スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (20世紀フォックス:ジョージ・ルーカス 監督)

 話題のSFサーガ・シリーズの掉尾を飾る(多分)作品。以前から書いて来たように、私はこの新シリーズには不満である。初めから、アナキンはダークサイドに落ちてダース・ベイダーになり、ラストは悪の銀河帝国が誕生し、善玉は辺境に追いやられるという、少しもスカッとしない結末になる事が予測出来ているからである(「エピソード1」「エピソード2」についての私の批評についてはこちらを参照→「EP1」 「EP2」)。

 まあそんな複雑な気分で本作を観た。予想通り、前項に書いた、その通りのお話となっていた(まあファンなら誰でも予想出来ますが(笑))。私は、娯楽映画と言うのはラストでは必ず善玉が勝利し、悪が滅ぶ―というのが基本パターンであると思っているし、これまでの“正しい娯楽映画”論の中でもその事を主張して来た。そういう意味ではこの“エピソード1〜3”シリーズだけを取ればそのパターンからは外れている。あくまで、その後の“エピソード4〜6”までを通して観て、初めて連続活劇娯楽映画として成立するのである。しかし、娯楽映画として一番面白いし、よく出来ているのは「エピソード4」(1作目)であるし、まだヒットするかどうか予測がつかず、シリーズ化の可能性も未知数だった当初、リスクを避けて安全パイである「エピソード4」から製作を開始した―という、ややいびつなスタートの事情を知れば、それも致し方ないとは思う。

 従って、連続娯楽活劇としては、「エピソード1」から順番に2→3→4→5→6と観るのが正しいだろうし、「エピソード6」を観終わって、壮大なサーガがやっと完結した―とホッとしたいところだろう。…だが、最初に「エピソード4」を観て大興奮し、胸躍らせてワクワクした最初からのファンとしては、5→6(時間を空けて)1→2…と作られた順に観るたびに、気分がどんどん落ち込んで来るのである。作品の出来の方も、この順にレベルダウンしているせいでもある。それほどまでに「エピソード4」は映画として完璧であり、単独でも成立しており、その他のシリーズ作品はおマケと言うか付録のようなものである。そのうえ、SFXはこの28年間の間に飛躍的にレベルアップしており、多分始めて1〜3を観た人が続けて4を観たら、そのSFXレベルの低さに唖然となるだろう('97年に作られた特別編で幾分補完されたとは言ってもである)。また以前からの疑問、1〜2で既に知り合いのはずの、オビ=ワンとC3PO、R2D2ドロイドが何故EP4で互いに知らん顔しているのか…という点についても、あまりにあっさりしたオチにガックリきた(ネタバレになるけど、敢えて記憶を消す必然性もないような気が…)。

 ―とまあ、いろいろ書いて来たが、物語としてはストレートで分かり易く、新シリーズ中では本作が一番出来がいい。このEP1〜3を、シェークスピアやギリシャ悲劇のような、人間の織り成す悲劇ドラマとして観るなら、これはこれで十分完成度は高いと言えるだろう。個人的には、本作ラストの、タトウィーン星の夕空シーンにはジーンと来てしまった。これで、映画としてのシリーズは終わってしまったのだな…と実感し、深い感慨に襲われた。このシーンを見れば、もう一度「エピソード4」から観直したい…とファンなら思うに違いない。これまでシリーズをずっと観て来た方には(特にEP2にガッカリした人は)、是非観ることをお奨めする。