着信アリ  (角川大映:三池 崇史 監督)

 恒例、角川冬のホラー路線ものである。この路線からは「リング」、「仄暗い水の底から」等の佳作が生まれている。今回は鬼才、三池崇史がホラーに挑戦、かなりコワい作品に仕上げている。ただしコワい映画なら以前に「オーディション」という、イタい作品を撮った実績あり。
 携帯電話に、自分の断末魔の悲鳴が着信し、そこに記載された(未来の)時刻に奇怪な死を遂げる…という事件が続発する。死んだ人間の携帯から、さらに次の犠牲者宛にメッセージが発信される…という構成は、あの「リング」とよく似ている。ビデオが携帯に代わったというわけである。後半の真相究明シーンも「リング」とそっくりで、裏を返せばそれだけ「リング」が良く出来ていた…と言えるだろう。しかし、見たくなければ見ないで済むビデオと違って、今や携帯は必需品であり、生活の一部にすらなって来ている。しかも次々とさまざまな機能が追加され、そうした機能がどこまで増殖して行くのか、持っている人間でも計り知れない潜在能力を秘めた不思議なメカでもある。そんな道具が、悪意を持って人間たちの命を奪って行く…というこの映画は、あるいはテクノロジーの進んだ現代に対する寓意も込めている――と見る事も出来るのではないか。三池演出は、亡霊が突然姿を見せるショッカー演出を巧妙に散りばめ、なかなかコワい。また、死の着信を受けた少女を強引に心霊番組に出演させるテレビ局のあざとさも描いてしっかり現代批判にもなっている。柴崎コウの恐怖演技もサマになっており、ホラー映画としては水準作であると言える。ちなみに三池はこの前にビデオ作品だが、「極道恐怖大劇場・牛頭(ゴズ)」というホラー映画を撮っており、これは劇場未公開ながらもカンヌ国際映画祭に招かれたり…と、評判になっている。こちらはまさに「DOA」に匹敵する怪作になっており(と言うより、ほとんどデヴィッド・リンチの世界?)、三池ファンなら見逃す手はない…と言っておこう。