オーディション (アートポート:三池 崇史 監督)

 昨年の狂った傑作(?!)「DEAD OR ALIVE 犯罪者」の三池崇史監督の最新作。妻を7年前に亡くした男が、友人の映画プロデューサーがセットした女優オーディションで見つけた女性を気に入り、プロポーズする。このあたりまでは演出もごく正当的で男が女に惹かれて行くプロセスが丹念に描かれている。が、後半、殺風景な彼女のアパートが登場するあたりから映画は不気味な怖さに包まれて行く。突然姿を消した女を男が探し求めるうちに、彼女のおぞましく凄惨な過去が明らかになって行き、ラストは過去の虐待へのトラウマと愛する者を独占したい女の情念とが一体となり、男の体を痛めつけ、切り刻む…。これは本当にコワい。いわゆるサイコ・ホラー映画だが、さすが三池崇史、只のホラーにはなっていない。特に後半、男がホテルで眠ってしまうあたりから、どこまでが現実でどこからが夢なのかが分からなくなってしまう。また夢にしては男が一度も行ったことのない女のアパートで飼われている前の男の凄惨な姿が現れたりと、まさに悪夢の如き不思議なシーンが連続する。女を演じた椎名英姫が素晴らしい。かよわそうではかなげなイメージでありながら、ラストで鬼気迫る悪鬼に変貌する、そのコワさ。そこに至る心理もきめ細かく描かれているだけに、オカルト風の凡百のホラー映画よりもよっぽどコワい。今年最高に怖いホラーの傑作である。