第4回 「野良猫ロック フェスティバル」

 
開催日: 1974年12月14日(土)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 10:40

テーマ: 一般映画としての日活映画末期(1970〜71年)に、突然狂い咲きのように登場した、誰が名付けたか“日活ニューアクション”。その中でも、最もカルト的な人気を博したのが、今回特集の「野良猫ロック」シリーズである。1970年当時の風俗や、世間から拗ねているような若者たちの無軌道かつ刹那的な生き様、死に様がヴィヴィッドに描かれた青春・アクション、どちらのジャンルにも収まりきらないユニークな傑作シリーズとして、多くの若い映画ファンの熱狂的な支持を集めた。監督も、スタイリッシュなハードボイルド作品が得意な長谷部安春と、アンニュイな青春群像を瑞々しく描くのが得意の藤田敏八両監督がそれぞれの持ち味を存分に発揮し、時代を代表する個性派映画作家としても大きく飛躍するきっかけとなった。

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(作品紹介)

 女番長 野良猫ロック

 製作:ホリ企画/配給:日活
 封切日:1970.05.02 上映時間:80分  カラー/日活スコープ
 監督:長谷部安春
 脚本:永原秀一 
 撮影:上田宗男
 音楽:鈴木邦彦 
 助監督:蔵原惟二
 出演者:和田アキ子、梶芽衣子、和田浩治、范文雀、ケン・サンダース、藤竜也

そもそもの企画は、三宮で番長をやっていたとの噂(?)の和田アキ子に、実際に番長の役をやらせたら話題になるのでは、という所から始まったらしい。それも、元々は日活の経営状態がジリ貧になり、切羽詰った中から、当時マンガが大ヒットしていた永井豪原作の「ハレンチ学園」の映画化の話が持ち上がり、その併映作として急遽企画されたものだという。まあほとんどヤケクソに近い番組だったわけである。
「斬り込み」を書き上げたばかりの永原秀一に急いで脚本を書かせ、長谷部安春監督が新宿で即興に近いロケ撮影を行った。土曜日の昼過ぎ、何処からともなくオートバイで新宿にやって来た和田アキ子が梶芽衣子と出会い、不良たちの抗争に巻き込まれ、一暴れした後、月曜日の朝に何処ともなく去って行く…という物語は、かつての日活無国籍アクションの残滓も残しているようだ。
終盤の和田のオートバイと藤竜也のバギーが地下街を走り回るチェイス場面は、警察にロケ許可も得ずゲリラ的に撮影を敢行した。通行人はエキストラでなく実際の通行人。チェイスに驚く迫真の表情は本物である。その暴走に驚いた通行人が110番し、藤竜也が過激派と間違われて警察に捕まる騒ぎとなった(笑)(「映画評論」誌より)。
それまで、着流し任侠映画まで撮らされ、ややクサッていた長谷部安春が、水を得た魚のようにダイナミックでヴィヴィッドな演出を見せ、まさに時代を切り取る青春映画の傑作となった。短いフラッシュバックによるカット繋ぎは、同年1月公開のアメリカン・ニューシネマの傑作「イージー・ライダー」からの影響がモロに出ている。
この2本立が予想外の大ヒットとなり、それぞれシリーズ化される事となった。映画はまさに水ものである。

予告編


 野良猫ロック ワイルド・ジャンボ

 製作:ホリ企画=日活/配給:ダイニチ映配
 封切日:1970.08.01 上映時間:84分  カラー/日活スコープ
 監督:藤田敏八 
 脚本:永原秀一、藤田敏八 
 原作:船地慧 
 撮影:安藤庄平
 助監督:岡田 裕 
 出演者:梶芽衣子、藤竜也、地井武男、范文雀、夏夕介、前田霜一郎 

前作のヒットに気をよくした日活は、すぐさま第二弾の企画を立てる。船地慧の「破れても突っ込め」を原作に、1作目の永原秀一が脚本を書き、藤田敏八が監督する事になった。前作の主演だった和田アキ子の再登板を当て込み、タイトルからして大柄(ジャンボ)な和田をイメージさせ、ポスターにもデカデカと和田の写真を入れたのだが、本人のスケジュール他の諸事情により和田の出演はなくなり、結局は1作目の数シーンを丸々使い回して誤魔化す事となった。この為、オールナイトで続けて見ると、先ほど見たシーンが流用されている事に気付いた観客から失笑が起きる事となる。
物語は、湘南の海岸でで怠惰な日々を過ごす5人の若者たち=ペリカンクラブの前に謎の美女(范文雀)が現れ、彼女にそそのかされたメンバーたちが、ある宗教団体の大金を強奪する犯罪計画を実行に移し、やがてちょっとした計画ミスから警察に追い詰められ、自滅するまでを描く。
物語よりも、藤田監督らしい、本筋とは関係ない遊びのシーンが楽しい。梶芽衣子のビキニ姿が拝めるのも見どころだが、彼女が「ねえねえ、アレやろうよ」とブルブルオッパイを揺するシーンは特に必見(笑)。そのアレとは、おケツを丸出しで、奇声をあげながら海岸をジープで蛇行する事で、その他愛なさがまた何ともおかしい。デボという仇名の前野霜一郎が、和田アキ子の「どしゃぶりの雨の中で」の歌が流れる中、校庭で黙々と銃器を掘り起こすシーンも印象的。ちなみに彼は数年後に、右翼の大物・児玉誉士夫邸に飛行機で突っ込んで自爆した。
同時上映作品は前作と同じく、シリーズ2作目の「ハレンチ学園・身体検査の巻」(丹野雄二監督)

 

 野良猫ロック セックス・ハンター

 製作:日活/配給:ダイニチ映配
 封切日:1970.09.01 上映時間:85分  カラー/日活スコープ
 監督:長谷部安春 
 脚本:大和屋竺、藤井鷹史(=長谷部安春) 
 撮影:上田宗男 
 音楽:鏑木創 
 助監督:白井伸明
 出演者:梶芽衣子、安岡力也、藤竜也、岡崎二朗、小磯マリ、青木伸子

前作の公開から1ヵ月後に早くも登場したシリーズ第3作。冒頭の、黒のパンタロンに鍔広帽というファッションで颯爽登場する梶芽衣子が実にクールで決まっている。この衣装は全て彼女が自ら選んだもの。このスタイルは後に梶の代表作、東映の「さそり」シリーズにも再登場し、クール・梶芽衣子のトレードマークとなる。
物語の舞台は多分立川と思われる米軍基地の街。そこを根城とする、梶率いるズベ公グループと、バロンと呼ばれる藤竜也率いる愚連隊・イーグルスとが、それぞれ好き勝手に暴れていたが、やがてこの街に、妹を探す混血児の青年・安岡力也がやって来て、それをきっかけに両グループが対立し、最後は見張り塔に立て篭もった安岡と、藤竜也との壮絶な銃撃戦で幕を閉じる。
藤竜也は、目の前で姉が進駐軍米兵にレイプされたというトラウマから混血児を憎んでおり、安岡の登場もあって、やがては“混血児狩り”に発展して行く、という展開は、いかにも「荒野のダッチワイフ」等の大和屋竺らしい脚本である。
名セリフも多い。梶芽衣子の「バッキャロー」とか、ヤクザに「テメエ、この街を何だと思ってるんだ」と問われた藤竜也が応える「俺の遊び場さ」等の決めセリフは伝説的にまでなっている。安岡力也は当時は、痩せてスラリとした長身で、今の姿からは想像もつかないくらい(笑)、カッコよかった。
一段と存在感を増して来た梶芽衣子と藤竜也の快演も素晴らしいが、何よりも最後、梶芽衣子が鍔広帽を下げてエンドマークとなる、冒頭シーンとペアになったカットなど、長谷部安春のスタイリッシュで熱のこもった演出が冴えた、これはシリーズ中の最高傑作であると同時に、日活ニューアクション、長谷部安春監督のそれぞれの頂点をなすモニュメンタルな傑作ではないだろうか。

冒頭シーン


 野良猫ロック マシン・アニマル

 製作:日活/配給:ダイニチ映配
 封切日:1970.11.22 上映時間:82分  カラー/日活スコープ
 監督:長谷部安春 
 脚本:中西隆三 
 撮影:山崎善弘 
 助監督:田中 登
 出演者:梶芽衣子、藤竜也、岡崎二朗、范文雀、郷^治、黒沢のり子

矢継ぎ早に公開されたシリーズ第4作。今回の舞台は横浜。梶芽衣子率いるズベ公グループが主人公というのは前作と同じだし、梶のファッションも、今回は白が主体だが、帽子は同じ鍔広帽といった具合に、一応前作のイメージを引き継ごうとしてはいるが、物語は大きく異なる。今回は脱走米兵を助け、彼と一緒に日本を脱出し、スエーデンまで行こうとする藤竜也と岡崎二郎の2人組がこの街にやって来て、彼らが逃走資金としてLSDを持ち込んだ事から、郷^治率いる不良グループとの抗争が展開することとなる。
脚本が前作までの永原秀一や大和屋竺などの個性派でなく、ベテラン中西隆三が担当している点や、藤竜也が、前作とはうって変わって、暴力を振るわない、大人しい反戦活動家(?)を演じている事もあってか、いま一つ盛り上がりに欠ける出来で、シリーズの中では一番評判の良くない作品である。
しかし、LSDパーティ・シーンでの、短いフラッシュ・カットには長谷部らしい演出が見られるし、1作目のパロディのようなミニバイクを駆っての街中疾走シーンも楽しいし(梶がパチンコ店内を「すみませーん」と言いながら駆け抜けるシーンには笑った)、シンドかった前作に対する息抜きと見ればこれはこれで楽しめる作品である。

 

 野良猫ロック 暴走集団’71

 製作:ホリ企画=日活/配給:ダイニチ映配
 封切日:1971.01.03 上映時間:87分  カラー/日活スコープ
 企画:佐々木志郎 
 監督:藤田敏八 
 脚本:永原秀一、浅井達也 
 撮影:萩原憲治 
 音楽:玉木宏樹 
 助監督:岡田 裕
 出演:原田芳雄、梶芽衣子、藤竜也、司美智子、夏夕介、地井武男、郷^治 

さて、シリーズもラスト、再び藤田敏八監督の登板である。今回は新宿中央公園あたりに住み着いている、梶芽衣子を中心としたヒッピー達が主人公である。メンバーには常連の藤竜也、「ワイルドジャンボ」メンバーの地井武男、夏夕介、新参加の原田芳雄に、何故か誰の子か分からない幼児までいる。原田はなんとドテラ姿であるが、これは原田の提案らしい。なんとなくけだるいムードが、藤田敏八監督らしい演出である。
ところがある日、梶芽衣子と恋仲だった地井武男が、郷^治の率いるバイク集団に連れ去られてしまう。実は地井はある田舎町の権力者(稲葉義男)の息子だった事が判る。ドサクサで地井が刺した殺人の罪を被って刑務所に入った梶が脱走し、地井を追って田舎町に向かった事を知ったヒッピーたちも後を追う。そして、地井を助け出そうとするヒッピーたちと、街のボス側との一大抗争が勃発し、クライマックスは廃坑を利用して作られた観光用西部劇のテーマパークに立てこもったヒッピー集団と、街のボス側との死闘になだれ込んで行く。
アクション映画であるはずなのだが、ヒッピーたちの自由気まま、誰にも束縛されない生活ぶりは明らかに「ウッドストック」「イージー・ライダー」等のアメリカン・ニューシネマからの影響が感じられるし、ボスの屋敷の前で藤がアジるシーンは、大学紛争の学生のアジ演説そのままである点も、まさに時代の空気をモロに反映している。
最後は、仲間を殺された原田がダイナマイトを抱いて郷と共に爆死。それをきっかけにヒッピーたちも火をつけたダイナマイトを持って敵陣に飛び込んで行き、あちこちでダイナマイトが炸裂する。…そして静寂が訪れ、一人残され、無邪気に走り回る幼児のあどけない笑顔がストップ・モーションとなって映画は終る。
強大な権力に対抗するには、武力闘争しかない、という、当時の連合赤軍事件を象徴するような展開も含めて、これはまさにその時代の断面をズバッと切り取った問題作なのである。

 

(回想記)
こうしてシリーズを見直して見ると、1作ごとに見事にテーマもカラーも舞台も異なっている。取り上げるテーマは、大学紛争も含めた若者の反抗、ヒッピー、ドラッグ、米軍基地、ベトナム反戦、権力者への怒り…と、見事に1970年、という時代の空気を鋭敏に切り取っている。そしてシリーズが進むにつれて次第に漂う無力感、寂寥感もまた時代の空気の反映である。単なる青春映画に留まらず、このシリーズが“日活ニューアクション”の代表的傑作として、今もカルト的人気を誇っている理由もその辺りにありそうである。そのおかげもあって、当日のオールナイトはこれまでとはうって変って熱気に包まれ、観客動員は180人とこれまでの最多となり、黒字とまでは行かないものの、まずまずの成果を収めた。4回目にして、当上映会もようやく軌道に乗って来たのであった。

 

 
 DVD/ビデオソフト紹介

   

※次回プログラム 第5回 「日活黄金アクションの世界」