番外編第2回 「無頼・渡哲也の軌跡」
・場所: シギノ大劇
・上映開始: PM 10:40
・テーマ: 前回に引き続き、「番外編」、その第2回。今回は渡哲也の大ファンを自認する庄内君の企画による、渡の代表シリーズ「無頼」シリーズ3本を間に挟み、まさにタイトル通り渡哲也が「無頼」シリーズの人気によってスターの道を歩み始めた、その軌跡を辿るラインナップと言えるだろう。なおこのポスターにはないが、上映会ではあるサプライズが予定されていた。
・当日プログラム(PDF) ※ご覧になるには Adobe.Readerのインストールが必要です。
(注)プログラムはすべてB4サイズです。印刷したい場合はB4が印刷出来るプリンターなら問題ありませんが、A4プリンターであれば、B4→A4への縮小プリントを行ってください。
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(作品紹介)
紅の流れ星
製作:日活
封切日:1967.10.07 上映時間:97分 カラー/日活スコープ
企画:園田郁毅
監督:舛田利雄
脚本:池上金男、舛田利雄
撮影:高村倉太郎
音楽:鏑木創
美術:木村威夫
助監督:小沢啓一
出演者:渡哲也、浅丘ルリ子、杉良太郎、松尾嘉代、藤竜也、宍戸錠
この作品の紹介については、第2回上映会「殺し屋列伝」に掲載済に付き、ここでは省略します。お読みになりたい場合は、左のリンクバナーをクリックしてください(左の目次からも参照出来ます)。
1点だけ補足すると、この作品の脚本・監督・撮影・美術・助監督といった中心スタッフがそのまま次の「無頼より 大幹部」に移行しており、このチームワークが「無頼」シリーズ成功の一つの要因と言えると思う。そういう意味でも重要な作品である。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=tSOGwN_VuSw (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
無頼より 大幹部
製作:日活
封切日:1968.01.13 上映時間:93分 カラー/日活スコープ
企画:岩井金男
監督:舛田利雄
脚本:池上金男、久保田圭司
原作:藤田五郎
撮影:高村倉太郎
音楽:伊部晴美
美術:木村威夫
助監督:小沢啓一
出演者:渡哲也、松原智恵子、川地民夫、松尾嘉代、浜田光夫、青木義朗、藤竜也、水島道太郎
記念すべき「無頼」シリーズ第1作。原作は実在の暴力団幹部だった藤田五郎が、自身をモデルに書いた実録小説で、これを映画化したのが本作。―という事は、東映の「仁義なき戦い」と似たような経緯をたどった訳で、東映実録路線の遥かな先駆と言えよう。
物語は、ヤクザの幹部だった五郎が、やがてヤクザの世界に嫌気が差し足を洗おうとするが、組織の非情な仕打ちに遂に怒りを爆発させ、ドスを抜いて悪を倒すまでを描く。そこに、五郎を好きになってしまった堅気の可憐な少女(松原智恵子)との恋模様も絡む辺りが東映作品とは異なる。どちらかと言えば青春映画の味わいもある。このフォーマットは以後のシリーズを通して一貫している。伊部晴美作曲のテーマ曲も印象的である。この作品が好評で、以後シリーズ化されて行く事となる。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=4vy6VeYXWlk (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
大幹部・無頼
製作:日活
封切日:1968.04.28 上映時間:97分 カラー/日活スコープ
企画:岩井金男
監督:小沢啓一
脚本:池上金男、久保田圭司
原作:藤田五郎
撮影:高村倉太郎
音楽:伊部晴美
美術:木村威夫、川原資三
助監督:澤田幸弘
出演者:渡哲也、松原智恵子、内田良平、岡崎二朗、田中邦衛、太田雅子、松尾嘉代、芦川いづみ、二谷英明
1作目のチーフ助監督だった小沢啓一の監督昇進第1回作品である。前作はベテラン舛田利雄が監督している事もあって、まだ義理人情のオーソドックスなヤクザ物に近い作品だったが、本作は若手新人監督らしい、ハードかつシャープな演出で魅せてくれる。前作で別れた雪子(松原智恵子)と再会、今度こそ真人間になろうと荷役人夫の仕事にありつくが、ヤクザ世界は五郎を見逃してはくれず、結局またもドスを抜く破目となる。素晴らしいのがラストの殴り込みシーンで、汚いドブ川の中でこけつまろびつ泥だらけになっての凄惨な格闘は見ごたえあり(個人的意見だが、ここは黒澤明監督の「酔いどれ天使」のラスト(ペンキまみれの格闘)を拝借した可能性あり)。そして、汚いドブ川の崖の上では若さがはち切れんばかりの女子高生たちのバレーボールの試合が行われているという清濁の対比が秀逸。素晴らしい新人監督の誕生に拍手を送りたい。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=K1pATsEZjaY (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
無頼・黒匕首<ドス>
製作:日活
封切日:1968.12.28 上映時間:86分 カラー/日活スコープ
企画:岩井金男
監督:小沢啓一
脚本:池上金男
原作:藤田五郎
撮影:高村倉太郎
音楽:坂田晃一
美術:川原資三
助監督:澤田幸弘
出演者:渡哲也、松原智恵子、川地民夫、北林早苗、青木義朗、中谷一郎、露口茂、郷^治、高品格
シリーズ5作目で、4作目「無頼・人斬り五郎」はシリーズ中の最高傑作であるが、既に第6回上映会「不死鳥・渡哲也の横顔」で上映済なので今回はパス。それにしても「人斬り五郎」の公開が11月2日で、本作は12月28日公開と、もの凄い強行スケジュールである。それでも水準以上の力作になっているのだから大したものである。
冒頭でいきなり、シリーズを通してのヒロイン・松原智恵子が殺されてしまうのに驚く。どうなるのかと思っていたら、彼女とそっくりの女性・志津子(松原の二役)が現れ、やはり五郎に恋心を寄せる。五郎も志津子を好きになりかけるが、堅気の女が自分と一緒になれば不幸になると考え、頑なに志津子を撥ねつける。五郎は砂利採取人夫として働き、今度こそヤクザから足を洗おうとするが、結局行き掛かりで最後は悪辣なヤクザと対決する事となる。脇で面白いのは暴力団幹部扮した青木義朗で、五郎との乱闘で刺された青木の死にざまがややオーバー気味で笑えてしまう。ただ、力作ではあるがややマンネリの傾向があり、シリーズは次の「無頼・殺(バラ)せ」で終了する事となる。
なお「人斬り五郎」の前に公開された「無頼非情」を会社では3作目としているが、監督が江崎実生で、脚本もこれのみ池上金男が参加していない事もあり、我々ファンはこれを「無頼」シリーズとは認めていない(笑)。いろんな所で催された「無頼シリーズ・オールナイト上映会」でも、毎回上映されるのは、「無頼非情」を除いた5本立てである。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=9hlkd5kLD44 (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
関東破門状
製作:日活 配給=ダイニチ映配
封切日:1971.07.03 上映時間:86分 カラー/日活スコープ
企画:園田郁毅、浅野正孝
監督:小沢啓一
脚本:鴨井達比古
撮影:安藤庄平
音楽:鏑木創
美術:木村威夫
助監督:藤井克彦
出演者:渡哲也、丘みつ子、藤竜也、佐藤慶、郷^治、岡崎二朗、夏純子、内田良平
渡のもう一つのシリーズ「関東」シリーズの3作目にしてシリーズ最終作。同時に、渡哲也の日活での最後の作品ともなった。日活は翌月末公開の「八月の濡れた砂」(藤田敏八監督)を最後に一般映画の製作を終了、やがてロマン・ポルノへと舵を切る事となる。そういう状況を意識したのかどうか、これは日活ヤクザ映画の最後の輝きを放つ傑作となった。小沢啓一の演出も熱を帯び、バイオレンス描写も凄惨でただならぬ殺気が作品に漂っている。岡崎二朗や夏純子らが無残に殺されるシーンは痛ましい。ラストが特に印象的で、怒りに燃えた渡が敵の幹部(山本麟一)を追い詰める場所が映画館・新宿日活オスカー。館内を次々と血の海にして行き、最後に館前の路上で相手を倒す。まるで一般映画製作打ち切りを決めた日活に当てつけるかのようだ(笑)。
どうでもいいが、「関東」シリーズというのは少し前に東映でも鶴田浩二主演で作られていて、しかも題名が「関東流れ者」、「関東破門状」と2本もこちらの渡主演作と全く同じで、おまけに東映の方の監督が小沢茂弘と監督の苗字まで同じなので紛らわしい(笑)。
仁義の墓場
製作:東映(東京撮影所)
封切日:1975.02.15 上映時間:94分 カラー/東映スコープ
企画:吉田達
監督:深作欣二
脚本:鴨井達比古
原作:藤田五郎
撮影:仲沢半次郎
音楽:津島利章
助監督:小平裕
出演者:渡哲也、梅宮辰夫、多岐川裕美、池玲子、芹明香、山城新伍、郷^治、成田三樹夫、安藤昇
ポスターやプログラムのどこにも書かれてないが、庄内君発案で、この「仁義の墓場」をサプライズ上映する事になっていた。観客を驚かせようという事である。ところがこの上映会の1本目「紅の流れ星」だったか、巻のかけ違えという映写ミスが発生した。デジタル上映の今では考えられない事だが、フィルムを1巻ごとに交互上映する当時の方式ではこうしたトラブルがたまにあった。この作品を何度も観ている我々や一部の熱烈な観客がすぐに気が付き、上映をストップして巻をチェックし、正しい順番を確認して上映を再開したのだが、この時庄内君が「トラブルを起こしたお詫びに特別サービスで『仁義の墓場』を追加上映します」とアナウンスしたので、観客は機嫌を取り直し、場内は大喜びだった。実際はトラブルが無くても上映する予定だったのだが。
当時の懐かしい思い出である。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=LD6aVS9ALSA (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
(回想記)
というわけで、メンバーの一人による単独上映会も2回目となり、まずまずの成功で、今後も正規の上映会の間を縫って、こうした個性豊かな上映会が開催される道筋が示される事となった。また、長編作品だけで6本立てとなる番組編成の奔りとなった事でも、また上映トラブルをうまく切り抜けた点でも、記憶に残る上映会だったと言えるだろう。
DVD/ビデオソフト紹介
※次回プログラム 第14回 「マイトガイ 小林旭の傾向と対策」