逆境ナイン  (アスミック・エース:羽住 英一郎 監督)

 島本和彦原作のハチャメチャ漫画を、「海猿」(04)で劇場映画デビューした羽住英一郎が監督2作目として映画化。
 「海猿」は、批評にも書いたが、洋画を思わせる正統派熱血青春映画の快作であった。羽住監督にも注目していたのだが、次回作に選んだのが本作だったのには面食らった。まるで作風が違うではないか(個人的には鈴木則文か三池崇史が撮るような作品だと思った)。
 映画を観てまた驚いた。漫画以上にマンガである。はっきり言って、おバカ映画である(褒め言葉(笑))。校長に殴られた主人公不屈闘志(玉山鉄二)が空までぶっ飛ぶし、格言がそのまま巨大な石に刻印され、空中に舞い上がったり、ラストはなんと9回の表で112対0!という得点差を、たった一人で逆転しようとする。不屈が魂を込めて投げたボールが火の玉となって打者に向かったり、CGを巧みに使ったオーバーギャグがなんとも楽しい。この辺は「少林サッカー」にもインスパイアされているようだ。そう言えば、冒頭は巨大なモノリスが「スター・ウォーズ」のように地球に向かって飛んでいるシーン。「少林サッカー」の冒頭も「2001年―」のパロディだったから明らかに意識しているのだろう。まさか羽住監督が、ここまで遊んでくれるとは思わなかった。予想外である。この手のパロディが大好きな私としては、期待していなかった分、大いに楽しませてもらった。昨年の「下妻物語」といい本作といい、貧乏くさくて陰気…という日本映画に対する一般イメージ(私は全くそうとは思わないが)をぶち破る、ハチャメチャ(しかしどちらも勇気や友情の大切さを描いている点で1本芯が通っている)で陽気で楽しいエンタティンメント作品が続々登場して来たことはまことに喜ばしい。そして、久しぶりにスクリーンに登場の藤岡弘、(わざわざ名前に“、”を入れてるのがそれだけでもおかしい)の文字通りの怪演には笑った。惜しむらくは、ミニシアター公開で、しかも興行的にも思わしくないのがちょっと残念である。こういう作品こそ派手に宣伝し、「少林サッカー」並みに大ヒットさせて欲しいものである。さて、羽住監督、次はどんな作品にチャレンジするのか、大いに期待したい。