PART 4 (No.61〜80) |
No | ベ ス ト 作 品 | ご 参 考 |
61 |
「アラビアのロレンス」 ('62) 英/監督:デヴィッド・リーン デヴィッド・リーン監督による、70ミリ超大作。実在した英陸軍中尉T・E・ロレンスの波乱に富んだ生涯を格調高く描いて、70ミリ作品としてはキネマ旬報初のベストワン('63年度)を獲得した秀作。 |
双葉さんのベスト100:
(81)「アラビアのロレンス」 (左参照)
小林さんのベスト100:
*「世界残酷物語」(62)。グワルティエロ・ヤコペッティ監督の、当時センセーションを呼んだ記録映画。以後内外で「−残酷物語」という題名が大はやりとなった。リズ・オルトラーニ作曲の、映画とは不似合いな主題曲「モア」も大ヒットした。 *「史上最大の作戦」(62)。44大スター競演というふれ込みの、ノルマンディー上陸作戦を描いた戦争映画の大作。戦闘シーンは迫力があったが監督が4人もいるせいか散漫な出来。ポール・アンカが作曲したテーマ曲「史上最大の作戦マーチ」がヒットパレードを賑わした。 |
62 |
「奇跡の人」 ('62) 米/監督:アーサー・ペン 三重苦の偉人、ヘレン・ケラーの少女時代を題材にした、アーサー・ペン監督の出世作。元はウィリアム・ギブスン原作による舞台劇で、ブロードウェイでペン自身の演出によりヒットした事で映画化される事となり、舞台版に出演したアン・バンクロフト(サリバン先生)、パティ・デューク(ヘレン)がそのまま映画でも同じ役を演じることとなった。 |
*「007は殺しの番号」(62)。記念すべき007シリーズ第1作。テレンス・ヤング監督。前半の緊迫感溢れる演出はいいが、後半はやや大味。ジョセフ・ワイズマン演じるドクター・ノオは、後の「燃えよドラゴン」の悪の首領のヒントにもなった。再公開時には「007/ドクター・ノオ」と改題された。
*「水の中のナイフ」(62)。ロマン・ポランスキー監督の、わが国初登場作品。ちょっと「太陽がいっぱい」を連想させるミステリアスな展開が魅力的。好きな作品です。 *「シベールの日曜日」(62)。セルジュ・ブールギニョン監督。インドシナ戦争で記憶を失った元兵士(ハーディ・クリューガー)と、孤独な少女との心の触れ合い、そして誤解による不幸な結末までを繊細な演出で描いたフランス映画の佳作。これも好きですね。 |
63 |
「鳥」 ('63) 米/監督:アルフレッド・ヒッチコック
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双葉さんのベスト100: (82)「8 1/2」 ('63 監督:フェデリコ・フェリーニ) 小林さんのベスト100: (82)「鬼火」 ('63 監督:ルイ・マル) *「地下室のメロディー」(63)。アラン・ドロンとジャン・ギャバン初顔合わせの、カジノ襲撃泥棒映画。アンリ・ベルヌイユ監督。ラストのほろ苦い結末が見どころ。まあ気楽に観られる作品で、観ておいて損はありません。ミシェル・マーニュ作曲のテーマ曲は何度聴いても素敵。 *「博士の異常な愛情」(63)。スタンリー・キューブリック監督の、ブラック・ユーモアに満ちたポリティカル・SFコメディ。ピーター・セラーズが1人3役で笑わせます。ドタバタ・タッチで展開するがラストで背筋が寒くなる。当時のソ連との冷戦下ではリアリティがあったが、今観ればどうだろうか。個人的には好きな作品。 *「コレクター」(63)。ウィリアム・ワイラー監督の心理サスペンスの秀作。孤独な若者(テレンス・スタンプ)が1人の女を地下室に監禁し、蝶のように飼育するというストーリー。わが国でも亜流作品が沢山作られたが、さすがワイラー監督、出来が違います。見応えあり。 |
64 |
「007/危機一発」 ('63) 英/監督:テレンス・ヤング イアン・フレミング原作による007シリーズの映画化作品は、'62年の「007は殺しの番号」を第1作として、以降作る度に大ヒットを重ね、いろんな亜流映画も世界的に続出するなど、アクション・エンタティンメント映画の歴史を変えた…と言ってもいいくらいのメガヒット・シリーズである。40年以上経った今でもシリーズは続いており、これほど息の長い長寿シリーズは世界的に見てもわが「ゴジラ」くらいしか思い浮かばない(大森一樹監督も「007とゴジラを監督するのが最大の望み」と言っていた)。 |
*「あなただけ今晩は」(63)。ビリーソ・ワイルダー監督、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン主演という「アパートの鍵貸します」のトリオによるコメディ。相変わらずジャック・レモンがうまいがお話はちょっと無理があるような気がする。原作はフランス・ミュージカル「イルマ・ラ・ドゥース」。
*「シャレード」(63)。スタンリー・ドーネン監督、オードリー・ヘップバーン、ケーリー・グラント主演のサスペンス・ミステリー。グラント主演という事もあるが、ヒッチコックを思わせる謎また謎、殺人また殺人という展開がスリリングでなかなか面白い。マンシーニの音楽と共に、シャレたムードを楽しむ作品。 *「大脱走」(63)。ジョン・スタージェス監督による、ナチス捕虜収容所からの脱走作戦をダイナミックに描いた話題作。スティーヴ・マックィーンが魅力的。スポーツを楽しむように観るのが正しい観方。ミッチ・ミラー合唱団によるテーマ曲も大ヒットした。 *「ブーベの恋人」(63)。ルイジ・コメンチーニ監督による、戦争に引き裂かれる恋人たちを描いた悲しいラブストーリー。ジョージ・チャキリス、クラウディア・カルディナーレ主演。カルロ・ルスティケリの音楽がいつもながら効果的。 |
65 |
「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」 ('64) 英/監督:リチャード・レスター ビートルズは、私にとっての青春である。ワイルドさと甘さがほどよくブレンドされた名曲の数々、お洒落なファッション。レコードが出る度にシングル盤を買い集めた。今でも私の宝物として大事に保存してある。 |
*「おかしな、おかしな、おかしな世界」(63)。社会派の秀作を多く作って来たスタンリー・クレイマー監督が作った、珍しいドタバタ・コメディ。サイレント時代のスラップスティック喜劇を現代に復活させようとした試みは買うが、あまり成功しているとは言い難い。またこれは、それまで3台の映写機で上映していた“シネラマ”を1台の映写機で上映する方式とした最初の作品としても記憶に残る。 *「大列車作戦」(64)。ジョン・フランケンハイマー監督の骨太戦争アクション。ナチスがフランスの名画を持ち出そうとするのをレジスタンスがあの手この手で食い止める作戦が面白い。バート・ランカスター主演。見応えあり。 *「007/ゴールドフィンガー」(64)。シリーズ第3作。ガイ・ハミルトン監督。さまざまな仕掛けをほどこしたボンドカー、アストン・マーチンが楽しいが、出来としては前2作より落ちる。しかし興行的には大ヒットした。 *「マーニー」(64)。ヒッチコックが前作に引き続きティッピ・ヘドレンを主演にした心理サスペンス。しかしいつもの切れ味はどこへやら、も一つ要領を得ない出来になっていた。以後ヒッチコックはしばらくの間低迷を続ける事となる。ショーン・コネリー共演。 *「柔らかい肌」(64)。フランソワ・トリュフォ監督の、中年男の不倫とその果ての悲劇を描いた作品。それぞれの心理描写がきめ細かく見応えあり。ラストはコワいです。 |
66 |
「シェルブールの雨傘」 ('64) 仏/監督:ジャック・ドゥミ 珍しい、フランス製ミュージカル。…と言っても、全編セリフがすべて歌になっている、どちにかと言えばフィルム・オペラとでも呼びたい作品である。冒頭、真上から俯瞰で撮った地上を色とりどりの傘が行き交うシーンが印象的。お話はパニョルの「ファニー」とよく似た内容。恋人ギイ(ニーノ・カステルヌォーヴォ)が徴兵され、戦地に行くこととなって、残されたジュヌヴィエーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)はひたすらギイの帰りを待ちわびるが、やがて歳月が過ぎ、二人は別々の相手と結婚する。悲しいのはラストシーン。雪のクリスマスイヴ、ガソリンスタンドで二人は偶然再会する。互いに、今も愛しているはずなのに、時間はもう元に戻らない。静かに見つめ合い、短く言葉を交わした後、二人は別れ去る…。 |
双葉さんのベスト100: (83)「シェルブールの雨傘」 (左参照) *「メリー・ポピンズ」(64)。ジュリー・アンドリュース主演のディズニー・ミュージカル。ロバート・スティーブンスン監督。アニメと実写の合成画面が楽しい。「チムチム・チェリー」等名曲が多い。好きですね。 *「マイ・フェア・レディ」(64)。ブロードウェイではJ・アンドリュースが演じた名作ミュージカルを、ヘップバーン主演で映画化。「踊り明かそう」他名曲揃い。ジョージ・キューカー監督。楽しめる出来。 *「反撥」(64)。ロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演のもの凄くコワい異常心理サスペンス。鳥肌が立ちました。「リング」よりコワいですよ。 *「奇跡の丘」(64)。ピエール・パオロ・パゾリーニ監督の新約聖書に基づくキリスト伝記映画。モノクロでドキュメンタリー・タッチの荒々しい映像が魅力的。 |
67 |
「サウンド・オブ・ミュージック」 ('65) 米/監督:ロバート・ワイズ オスカー・ハマースタインU世とリチャード・ロジャースのコンビによるブロードウェイ・ミュージカルの映画化。しかし「ウエスト・サイド物語」で屋外風景をダイナミックに取り入れたロバート・ワイズ監督は、ここでも冒頭の「ウエスト・サイド−」を思わせるアルプスの大俯瞰撮影に始まり、美しい風景を巧みに取り入れて見事なミュージカル映画の傑作に仕上げている。これは初公開にやや遅れて観たが、70ミリ大画面の迫力、ジュリー・アンドリュースの美しい歌声、ロジャース/ハマースタイン・コンビの「ドレミの歌」「エーデルワイス」「もうすぐ17歳」「私のお気に入り」「ひとりぼっちの羊飼い」等の名曲の数々―に圧倒され、ただただうっとりするばかりであった。同じアンドリュース主演の「メリー・ポピンズ」はこの時まだ観ておらず、これがアンドリュース初見参であったが、3オクターブもあると言われる声質、爽やかで時にユーモラスな演技、どれにも感動した。これはまさにアンドリュースの為の映画である。アンドリュース以外の誰が演じても、これほどの名作になるとは思えない。ワイズの演出も前作に負けずとも劣らない素晴らしい出来。 |
双葉さんのベスト100: (84)「戦争は終わった」 ('65 監督:アラン・レネ) (85)「素晴らしき戦争」 ('69 監督:リチャード・ アッテンボロー) 小林さんのベスト100: (83)「ドクトル・ジバゴ」 ('65 監督:デヴィッド・リーン)
*「荒野の用心棒」(64)。セルジョ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の黒澤明「用心棒」を巧妙にパクったマカロニ・ウェスタンの最初の大ヒット作。何度観ても面白い。よく出来ています。エンニオ・モリコーネ作曲のテーマ曲も素敵。 *「ドクトル・ジバゴ」(65)。デヴィッド・リーン監督の壮大な叙事詩。見応えがあります。ベストに入れたかったが惜しくも洩れた。 |
68 |
「テキサスの五人の仲間」 ('66) 米/監督:フィルダー・クック この作品、多分多くの人は題名すら知らないと思う。ひっそりと公開され、話題になる事もなく忘れ去られた不遇の作品である。しかしたまたまリアルタイムでこれを見て、私は“こりゃー面白い!”と思わず快哉を叫んだのである。拾い物―と言ったら語弊があるかも知れないが、とにかく映画ファン…特に知的ゲームや謎解きものが好きな方は、機会があれば是非見逃さないでいただきたい。きっと私同様ギャフン…となる事請け合いである。 |
双葉さんのベスト100: (86)「アルジェの戦い」 ('66 監督:ジロ・ポンテコルボ) (87)「バージニア・ウルフなんか こわくない」 ('66 監督:マイク・ニコルズ) (88)「ロシュフォールの恋人たち」 ('66 監督:ジャック・ドゥミ) *「幸福」(65)。アニエス・ヴァルダ監督の繊細な演出が冴える、幸福とは何かを問う秀作。印象画のような映像が魅力的。 *「素晴らしきヒコーキ野郎」(65)。ケン・アナキン監督のロンドン―パリ間の飛行機レースを描いたコメディ。おおらかでトボけた味わいの楽しい作品。こういうのも好きです。 *「グレート・レース」(65)。こちらもニューヨーク―パリ間の自動車レースを描いたドタバタ・コメディ。ブレーク・エドワーズ監督。こちらはよりスラップスティック度が強い。ライバルの教授を演じたジャック・レモンが楽しい。助手はピーター・フォーク。 *「戦争と平和・2部作」(65)。ソ連が国家の威信を賭けて作ったとてつもない超大作。セルゲイ・ボンダルチュク監督・主演。ナターシャを演じたリュドミラ・サヴェーリェワが可憐で美しい。泰西名画のような画面が印象的。 *「悲しみは星影と共に」(65)。ネロ・リージ監督。ナチスによって強制収用所に送られる姉弟の悲劇を格調高く描いた佳作。哀愁味を帯びたテーマ曲が印象的。 *「アルジェの戦い」(66)。ジロ・ポンテコルボ監督。アルジェリアの独立戦争をドキュメンタリー的タッチで描いた傑作。まるでニュース映画のような、ザラザラしたハイキーの画面が強烈な印象を残す。'67年度キネ旬ベストワン。最後までベストに入れるべきかで迷った。必見。 |
69 |
「冒険者たち」 ('67) 仏/監督:ロベール・アンリコ
(付記)日本の映画作家や俳優たちからも愛されているのもこの作品の特徴で、「無宿(やどなし)」(74・斉藤耕一監督)を手始めに、そのものスバリ「冒険者たち」(75・臼井高瀬監督)、「黄金のパートナー」(79・西村潔監督)、「冒険者カミカゼ」(81・鷹森立一監督)など、いずれもロベール・アンリコ監督作品へのオマージュに満ちた爽やかな仕上がりとなっている。…にしても、なんで日本ばっかり?(笑) |
双葉さんのベスト100: (89)「冒険者たち」 (左参照)
*「ロシュフォールの恋人たち」 (66)。ジャック・ドゥミ監督のミュージカル第2弾。こちらはぐっと楽しくて華麗な仕上がり。なんとジョージ・チャキリス、ジーン・ケリーがゲスト出演。この顔合わせを観るだけでも一見の価値あり。これもベストに入れたいな…。 *「ワイルド・エンジェル」(66)。ロジャー・コーマン監督の暴走族もの。出来はどうってことないが、ピーター・フォンダ主演がミソ。つまり後の「イージー・ライダー」の原点とも言える作品で、その点のみで記憶される作品。ニューシネマに興味のある方は観ておいて損はない。 *「ミクロの決死圏」(66)。人間をミクロ化して体内に送り込むというアイデアをうまく生かしたSF映画史上に残る作品。リチャード・フライシャー監督。ただしこのアイデアは手塚治虫の「鉄腕アトム」の方が早い。 |
70 |
「俺たちに明日はない」 ('67) 米/監督:アーサー・ペン この頃から、アメリカでニュー・シネマと呼ばれる新しいタイプの映画作りが盛んになり、これはその嚆矢とも言うべき最初の傑作である。大恐慌の'30年代、ケチな自動車泥棒のクライド(ウォーレン・ビーティ)とウェイトレスのボニー(フェイ・ダナウェイ)が意気投合し、仲間と共に銀行強盗を繰り返すが、やがて仲間の父親の密告で警官隊の待ち伏せに合い、蜂の巣のように銃弾を受けて最期を遂げる。 |
小林さんのベスト100: (84)「俺たちに明日はない」 (左参照) *「華氏451」(66)。レイ・ブラッドベリ原作のSFをフランソワ・トリュフォが映画化。遥かな未来、情報発信はテレビのみ、本を読む事が禁じられているという世界を寓話的に描く。しかし今の現実はこの世界に近いんじゃないかと思え、ちょっとゾッとする。不思議な味わいの佳作。 *「砲艦サンパブロ」(66)。ロバート・ワイズ監督。第1次大戦後の中国に派遣された砲艦をとりまく人間群像。スティーヴ・マックィーンが人間味ある機関兵を好演。なかなか風格のあるいい作品です。 *「夕陽のガンマン」(66)。賞金稼ぎのガンマンを主人公としたマカロニ・ウェスタン。レオーネ+イーストウッド・コンビの第2弾になる。アメリカ西部劇ではパッとしなかったリー・ヴァン・クリーフが見違えるような渋い存在感を示す。彼を見るだけでも値打ちあり。コンビ第3作「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」(67)は南北戦争を背景に金に取りつかれた男たちの争いをスケール感たっぷりに描く。これはかなり好きです。 *「続・荒野の用心棒」(66)。フランコ・ネロ主演のマカロニ・ウェスタン。セルジョ・コルブッチ監督の荒っぽい演出が却って魅力的。ベルト・フィアの歌う主題歌が大好きです。♪ジャンゴ〜♪ |
71 |
「2001年宇宙の旅」 ('68) 米/監督:スタンリー・キューブリック これも最初の封切時、シネラマ劇場の大スクリーンで観た。 |
小林さんのベスト100: (85)「遥かなる戦場」 ('68 監督:トニー・リチャードソン)
*「夜の大捜査線」(67)。ノーマン・ジュイソン監督の犯罪捜査もの。シドニー・ポワチエの敏腕刑事と田舎の署長ロッド・スタイガーの対立から和解までのプロセスを丁寧に描いた演出が見事な傑作。アカデミー作品賞他多数受賞。 *「卒業」(67)。マイク・ニコルズ監督。アメリカン・ニューシネマの1本に数えられる名作。ダスティン・ホフマンがいい。アン・バンクロフト、キャサリン・ロス共演。サイモンとガーファンクルのヒット曲が絶妙に散りばめられている。既成の音楽をフィーチャーする手法はこの作品あたりから広まった。 *「まぼろしの市街戦」(67)。フィリップ・ド・ブロカ監督によるちょっと不思議な味わいの佳作。ドイツ軍が来るというので村人がみんな逃げ、精神病院の患者だけが取り残された村に、ドイツとイギリスの軍隊がやって来てドンパチを始める。本当に狂っているのはどちらなのか…という、実に皮肉の効いた喜劇。拾い物の秀作です。おススメ。 *「アポロンの地獄」(67)。ピエール・P・パゾリーニ監督による、オイデプス王の悲劇を独特の激しいタッチで描いた秀作。封切りで観た時の強烈な印象が今も忘れられない。もう少しでベスト入り。キネ旬ベストワン。 |
72 |
「ロミオとジュリエット」 ('68) 伊/監督:フランコ・ゼフィレッリ
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*「暴力脱獄」(67)。スチュアート・ローゼンバーグ監督。ポール・ニューマンが残忍な看守に徹底的に反抗する主人公クール・ハンド・ルーク(原題)を演じた、捨て難い味の佳作。好きな作品です。 *「暗くなるまで待って」(67)。オードリー・ヘップバーンが盲目のヒロインに扮し、一人ぼっちでいる自宅で悪人に襲われるというサスペンス・スリラーの佳作。テレンス・ヤング監督。ラストの数分間はもの凄い緊迫感でハラハラドキドキ。当時の夫メル・ファーラーがプロデュース。原作は「ダイヤルMを廻せ!」と同じフレデリック・ノット。 *「猿の惑星」(68)。遥か遠い星にたどりついた宇宙飛行士たちが見たのは、猿が人間を支配する惑星だった。ラストシーンがあまりにも有名なSF映画の古典的秀作。フランクリン・J・シャフナー監督。あのラストを観た時には思わず声を上げてしまった。シリーズ化され5作まで作られたが、1作目に遠く及ばない。 |
73 |
「ビートルズ/イエロー・サブマリン」 ('68) 英/監督:ジョージ・ダニング ビートルズのキャラクターを主人公にした、幻想的かつシュールなアニメーションの傑作。 これほどの大傑作なのに、公開当時の扱われ方はなんとも不当極まるものであった。アニメそのものの地位が低かった時代とはいえ、ほとんどパブリシティもなく、年末近くに、なんとアクション映画(「黄金線上の男」なるB級映画)の同時上映(と言うよりおマケ扱い)で、しかも新聞広告では、隅の方に小さく「同時上映/イエロー・サブマリン」と文字だけの表記。写真も監督名もなく、いわば本編の前に付く短編マンガのような扱いであった。ために、気が付かずに見逃した人も多かったのではないか。何を考えてる、配給会社!(ユナイト。後に倒産(笑))。せめてもの救いは、キネ旬ベストテンでこの作品が11位(惜しい!)になった事。それも野口久光氏1位、双葉十三郎氏4位、淀川長治氏5位…と重鎮の方々の評価が高かったので、少しは気分が良くなったのであった。 |
*「マンハッタン無宿」(68)。ドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドが始めて組んだ記念すべき作品。ニューヨークに犯人受け取りにやって来たアリゾナの保安官のカルチャー・ギャップが面白い。好きな作品。
*「泳ぐひと」(68)。プールを泳ぎ渡りながら家に帰ろうとする男(バート・ランカスター)の奇妙な行動を通して、アメリカ中流家庭の精神の荒廃を鋭く風刺した、アメリカン・ニューシネマの佳作。フランク・ペリー監督。ラストには胸打たれる。あまり知られていないが忘れられない秀作です。 *「ローズマリーの赤ちゃん」(68)。ロマン・ポランスキー監督によるオカルト風恐怖映画。妊娠した主婦(ミア・ファーロー)が、精神的不安から周囲をみんな疑い出す。しまいには夫までも…。そして衝撃の結末。よく出来たホラー映画の秀作。 *「若草の萌えるころ」(68)。ロベール・アンリコ監督が「冒険者たち」のジョアンナ・シムカスを主演に据えて、最愛の伯母の危篤から心が不安定になり、街中をさまよい、やがて大人になって行く少女の姿を情感豊かに描いた秀作。アンリコ作品はみんな好きですね。 *「夜霧の恋人たち」(68)。フランソワ・トリュフォー監督による、「大人は判ってくれない」の主人公アントワーヌ(同じジャン・ピエール・レオ)の青年時代を瑞々しいタッチで描いた佳作。トリュフォーは以後もレオ主演でアントワーヌ・シリーズを数本撮り続けて行くこととなる。全シリーズをオールナイト連続上映したら面白いでしょうね。 |
74 |
「ワイルドバンチ」 ('69) 米/監督:サム・ペキンパー
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小林さんのベスト100: (86)「ワイルドバンチ」 (左参照) (87)「シシリアン」 ('69 監督:アンリ・ヴェルヌイユ)
*「スィート・チャリティ」(68)。フェリーニ監督の「カビリアの夜」をミュージカル化し、ブロードウェイで大ヒットした作品の映画化。脚本がニール・サイモンで監督・振付がボブ・フォッシー、チャリティを演じたのがシャーリー・マクレーンと、今から考えるととびっきり豪華なメンバーである。心やさしいチャリティが、いつも騙されながらもけなげに生きて行く姿を描く。愛すべき佳作。70ミリで上映された。 *「おかしな二人」(68)。これもニール・サイモン脚本のブロードウェイ・ヒット作。監督ジーン・サックス。ジャック・レモンとウォルター・マッソー共演。ズボラで不潔なマッソーと清潔好きのレモンというコンビがたまらなくおかしい。楽しい作品。レモンとマッソーは以後も数本のコンビ作を生み出すが、やはりこの作品がベスト。 |
75 |
「真夜中のカーボーイ」 ('69) 米/監督:ジョン・シュレジンジャー イギリスのジョン・シュレジンジャー監督がアメリカに渡って撮った、当時のアメリカが抱える諸問題について辛辣な皮肉を込めて描いた問題作。 |
*「if もしも・・・」(69)。全寮制の中等学校を舞台に、学校の厳しい管理に反撥した生徒たちが、ラストで校舎に立て籠もり、銃を乱射して大人たちを射殺する。現実と幻想が入り乱れた奇妙な味のイギリス作品。監督リンゼイ・アンダーソン。マルコム・マクダウェルが怒れる若者たちの系譜を引きずる若者を好演。カンヌ映画祭グランプリ受賞。当時は非現実的な話と思われたが、今や現実となっている。コワい。
*「素晴らしき戦争」(69)。俳優リチャード・アッテンボローの初監督作品。反戦をテーマにしたブラックな味わいのミュージカル。ローレンス・オリヴィエ他イギリスの名優が大挙出演。ラストに並ぶ無数の十字架が印象的。昔観た時は面白いと感じたが、今観たらどうだろうか。 |
76 |
「イージー・ライダー」 ('69) 米/監督:デニス・ホッパー
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*「ひとりぼっちの青春」(69)。'30年代の不況下のアメリカで、生活費を稼ぐ為にマラソン・ダンスに賭ける人間たちの闘いと失意を重厚に描いた秀作。シドニー・ポラック監督。ジェーン・フォンダがいい。プロモーター役を巧演したギグ・ヤングがアカデミー助演男優賞を受賞。原作はホレス・マッコイの「彼等は廃馬を撃つ」。 |
77 |
「明日に向って撃て!」 ('69) 米/監督:ジョージ・ロイ・ヒル
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*「砂漠の流れ者」(69)。サム・ペキンパー監督による、「ワイルドバンチ」とはうって変わって、派手なアクションも流血場面もない、しみじみと頃に沁みる西部劇の秀作。仲間に裏切られ、砂漠の真ん中に置き去りにされた主人公ケーブル・ホーグ(ジェイスン・ロバーズ)が、必死の思いで砂漠を彷徨ううち、水を掘り当て、そこを休息所にして仲間がやって来るのを待つ。気のいい説教師や娼婦のヒルディ(ステラ・スティーヴンス)とも仲良くなる。そして遂に復讐の相手がやって来た…。 既成の西部劇とは違って、ケーブルは相手を殺そうとはしない。そこに突然自動車がやって来るという展開も不思議な味わい。その自動車に轢かれて死ぬ西部劇の主人公…というのも皮肉。取り残された男はまた、西部にやって来た新しい時代にも取り残されて行く…という結末が哀しい。ペキンパーは単なるバイオレンスだけの作家でない事がよく分かる。初公開当時はいきなり2本立でB級扱いされた不幸な作品だが、後年評価が高まった。再公開時には原題通り「ケーブル・ホーグのバラード」と改題された。 |
78 |
「いちご白書」 ('70) 米/監督:スチュアート・ハグマン '68年に米コロンビア大学で実際に起きた学園紛争を、当時大学生として体験したジェームズ・サイモン・クーネンの原作を元に、いずれも20歳台のイスラエル・ホロヴィッツが脚色し、スチュアート・ハグマンが監督した、まさに若者たちによる若者たちのリアルな青春映画。 (付記)凄いと思ったのは、映画公開の2年前に起きた記憶に生々しい紛争を、大学名も主役(サイモン)も実名で、明らかに大学や警察を悪役に設定し(ガスマスクを被った警官隊は、まるで無抵抗の市民に襲いかかるゾンビかエイリアンのように見える)、学生たちを可哀相な被害者として描いている点で(見守る市民がキャンドル・デモをするシーンがある)、しかもそれがメジャー配給(MGM)で堂々ロードショー公開されたというのも凄い。こういう所がさすがアメリカならではである。ちなみにプロデューサーは前年に秀作「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック監督)を製作し、後に「ロッキー」という大ヒット・シリーズを産み出すに至るアーウィン・ウインクラーとロバート・チャートフのコンビ。 |
*「ビートルズ レット・イット・ビー」(70)。ビートルズのメンバーが、アルバム「レット・イット・ビー」を完成させるまでのセッションの様子を記録したドキュメンタリー。監督マイケル・リンゼイ・ホッグ。ジョンはオノ・ヨーコといつも一緒にいたり、それぞれに自分の曲作りに没頭していたり…と、ファンなら見逃せない彼らの素顔を垣間見る事が出来る。アルバム発表後、ビートルズは解散する。以後4人がコラボレーションする機会はないまま、ジョンもジョージも、今はこの世にいない。…わが青春と共にあったビートルズのありし日の姿を見るだけで涙が出て来る。 *「ウッドストック」(70)。'69年、ニューヨーク郊外ウッドストックで催された、40万人もの観客を集めた大ロック・コンサートの模様を多数のカメラで捕えた音楽ドキュメンタリーの傑作。28歳の若手監督マイケル・ウォドレーは、マルチ分割画面を多用し、単なるコンサート記録映画を超えて当時の時代状況を鋭く切り取った革新的な作品を作り出した。ジョーン・バエズ、ジミ・ヘンドリックス、アーロ・ガスリー、ジョー・コッカー、サンタナなど、当時の人気アーチストが一同に会しており、音楽ファンは必見の作品である。 もう1本、音楽ドキュメンタリーの秀作を。*「エルビス オン ステージ」(70)。ラスベガスのホテルで行われたエルビス・プレスリーのライブ・コンサートの模様を70ミリの大迫力画面で克明に捉えている。楽屋裏の様子などもあり、エルビスの素顔も垣間見える。プレスリー・ファンは絶対見逃せないが、ファンでなくても楽しめる。デニス・サンダース監督。 *「ひまわり」(70)。ヴィットリオ・デ・シーカ監督。第2次大戦終戦後、戦争に行ったまま帰ってこない夫(マルチェロ・マストロヤンニ)を探して、妻(ソフィア・ローレン)はソ連、ウクライナまではるばる出かけて行く。やっと見つけた夫は…。戦争の深い傷あとを格調高く描いたデ・シーカ監督の佳作。一面に咲き誇るひまわり畑の映像が素晴らしい。ヘンリー・マンシーニのテーマ曲もヒットした。 |
79 |
「小さな恋のメロディ」 ('71) 英/監督:ワリス・フセイン ちょっと重たい映画が続いた後で、お口直しにぐっと軽くで爽やかな作品を…(笑)。幼い少年少女たちの初恋物語を、ビージーズ他の音楽に乗せて軽やかに描いた、メルヘンチックなイギリス作品。 まるでママ事のような二人の結婚式。駆けつけた大人たちを友人たちが追っ払い、二人はトロッコに乗ってどこまでも走り続ける。…一歩間違うとチャチな凡作となりかねないお話だが、映画は見事な着地を見せる。子供たちはまるで天使のように純粋無垢で、くったくなく行動しているだけであり、彼らを引き離そうとする大人こそ不純である―という視点が貫かれている。ビー・ジーズやクロスビー・ステイルス・ナッシュ&ヤング等の歌が流れる場面では、そうした子供たちのナイーブで純真な生活行動ぶりや心の触れ合いがスケッチ風に描かれ、とても爽やかで甘酸っぱい気分にさせてくれる。ワリス・フセイン監督の繊細な演出感覚が光る、とても素敵な青春映画の傑作である。脚本はアラン・パーカー。後にやはり、大人のパロディとしての子供映画「ダウンタウン物語」の脚本・監督を担当した人である。心が疲れた時には、この映画を観るといい。きっと心が癒されるはずである。 (日本公開'71年) |
*「屋根の上のバイオリン弾き」(70)。ブロードウェイでロングランとなったミュージカルの映画化。貧しいユダヤ人一家の、精一杯生きる姿、喜び、哀しみを数々のミュージカル・ナンバーに乗せてリズミカルに描く。家族を愛する主人公をユーモアと哀愁味を体から滲ませ演じたトポルがとてもいい。ノーマン・ジュイソン監督。冒頭のアイザック・スターン演奏するバイオリンの音色から既に映画に惹き込まれる。もう少しでベスト入りの好きな作品です。
*「ライアンの娘」(70)。アイルランドの寒村を舞台に、若き人妻の不倫の恋とその波紋を堂々たる風格で描いたデヴィッド・リーン監督渾身の力作。70ミリの大画面に映し出される、荒波が打ち寄せる断崖の映像が素晴らしい。撮影は名手フレディ・ヤング。脚本ロバート・ボルト、音楽モーリス・ジャールとも、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」と同じスタッフ。見応えがあります。 *「ソルジャー・ブルー」(70)。実際に起きたインディアン虐殺事件を正面から捉えた問題作。ラルフ・ネルソン監督。ラストはかなり残酷で当時としては衝撃的。今観るとそれほどでもないかも知れない。 |
80 |
「おもいでの夏」 ('71) 米/監督:ロバート・マリガン
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双葉さんのベスト100: (90)「ベニスに死す」 ('71 監督:ルキノ・ヴィスコンティ) (91)「ジョニーは戦場へ行った」 ('71 監督:ドルトン・トランボ) 小林さんのベスト100:
*「恐怖のメロディ」(71)。クリント・イーストウッド初監督作品。地方局のDJ(イーストウッド)が、遊びで付き合った女にとことんつきまとわれ、身の危険にさらされる。「危険な情事」の原型。すごくコワいですよ。師匠のドン・シーゲルが役者で参加。 |