
 出演者:渡哲也、郷^治、扇ひろ子、藤竜也、沖雅也、岡崎二朗、藤健次、杉良太郎、中村竹弥、青木義朗

「無頼」シリーズのうち、小沢啓一が監督した4本で助監督を勤めた澤田幸弘監督のデビュー作。脚本が渡主演・長谷部安春監督の傑作「野獣を消せ」、東宝で「狙撃」等のスタイリッシュなアクションを書き、この後「野良猫ロック」を手掛ける永原秀一という事もあり、単なるヤクザ映画ではなく、組織の底辺で利用され棄てられて行く、いわゆる「鉄砲玉」と呼ばれる存在に焦点を絞り、そうした若者たちの鬱屈と反逆を鮮烈に描いた、まさに日活ニューアクションの代表的傑作となった。
タイトルロールやポスターの頭では、渡哲也主演、となっているが、実際には渡のスケジュールが1週間しか取れず、事実上の主演は藤竜也を中心とする若者たちである。冒頭のメイン・タイトルでアップになるのも藤竜也である。蛇足だが、澤田幸弘監督による、本作と、続く「反逆のメロディー」「関東幹部会」、いずれもメイン・タイトルに主人公のサングラス姿のアップが重なるという共通点がある。これらをまとめて、“澤田のサングラス三部作”と呼びたい(笑)。

 

(回想記)
渡哲也が東映で初主演する、という話題も重なって、パブリシティは上々。熱烈な渡哲也ファンも駈け付け、結果として観客数は141人と、これまで最多の「野良猫ロック」大会にに次ぐ動員記録となった。場内も熱気に包まれ、渡と清順監督のどちらのファンにも人気が高い「東京流れ者」ではボルテージは最高潮、オールナイトらしい盛り上りぶりとなった。やはり娯楽映画の人気は、スターあってのものだという事を再認識させられた。「野良猫ロック」の集客力も今にして思えば、梶芽衣子、藤竜也という、このシリーズで人気が沸騰したスターの力による所が大きかったのではないだろうか。
…ただ、高倉健に比べて渡哲也は、ここ数十年の主演作があまりにも少ない。もっと映画に出続けて欲しい、と多くのファンは望んでいるに違いない。

 
 DVD/ビデオソフト紹介

 

 「真紅な海が呼んでるぜ」

 ソフトなし

 
「無頼」シリーズDVD-BOX

 VHSのみ

   

※次回プログラム 第7回 「深作欣二監督特集−仁義なき戦いへの道−」