PART 3 (No.41〜60) |
No | ベ ス ト 作 品 | ご 参 考 |
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「エデンの東」 ('55) 米/監督:エリア・カザン
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双葉さんのベスト100:
(69)「エデンの東」 (左参照) (70)「悪魔のような女」 ('55 監督:アンリ・ ジョルジュ・クルーゾー) 小林さんのベスト100: (63)「狩人の夜」 ('55 監督:チャールズ・ロートン)
*「悪魔のような女」(55)。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のサスペンス・スリラー。最後のドンデン返し演出はさすがクルーゾー。見応えはあります。原作は「めまい」のボワロー+ナルスジャックのコンビ。 *「ピクニック」(55)。ジョシュア・ローガン監督による舞台劇の自身による映画化作品。フラリと町にやって来たウイリアム・ホールデンと彼を取り巻く人間群像劇。カラーが美しい。丁寧な演出は好感が持てる。 *「大地のうた」(55)。サタジット・ライ監督のインド映画の秀作。貧しい家族の生活と苦難を描いて感動的。もう少しでベスト入り。わが国ではずっと遅れて'66年、ATGにて公開。 |
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「必死の逃亡者」 ('55) 米/監督:ウィリアム・ワイラー
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小林さんのベスト100: (64)「必死の逃亡者」 (左参照) (65)「野郎どもと女たち」 ('55 監督:ジョセフ・L・ マンキウィッツ) *「泥棒成金」(55)。ヒッチコック監督の、ややのんびりしたタッチの泥棒コメディ・サスペンス。グレース・ケリーが美しい。 *「旅情」(55)。デヴィッド・リーン監督による、オールドミスの旅先での恋を描く。キャサリン・ヘップバーン、ロッサノ・ブラッツィ共演。ベニスの風景が美しい。好きな作品ですね。 |
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「赤い風船」 ('56) 仏/監督:アルベール・ラモリス
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双葉さんのベスト100:
(71)「赤い風船」 (左参照) (72)「第7の封印」 ('56 監督:イングマール・ ベルイマン)
小林さんのベスト100: *「夜と霧」(55)。アラン・レネ監督の、ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺を糾弾したドキュメンタリー。わが国では'61年公開。リアルタイムで観て身の毛がよだった。カラーで撮った現代の風景と対比させた演出が鮮烈。秀作である。 |
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「鉄道員」 ('56) 伊/監督:ピエトロ・ジェルミ
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小林さんのベスト100: (68)「現金に体を張れ」 ('56 監督:スタンリー・ キューブリック) (69)「女はそれを我慢できない」 ('56 監督:フランク・タシュリン) *「ヘッドライト」(56)。アンリ・ベルヌイユ監督としては一番良く出来た佳作。初老の運転手(ジャン・ギャバン)と食堂の若い娘(フランソワーズ・アルヌール)の恋と破局を描く。物悲しいドラマである。ジョセフ・コスマ作曲のテーマ曲がヒットした。 *「沈黙の世界」(56)。潜水のプロであるジャック=イブ・クーストーが監督した水中記録映画の佳作。数々の水中の生き物の生態が荘厳で息を呑む美しさ。子供の頃観たがとても感動した。ルイ・マルが共同監督。カンヌ映画祭グランプリ受賞。 *「捜索者」(56)。ジョン・フォード監督の異色西部劇。ジョン・ウェインがインディアンを憎む執念の男を演じる。ラストに空しさと悲しみが漂う秀作である。ナタリー・ウッド共演。 |
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「昼下りの情事」 ('57) 米/監督:ビリー・ワイルダー 「麗しのサブリナ」に続くヘップバーン+ビリー・ワイルダーコンビの作品。今回ヘップバーンは少女から脱皮(?)して、プレイボーイの中年オジサマをメロメロにする小悪魔的役柄を演じている。題名といいストーリーといい、ちょっと間違えればいやらしい作品になるところだが、ワイルダーの上品で洒落た演出がそれを救っている。 |
*「黒い牡牛」(56)。高校生の時リアルタイムで観て(公開は'63年)、感動した記憶がある。闘牛場に送られた牡牛を助けたい少年の思いが奇跡を呼ぶ、心温まる感動作。アービング・ラパー監督。原作は赤狩りで追われたドルトン・トランボが変名で書いて、なんとアカデミー原作賞を受賞してしまった。 *「現金に体を張れ」(56)。スタンリー・キューブリック監督による、競馬場売上金強奪計画を描いた犯罪映画の佳作。時間軸を微妙にズラした演出が面白い。もう一歩で計画成功…という所ですべてが水泡に帰すラストが印象的。 *「ジャイアンツ」(56)。ジェームズ・ディーンの遺作。テキサスの雄大な自然を舞台に、ある一家の30年に渡る人生を描いた大河ドラマ。ジョージ・スティーヴンス監督。少々長すぎてちょっと退屈です。 *「知りすぎていた男」(56)。ヒッチコック監督。自らの「暗殺者の家」のリメイク。脂の乗り切った時期の作品だけに、旧作よりもずっと面白い。ジェームズ・スチュアート、ドリス・デイ共演。主題歌「ケ・セラ・セラ」が効果的に使われている。好きな作品で、本当はベストに入れたかったのですが…。 |
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「情 婦」 ('57) 米/監督:ビリー・ワイルダー
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双葉さんのベスト100:
(73)「情婦」 (左参照) (74)「野いちご」 ('57 監督:イングマール・ ベルイマン) 小林さんのベスト100:
*「禁断の惑星」(56)。カラー・シネスコで描かれたSF映画の古典的名作。と言うより、ロボット・ロビーというキャラクターを生んだ事でも記憶される作品。異色なのは、イドの怪物と呼ばれる謎の生命体の正体。この当時としては先駆的なアイデアである。SF映画ファンは必見。監督:フレッド・M・ウィルコックス。 この年のもう1本の傑作SF映画を紹介。「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(56)。ジャック・フィニィ原作の「盗まれた街」の映画化。監督が珍しくもアクション派のドン・シーゲル。脚本リライトと脇役出演がサム・ペキンパー!という豪華な取り合わせ。SFXがほとんど使われておらず、どちらかと言うと心理的サスペンスに近い。低予算ながらジワジワ恐怖が迫る侵略SF映画の古典的名作。ただビデオのみで劇場では未公開。 |
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「死刑台のエレベーター」 ('57) 仏/監督:ルイ・マル
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双葉さんのベスト100:
(75)「魔術師」 ('57 監督:イングマール・ ベルイマン) *「野いちご」(57)。イングマール・ベルイマン監督の代表作。功なり名を遂げた大学教授の、死を迎える直前の夢と回想と現実の交錯の中で、人生とは、生とは何かを描く。傑作との評価が高いが、昔観たきりでやや記憶があいまい。冒頭の夢のシーンは印象的だったが後半は覚えていない。トシを食った今観たら、多分感動するのではないかと思うのだが…。 *「十戒」(57)。セシル・B・デミル監督のスペクタクル聖書絵巻。紅海が真っ二つに割れる特撮が見物。多分リアルタイムで観ているはず。当時観た時は面白かったと記憶しているが、今観るとどうでしょうかね。 |
48 |
「十二人の怒れる男」 ('57) 米/監督:シドニー・ルメット
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*「灰とダイヤモンド」(57)。アンジェイ・ワイダ監督。ズビグニエフ・チブルスキー扮する反政府組織の若者が愛とテロリズムの狭間で悩み、無残に死んで行くまでを追ったポーランド映画の問題作。…には違いないが、話が込み入ってて昔観た時はよく分からなかった。ただ、主人公がゴミ捨て場のような所で悶え死ぬラストシーンだけは鮮烈に覚えている。名作との声は高いし、もう一度じっくり観ればベストに入るかも知れない。
*「ニューヨークの王様」(57)。「ライムライト」撮影後、アメリカを追われたチャップリンが5年ぶりに撮った風刺喜劇。ニューヨークに亡命した小国の王様の目を通して、現代アメリカを痛烈に皮肉っている。さすがはチャップリン。フランソワ・トリュフォーはこの映画を絶賛している。チャップリン最後の主演作でもある。
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49 |
「戦場にかける橋」 ('57) 英/監督:デヴィッド・リーン
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*「眼には眼を」(57)。アンドレ・カイヤット監督の力作。クルト・ユルゲンス扮する医者が、診察を断った女が死んだ為に、その夫のシリア人(フォルコ・ルリ)に逆恨みされ、砂漠の果てまで追い詰められる。大俯瞰で捕えられたどこまでも続く砂漠の光景が印象的。一種の不条理劇なのだが、現代にも続く白人とイスラム民族との不毛の対立も背景にあるのではないかと思ってしまう。緊迫感溢れる佳作である。ちなみにシリア人を演じたフォルコ・ルリは、クルーゾー監督の「恐怖の報酬」でルイジ役を演じていた人でもあります。 |
50 |
「めまい」 ('58) 米/監督:アルフレッド・ヒッチコック ピエール・ボワローとトーマス・ナルスジャックのミステリー小説の映画化。あるアクシデントで高所恐怖症になった元刑事のスコッティ(ジェームズ・スチュアート)は、旧友に頼まれ、その妻マデリーン(キム・ノヴァク)を尾行するうち、いつしか彼女を恋するようになるが、マデリーンは突然修道院の塔から墜落死してしまう。失意のスコッティはある日、マデリーンと瓜二つの女性ジュディを見つけ、彼女にマデリーンの面影を重ねようとするが・・・・。 |
小林さんのベスト100: (72)「くたばれ!ヤンキース」 ('58 監督:ジョージ・アボット /スタンリー・ドーネン) (73)「めまい」 (左参照) *「リオ・ブラボー」(58)。ハワード・ホークス監督の痛快西部劇の佳作。町の保安官ジョン・ウェインが、アル中のディーン・マーチン、足の悪い老人(ウォルター・ブレナン)、若いリッキー・ネルソンや女賭博師アンジー・ディッキンソンなどの協力を得て悪者一味を退治するまでを描く。アクションとユーモアがほどよくブレンドされて楽しい出来である。ディミトリ・ティオムキンの音楽がいい。トランペットによる「皆殺しの唄」は有名。 *「大いなる西部」(58)。こちらは名匠ウイリアム・ワイラーが手掛けた西部劇。東部からやって来た男ジム(グレゴリー・ペック)が、水源をめぐっての二組の勢力の対立に巻き込まれて行く。チャールトン・ヘストン、パール・アイヴス、チャック・コナーズ、キャロル・ベイカーと出演者がそれぞれ個性的。ラストで、二組の長同士が対決するシーンを大俯瞰で捉え、雄大な西部の風景の中では、人間のつまらない争いほど空しいものはない…とワイラーは訴えているのかも知れない。ジョン・フォードとはまた違った、格調と詩情漂う西部劇の秀作である。
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51 |
「お熱いのがお好き」 ('59) 米/監督:ビリー・ワイルダー
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小林さんのベスト100:
*「ぼくの伯父さん」(58)。ジャック・タチが脚本・監督・主演した喜劇の秀作。タチ扮する伯父さんの、のどかでトボけた行動を通して、あくせく働く現代人の生き方を鋭く風刺している。定職につかず、独身でフラフラしているけれど、いないと寂しい伯父さんの姿は、ちょっとフーテンの寅さんにも似ている気がする。そう言えば、「男はつらいよ」シリーズにも「ぼくの伯父さん」なるサブタイトルの作品があった(笑)。 *「わらの男」(58)。ピエトロ・ジェルミの監督・主演で出演者はルイザ・デラ・ノーチェ(妻)、エドアルド・ネヴォラ(子供)、サーロ・ウルツィ(友人)と、名作「鉄道員」と同じ。姉妹編であるとも言える。ただ主人公が不倫し、相手の娘が死んでしまうという、ちょっとやりきれないストーリーはどうだろうか。小市民の哀歓…というテーマは共通しているのだが。私はやっぱり心温まる作品が好きですね。 *「シンバッド七回目の航海」(58)。レイ・ハリーハウゼンのダイナメーション特撮が見事なアラビアン・ナイト・ファンタジーの秀作。監督ネイザン・ジュラン。好評につきシリーズ化され、この後2本作られた。 |
52 |
「北北西に進路を取れ」 ('59) 米/監督:アルフレッド・ヒッチコック
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*「悪魔の発明」(58)。チェコのアニメ作家、カレル・ゼーマン監督による、ちょっと不思議なタッチのSFドラマ。人物だけが実写で背景や小道具はすべて銅版画調アニメで描かれる。原作はジュール・ベルヌ。いかにも東欧的な、手作りの味わいがある佳作。 *「恋の手ほどき」(58)。ヴィンセント・ミネリ監督による、MGMミュージカル最後?の佳作とでも言うべき作品。アカデミー賞の作品・監督等計10個のオスカーを獲得した。モーリス・シュバリエがいい味を出している。しかし、アステアもジーン・ケリーも出演していないので、やや物足りない出来。 *「南太平洋」(58)。ブロードウェイのヒット・ミュージカルをジョシュア・ローガン監督により映画化。現地ロケした風景が美しい。ミッツィー・ゲイナー、ロッサノ・ブラッツィ主演。アニタ・ホールが歌う「バリ・ハイ」が圧巻。 *「黒い罠」(58)。オーソン・ウェルズ監督・主演の犯罪捜査もの。チャールトン・ヘストン、ジャネット・リー共演。冒頭のワンカット長回し撮影が面白い。ウェルズが悪徳警官に、ヘストンがメキシコの麻薬捜査官に扮している。テレビで観ただけなのでいま一つ面白さは感じなかったが、後にウェルズが編集した完全版が出ているようなので、機会があれば観てみたい。 |
53 |
「大人は判ってくれない」 ('59) 仏/監督:フランソワ・トリュフォー 後述のゴダールなどと並んで、フランス・ヌーベル・ヴァーグの旗手となったフランソワ・トリュフォーの長編第1作であり、私が最も好きなトリュフォー作品である。 どうでもいいが、この頃の外国映画(特にフランス映画)の邦題のつけ方のセンスは本当に素晴らしい。本作の原題は「400回の打擲」という身もフタもないもの。これを「大人は判ってくれない」とした配給会社(東和)の担当者は偉い。次項の「勝手にしやがれ」も同様。それに引き換え、最近の題名と言ったら・・・(溜息)。 |
*「手錠のままの脱獄」(58)。スタンリー・クレイマー監督による、社会派的視点を持った問題作。白人(トニー・カーティス)と黒人(シドニー・ポワチエ)が手錠につながれたまま護送車から脱走し、反発し合いながらも、やがて友情に結ばれて行く。ラスト近く、汽車に飛び乗ったポワチエがカーティスを引き上げようとして、結局二人とも落ちてしまうシーン、手錠がはずれているにもかかわらず、ここでは見えない絆が二人をつないでいるように見える。当時としてはこれでも作るのに勇気がいった作品なのだろう。石井輝男監督の「網走番外地」1作目はこの作品の換骨奪胎作。 *「ベン・ハー」(59)。ウイリアム・ワイラー監督による、70ミリ超大作。戦車競争シーンは語り草となっている見事な出来。内容は説明不要でしょう。アカデミー賞では最多の11部門受賞。重厚な演出で心に響く力作。大画面で何度も観たい作品である。 *「刑事」(59)。ピエトロ・ジェルミ監督・主演による犯罪捜査もの。ジェルミ扮する警部がなかなか似合っている。地道な捜査の果てに犯人を逮捕するまでを描く。クラウディア・カルディナーレが、捕えられた恋人の乗った警察の車を追いかけるラストシーンが印象的。カルロ・ルスティケリ作曲の主題歌、アリダ・ケッリの歌う「死ぬほど愛して」が大ヒットした。 |
54 |
「勝手にしやがれ」 ('59) 仏/監督:ジャン・リュック・ゴダール それまでの既成概念や映画文法を根底からぶち壊した自由奔放な映画作りでセンセーションを巻き起こし、日本の若い映画作家たちや、後のアメリカン・ニューシネマにも多大な影響を与えた、フランス・ヌーヴェル・ヴァーグの代表作であり、ゴダールの初長編監督作品にして彼の最高作。 |
*「渚にて」(59)。スタンリー・クレイマー監督の、これも社会派の問題作。第3次世界大戦が勃発し、放射能によって地球が汚染され、人類滅亡の時期が近付いているというショッキングな物語。SFなのにほとんど特殊撮影を使わず、人類の愚かさを淡々と見据えた演出がかえって効果的。モールス信号の発信先をたどったら、風に揺られるコーラの瓶が発信機を押していた…というシーンが胸を打つ。フレッド・アステアが初めて踊らない性格演技を披露しているのも見どころ。静かな反戦映画の傑作である。
*「二十四時間の情事」(59)。アラン・レネ監督が日本の広島でロケした、原爆と戦争の悲劇を骨太に描いた問題作。原作・脚本はマルグリット・デュラス。日本ロケで広島にやってきた、戦時中ドイツ人を恋人に持ったフランス女優(エマニュエル・リヴァ)と、日本人技師(岡田英次)との出会いから別れまでの1日を描く。互いに戦争で深く心に傷を負った二人の、噛み合わない心のすれ違い。かなり難解だが捨て難い魅力がある。邦題はちょっと問題あり。原題「ヒロシマ、わが愛」の方がずっといい。 |
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「誓いの休暇」 ('59) ソ連/監督:グレゴリー・チュフライ これは、あまり観ている人は少ないかも知れない。ソ連映画そのものが最近は観る機会も減っている為、特にこうした地味な作品はなかなかお目にかかれない。何故これが印象に残っているかと言うと、30年程前、大阪でソ連映画の連続上映会があり、そこで観たいろんなソ連映画の中で、一番ジーンと来て強く心に残ったのがこの作品だったからである。 |
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「太陽がいっぱい」 ('60) 仏/監督:ルネ・クレマン 誰もが知っている傑作である。パトリシア・ハイスミス原作のミステリーの完璧な映画化。貧しいが野心に燃えるトム・リプレー(アラン・ドロン)が、金持ちの道楽息子、フィリップ(モーリス・ロネ)を海上で殺し、身分証明書を偽造し、フィリップのサインも習得してフィリップになりすまし、その財産や、フィリップの女(マリー・ラフォレ)までも手に入れる。幸福の絶頂で、太陽をいっぱいに浴びたトムの完全犯罪はしかし、ほんの些細なミスから脆くも崩れ去る…。 |
双葉さんのベスト100:
小林さんのベスト100:
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57 |
「アパートの鍵貸します」 ('60) 米/監督:ビリー・ワイルダー
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双葉さんのベスト100:
(78)「処女の泉」 ('60 監督:イングマール・ ベルイマン)
*「素晴らしい風船旅行」(60)。「赤い風船」のアルベール・ラモリス監督初の長編劇映画。気球に乗ってのんびりとヨーロッパを旅する…それだけの作品なのだが、大空の上から見下ろした地球の風景がなんとも言えぬほど美しい。観ているだけで爽やかな気分になれる、今で言うヒーリング・ムービーの傑作。 |
58 |
「サイコ」 ('60) 米/監督:アルフレッド・ヒッチコック 実際にあった事件を元に、ロバート・ブロックが書いた小説をヒッチコックが映画化。 |
小林さんのベスト100:
(77)「サイコ」 (左参照) (78)「情事」 ('60 監督:ミケランジェロ・ アントニオーニ)
*「荒野の七人」(60)。黒澤明監督の「七人の侍」を西部劇に翻案したジョン・スタージェス監督作品。主演のリーダー、ユル・ブリナーが島田勘兵衛と同じ坊主頭というのがおかしい。なかなかうまくアレンジしているが、黒澤作品の風格、詩情、ダイナミズムには遠く及ばない。しかし単なる西部劇と見ればこれはこれでメリハリの利いた水準作であると言える。 *「未知空間の恐怖 光る眼」(60)。ジョン・ウィンダムの「呪われた村」の映画化。イギリスのある村で、突然女性たちが同時に妊娠し、生まれた子供たちが急成長し超能力を持っている事が分かる。宇宙からの見えない侵略の恐怖と、それに気がついた学者の戦いを描くSF映画の秀作。子供たちの眼が異様に光っているシーンが怖い。続編が作られたが本邦未公開。ビデオのみ出ている。監督ウルフ・リラ。なお、後にジョン・カーペンター監督によりリメイクされている。 |
59 |
「ナバロンの要塞」 ('61) 米/監督:J・リー・トンプソン アリステア・マクリーンの小説をJ・リー・トンプソン監督が完璧に映画化した戦争冒険活劇映画の傑作。ドイツ軍がギリシャのエーゲ海にあるナバロン島に設置した、巨大な大砲を抱える要塞を撃滅すべく編成された、6人の精鋭からなる特殊部隊が敵地深く潜入し、任務を遂行するまでを描く。特殊部隊のメンバーは、登山家でもある軍人キース・マロリイ大尉(グレゴリー・ペック)をリーダーに、爆破のプロ、ミラー(デヴィッド・ニーブン)、射撃の名手のギリシヤ軍人スタブロ(アンソニー・クイン)、ナイフの名人ブラウン無線兵(スタンリー・ベイカー)…といった各分野のスペシャリストたち。次々と襲い来る危機また危機、内部にスパイがいる事まで発覚し、それは誰かという疑心暗鬼のサスペンスもあり、さらには味方の艦隊が射程距離に入るまでに爆破しなければならないというタイム・リミット・サスペンスまでも加わり、まさに手に汗握るスリルの連続。砲台のエレベータがある位置まで降りると起爆装置が発火するよう細工をするが、何度か寸前で止まってしまう…というシーンもあってハラハラ、ドキドキ。それだけにラストの大爆破シーンは快哉を叫びたくなるほどのカタルシスが感じられる。その後に続々と登場する、特殊部隊による要塞攻略アクションものは、すべてここからスタートしたと言っていい。カーク・ダグラス主演の「テレマークの要塞」、リー・マーヴィン主演の「特攻大作戦」、同じマクリーン原作の「荒鷲の要塞」、さらには本作の続編?「ナバロンの嵐」等々…。しかし本作を上回るものは残念ながらない。 |
小林さんのベスト100: (79)「血とバラ」 ('61 監督:ロジェ・ヴァディム)
*「ニュールンベルグ裁判」(61)。社会派のスタンリー・クレイマー監督作品。連合国によるナチ戦犯を裁く国際裁判の経過を緊迫感溢れる演出で描く。出演俳優がスペンサー・トレイシー、マクシミリアン・シェル、バート・ランカスター、モンゴメリー・クリフト、リチャード・ウィドマーク、ジュディ・ガーランド、マレーネ・ディートリッヒと豪華。いろいろいと考えさせられる問題作である。 *「101匹わんちゃん大行進」(61)。ディズニーお得意の動物キャラが大活躍する楽しいアニメ。悪役のクルエラ・デ・ヴィルが凄いメイク(笑)で印象的。リアルタイムで観て楽しませてもらいました。ちょっと残念なのは、この作品を最後にディズニー・アニメがやや精彩を欠きはじめ、記憶に残る作品がしばらく途切れてしまった事。ウォルト・ディズニー本人もこの作品の5年後に他界した。なお、後のリバイバル時には題名から「大行進」が取れていた。後年にはこの作品の実写版「101」も製作された。 |
60 |
「ウエスト・サイド物語」 ('61) 米/監督:ロバート・ワイズ/ジェローム・ロビンス これはもう、大好きどころの騒ぎではない。高校生の頃観て大感激し、リバイバルの都度3回も4回も観て、今は無きシネラマOS劇場のラストショーでも観て、多分劇場で観た回数としては一番多い作品である。無論ビデオでの鑑賞回数も数え切れない。娯楽映画としては生涯におけるマイ・ベストワン作品である(芸術映画のベストワンは「市民ケーン」)。余談だが、同級生 (*1)記録によると、丸の内ピカデリー劇場での連続上映は昭和36年12月23日から昭和38年5月17日まで、なんと511日間!だったそうな。 (*2)横幅が70mmあるフィルムを使用しての上映。当然映写機も日本に数十台しかなく、上映劇場は限られていた。この当時は本作や「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「クレオパトラ」等、70ミリ映画の大作がどんどん作られていた。なお、一部地方劇場や2番館では35ミリ版で上映された。 (*3)これも記録によると、当時の平均入場料は84円!現在は平均で1,260円程度。丁度15倍である。13億円の配給収入は従って現在料金に直すと195億円。いかに凄いか分かるだろう。 [出典:「世界映画記録全集」('73年・キネマ旬報社)他] |
双葉さんのベスト100:
(79)「ウエスト・サイド物語」 (左参照) (80)「突然炎のごとく」 (61 監督:フランソワ・ トリュフォー) *「突然炎のごとく」(61)。フランソワ・トリュフォー監督の長編第3作。親友同士の二人の男が、1人の女を同時に愛してしまったことから起こる悲しい物語。いわゆる三角関係ものだが、トリュフォーの繊細な演出によって愛すべき秀作になっている。男たちを魅了する奔放な女を演じるジャンヌ・モローがとてもいい。好きな作品です。ベストに入れたかったのだが…。原題は男たちの名前である「ジュールとジム」。これも邦題がうまい。 *「ティファニーで朝食を」(61)。これははっきり言えば、ストーリーはどうでもよくて、ただひたすら、ロマンチックなムードを楽しむだけの作品。オードリーの美しさと、名曲ムーン・リバーを堪能できれば十分である。当初の企画では、マリリン・モンローが主演だったが、モンローが降りてヘップバーンに決まったという事である。役柄がコールガールだから、モンローならまったく違った作品になっただろう。それも観たかった気がするが・・・。ヘンな日本人(なんとミッキー・ルーニー)はご愛嬌。ちなみにこの作品は、音楽のヘンリー・マンシーニがヘップバーン、並びにブレイク・エドワーズ監督とそれぞれ出会った最初の作品であり、以後ヘップバーンもエドワーズもずっとマンシーニとコンビを組むこととなる。そういう意味では記念碑的な作品ではある。 *「噂の二人」(61)。名匠ウイリアム・ワイラー監督の、自身による2度目の映画化。オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーンの二人が、同性愛だと噂を立てられ、マクレーンが自殺するというちょっとショッキングなお話。心ない噂が人間の運命を変えてしまうコワさ。ヘップバーンがシリアスな役柄に挑戦。マクレーンも微妙な役柄を好演。ワイラーの演出は端整で風格がある。小品だが味わい深い佳作。 |