カンフーハッスル   (香港/ソニー・ピクチャーズ:チャウ・シンチー 監督)

 「少林サッカー」で大ヒットを飛ばしたチャウ・シンチーが製作・脚本・監督・主演を兼ねた、アクション・コメディの快作。
 「少林サッカー」でも大笑いさせて貰ったが、本作も期待にたがわぬ、CGやワイヤー・アクションの多用に、超おバカなギャグが満載され、もう笑いっぱなしである。特に、前作にも増して、いろんな漫画や映画のパロディが盛りだくさんで、熱心な映画ファンであるほど楽しめる部分が多い。分けてもメインとなっているのが、シンチーのあこがれの人、ブルース・リーへのオマージュで、ラストにはまさにブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」を彷彿とさせる派手なカンフー・アクションが登場する。かつて「燃えよドラゴン」をはじめとする香港カンフー映画に魅了された経験のある人なら、もうこのラストは鳥肌ものである(シンチーのコスチュームも、「燃えよドラゴン」でのリーのそれとそっくり)。
 配役も、香港カンフー映画を数多く観て来た人ならうれし涙を流すほど、懐かしい顔ぶれが並んでいる。まず最後に大暴れする強敵役に、倉田保昭とも共演した、ブルース・リャン(ただし当時の面影はなく、禿げ頭の老人になっていたのには愕然)。そしてオンボロ・アパートの、表向きはカミさんに頭の上がらない大家を演じているのがユン・ワー。ブルース・リーのスタンド・インを努めた事もあるベテランである。他にも、このアパートに住む3人のカンフー達人も、本物のカンフーの達人ばかりである。この人たちの華麗なカンフー技も必見である。
 私が大笑いしたのは、シンチーが大家のカミさんに追いかけられて逃げるシーンで、なんとコマ落し風に、猛スピードで二人がチョコマカと走る。ここのシーンは、まるでカートゥーン・アニメの「コヨーテとロードランナー」そっくりである。で、オチはカミさんが空を飛んで看板に激突し、ズズー…と滑り落ちる(笑)。これもアニメの手法である。他にも、「ドラゴンボール」か「北斗の拳」を思わせるオーバーなアクションがあり、シンチーは実によく日本マンガやアニメを研究し、それを実写で見事に成功させている(「キューテイハニー」の無残な失敗とは大違いである。反省し見習って欲しい)。その他「シャイニング」のパロディまで飛び出す(映画を観れば分かります)など、いろんな所にパロディ、オマージュが登場するので、よく目を凝らして観るように…。
 なお、未見の方にお断りしておくが、おバカコメディであるにも関わらず、本作には人間が惨殺されたり、残酷なシーンもある。この点で批判的な人も多いようである。だが、ブルース・リー主演作にも結構残酷なシーンはあったし、こういう作り方は香港アクション映画には割りと多いので、慣れていない方にはちょっとショックかも知れない。しかしラストは前作同様、超オーバーで、それこそ宣伝にもある“ありえねー”笑えるシーンで締められているので後味は爽快である。なお、エンド・クレジットを見て分かったのだが、チャウ・シンチーの英語表記は“スティーヴン・チョウ”であった。でも、なんかチャウ・シンチーの方がトボけた感じで(笑)しっくり来ると思うのですがね。