マトリックス・レボリューションズ (ワーナー:アンデイ&ラリー・ウォシャウスキー 監督)

 '99年に1作目が登場したときは、まったく新しい映像に、見えている世界はすべて仮想現実だった…という展開が衝撃的でワクワクするような楽しみを覚えた。これはSF映画史上に残る傑作だったと思う。
 ところが、4年のインターバルを開けてようやく公開された2作目「リローデッド」、そして本作と立て続けに観て、少々ガッカリした。話をやたら込み入らせて判りにくくなっているし、解説本なんかで事前に知識を得ていないとついて行けないようなアイテム、用語が頻発する(例えばオラクルやアーキテクトの存在は説明されても判りにくいし、解説本を読んだらこれもまた難しい。一例「アノマリーがソースに行ってバージョンアップしてる」なんて何のことか判りますか(笑))。よほどのパソコン・オタクかゲーム・オタクでなければ楽しめないようでは映画としては困るのではないだろうか。
 無論、CG映像はさらにグレードアップしてるし、2作目はアクション・シーンが見応えがあってその部分は楽しめた。しかし、これは「スター・ウォーズ」批評でも書いたが、いい映画はアクションやSFXシーンがなくても面白いが、ダメな映画はSFXなどを抜いたらまったくつまらないものになる。1作目はお話だけでも面白かったが、2作目ではアクション・SFXシーン以外にはほとんど見るべき所がない。3作目に至ってはそのアクション・シーンすらつまらない。「マトリックス」的世界観とはあまり関係がないミフネ船長(三船敏郎から拝借したか?)のロボット操作と機関銃乱射シーンのみが見どころでは困る。ラストのネオとスミスの決闘も、あまりにマンガチックで緊張感に欠ける(「ドラゴンボール」みたいだと言う声が多いのも、その事を示している)。だいたいラストが不得要領。ネオは死んだのか。再生したのか。マトリックスのカプセルに捕らわれていた人間たちはどうなったのか。地球に平和は訪れたのか…そうした疑問点を残したまま終わったのではすっきりしない。セリフで説明してると言う人もいるが、やはり映画なのだからきちんと“画”で説明すべきである。日本製アニメからの引用も、1作目が実に巧妙だったのに、本作は「またかよ」とウンザリさせられるだけだった(ドラゴンボールに、「ガンダム」のような人間操縦ロボット、そしてクライマックス直前、ネオが触手で宙に浮く所は「風の谷のナウシカ」の下手糞な引用で苦笑ものである)。
 結局はこのシリーズ、1作目があまりに完璧に出来過ぎていた故に作りにくいシリーズになってしまったのだと思う。1作目だけで止めておいた方が将来高く評価される事になっただろう(例えば「ブレード・ランナー」は続編を作らなかったからカルトの傑作になったのである)。ただ、番外編の「アニマトリックス」は、批評にも書いたが楽しめた。まあいろいろ不満を述べたが、革新的なシリーズであった事は間違いない。何度も見直せば楽しめる作品になるのかも知れない。さて、ウォシャウスキー兄弟、次は何を作るのだろうか。