ジュラシック・パークV (ユニバーサル:ジョー・ジョンストン 監督)

 シリーズ3作目だが、監督はスピルバーグから、ILMの特殊効果マン出身で「ミクロキッズ」「遠い空の向こうに」などのジョー・ジョンストンに交代。ついでに音楽もジョン・ウィリアムスが降板(主題曲のみ使用)。だとすると出来が心配になるが、思ったよりもいい出来だったので一安心。
 もともとこのシリーズ、ドラマなんてあってなきが如し。ひたすら驚異のSFXと、危機また危機のジェットコースター・ムービーとして楽しめば良い程度の作品である。CGはますますリアル度を増しており、SFXのことも良くわかっている監督だから楽しめるのは間違いない。これまで出てこなかったスピノザウルスや、ちょろっとしか出ていなかったプテラノドンが大活躍するのも楽しい。ただ1作目ではかなり怖かったヴェラキラプトルが、今回はおとなしいのがやや物足りないといった程度である。ラストはもう少し何重ものスリルと難関が欲しいところ。それでもシリーズものが回を重ね、監督が変わるごとにパワーダウンするという宿命というかパターン(「ジョーズ」はひどかった)に今回は陥らなかったことは評価していい。ジョー・ジョンストンの起用は成功である。
 なお、見てて気が付いたが、この作品、あの人形アニメの大御所、レイ・ハリーハウゼンがタッチした恐竜映画の代表作「恐竜100万年」('66)へのオマージュ(注1)ではないかと思えるフシがある。なにせスピノザウルス対T−レックスの恐竜バトルはあるし、プテラノドンが人間を吊り上げ、ヒナの待つ巣にエサとして運び込むシーンは「恐竜100万年」にほとんど同じ場面がある。先月紹介の「ハムナプトラ2」にもハリーハウゼン・オマージュがあったし、この伝説的な特殊効果マンがアメリカSFX担当者にとっていかに尊敬されているかがこの事でもよく分かるのである。  
      


(付記)映画マニアには又、宮崎アニメからの引用を見つけるという楽しみ方もある。スピルバーグもちょくちょくやらかすが、ジョンストンも宮崎ファンである事はまず間違いない。キネ旬8月下旬号で永野寿彦氏が指摘しているが、冒頭のパラセーリングのシークェンス(特にロープのボート側が霧で霞んで見えないシーンなど)、プテラノドンに捕まった少年をキャッチして救うシーンなど、「天空の城ラピュタ」へのオマージュがありあり。彼が担当した「アイアン・ジャイアント」のロボットのデザインも「ラピュタ」のロボット兵とそっくりだし…(この辺のくわしい事は別項「お楽しみはこれっきりだ」も参照してください)。何よりジョンストンの前作「遠い空の向こうに」や「ロケッティア」を見ても、宮崎と同じく、空を飛ぶことへのあこがれや思いが溢れている(注2)。だから本作でもプテラノドンが飛ぶシーンを実に丁寧に撮っているのでしょうね。

(注1)これは間違いないようで、ジョンストン自信がインタビューで「僕はハリーハウゼンのファンだから、彼が昔やった恐竜バトルを、CGを使って再現したかったんだ」と語っている。(キネ旬8月下旬号)

(注2)上と同じインタビューの中でジョンストンはこう言っている。「飛ぶことへのこだわりは確かにある。(略)でも宇宙に行きたいなんて思ったことはないから…僕はいつも、空を飛ぶことがどんなに素晴らしいかを見せたいという気持ちで演出している」
 宮崎さんも似たような事を言っているし、宮崎作品にもまた宇宙を舞台にしたものは1本もないはずである。