第7回 「深作欣二監督特集 -仁義なき戦いへの道

 
開催日: 1975年3月15日(土)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 10:40

テーマ: 第7回は初の監督特集。これも、主演スター特集と共にやりたかったテーマだったが、誰を第一弾に持ってくるか、メンバーそれぞれに思い入れのある監督がおり、揉めるのは必至。ようやく今回、前年の「仁義なき戦い」の大ヒットで今や時の人ともなり、また前回の特集の看板=渡哲也主演で前月に公開された「仁義の墓場」が大好評だった深作欣二監督の特集という事で落ち着いた。
上映作品の選定にも苦労したが、ブレイク前の、客は入らなかったがキラリと光る秀作を揃える、という点では意見が一致、かくして以下のような、筋金入りの深作ファンも納得の力作が並ぶこととなった。

当日プログラム(PDF)  ※ご覧になるには Adobe.Readerのインストールが必要です。

(注)プログラムはすべてB4サイズです。印刷したい場合はB4が印刷出来るプリンターなら問題ありませんが、A4プリンターであれば、B4→A4への縮小プリントを行ってください。

※ 画像をクリックすると拡大されます。

 
(作品紹介)

 ギャング同盟

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1963.07.31 上映時間:80分  白黒/東映スコープ
 企画:亀田耕司、吉田達 
 監督:深作欣二 
 脚本:秋元隆太、佐治乾、深作欣二 
 撮影:山沢義一
 音楽:真鍋理一郎
 助監督:竹本弘一
 出演者:内田良平、三田佳子、佐藤慶、アイ・ジョージ、戸浦六宏、曽根晴美、平幹二朗

初期の代表作「白昼の無頼漢」はすでに第1回で上映済なので、深作ギャング映画シリーズを代表して本作をトップバッターに選定。
内田良平が主役というのも珍しい(多分本作と「車夫遊侠伝・喧嘩辰」(加藤泰監督)の2本くらいのはず)。タイトルバックは、闇市の風景に、激しく暴れる男たち。そこに朝鮮戦争の写真がカットバック、と、ほとんど「仁義なき戦い」を髣髴とさせる(笑)のが今から見れば楽しい。佐藤慶、戸浦六宏など、東映らしからぬ俳優が参加しているのも一味変わっている。お話はムショから出た内田が仲間を集めて組織の大ボスを誘拐し、身代金を奪う計画を立てる、というものだが、後半は派手な銃撃戦あり、ダイナマイトが炸裂したりと、生きのいいアクション映画として成功している。冒頭、佐藤慶が「世の中、変わっちまった。もう焼け跡もねえし、闇市もねえ」と慨嘆する等、いかにも深作作品らしいセリフもあり、深作映画を語る上では、是非とも押さえておきたい佳作である。なお、クレジットはされていないが、当時アイ・ジョージの後見役だった俊藤浩滋が本作に企画参加していたという事実も興味深い。

 

 狼と豚と人間

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1964.08.26 上映時間:95分  白黒/東映スコープ
 企画:吉野誠一、吉田 達 
 監督:深作欣二 
 脚本:佐藤純弥、深作欣二 
 撮影:星島一郎 
 音楽:富田 勲 
 助監督:野田幸男
 出演者:高倉健、北大路欣也、三國連太郎、江原真二郎、中原早苗、石橋蓮司、室田日出男
 
 初期の深作作品中でも、これは最高傑作である。これを見ずして深作は語れない。
スラム街に住む三兄弟。長男・市郎(三國連太郎)はさっさと街を出て組織の構成員としてノシ上がり、次男・次郎(高倉健)は一匹狼のヤクザとなってやはり街を脱出し、残された三男・三郎(北大路欣也)は兄たちが見棄てた母親の世話の為街に残り、やがて愚連隊に入る。題名はこの三人のキャラクター(上から順に、豚、狼、人間)を示している。そして物語は、組織の金と麻薬を強奪する計画を立てた次郎に三郎が協力する事となるが、三郎がそれを横取りし隠した事から、次郎は口を割らせようと三郎の仲間を凄惨なリンチにかけ、以後はバイオレンスに次ぐバイオレンス。その凄惨さに観客はただ息を飲むばかりとなる。
仲間を裏切らず、信念を貫き通す三郎が一番人間らしく生きている。その姿を見て、“狼”だった次郎も“人間”に変わろうとする。そして三郎は市郎に呼びかける。「あんちゃん、あんちゃんもこっちへきて一緒に戦ってくれよ」…。だが臆病な“豚”である市郎は弟たちを見殺しにしてしまう。最後、生き残った市郎の背中に、スラム住人たちが石を投げつけるラストが印象的。
後の「人斬り与太・狂犬三兄弟」「仁義の墓場」に繫がる、凄まじいバイオレンス描写、焼け跡を連想させるスラム街(犬を殺して食うシーンもある)、短いカットバックとストップモーションによる手際良い状況説明、手持ちカメラの躍動感溢れる画面作り、と、深作映画のあらゆるエッセンスがぎっしりと詰まった、まさにこれぞ深作映画の原点である。北大路欣也が殺されるシーンで一瞬画面が歪む(アナモフィック・レンズを回転させている)演出は、やはり北大路が主演の「仁義なき戦い・広島死闘編」に応用されている。
なお本作は、当時としてはあまりの凄惨な描写に観客がビビッたせいか興行的には記録的な不入りとなり、以後深作監督は次作の「脅迫(おどし)」まで、1年半の間ホサれる事となる。

 

 (おどし)

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1966.02.17 上映時間:84分  白黒/東映スコープ
 企画:秋田 亨
 監督:深作欣二
 脚本:深作欣二、宮川一郎
 撮影:山沢義一
 音楽:富田 勲 
 助監督:山口和彦
 出演者:三國連太郎、西村晃、春川ますみ、三津田健、室田日出男

平和な家庭に、突然脱獄囚が闖入し、家族を人質に取られた一家の主・三沢(三國連太郎)が、仕方なく脱獄囚の言うがままに行動する…というストーリーを聞けば分かるように、これはウィリアム・ワイラー監督の傑作サスペンス「必死の逃亡者」の換骨奪胎(悪く言えばパクリ)である。脱獄囚を演じているのが西村晃と室田日出男。クレジットではなぜか、それまでも深作映画に出ている室田日出男に「新人」と付記されている。東映では改めて売ろうとしたのだろうか。
三沢が、最初は小心で自分の事しか考えず、家族を見殺しにする所だったが、たまたま街中で貧しい親子の絆の強さを目撃して心を打たれ、やがて勇気を取り戻し、家族の為に悪党たちに敢然と立ち向かって行く、という展開はややベタだが、深作監督のキレのいい演出がスリリングで見応えがある。
深作作品としては珍しい、家族愛を絡めたサスペンス・ドラマの佳編として記憶に留めたい。

 

 解散式

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1967.04.01 上映時間:92分  カラー/東映スコープ
 企画:俊藤浩滋、矢部恒
 監督:深作欣二 
 脚本:松本功、山本英明、深作欣二
 撮影:星島一郎
 音楽:富田 勲
 助監督:高桑 信
 出演者:鶴田浩二、丹波哲郎、渡辺美佐子、宮園純子、渡辺文雄、室田日出男 

深作監督にとっては、これが初めての本格的任侠映画である。また深作作品のクレジットに俊藤浩滋の名前が初めて登場した作品でもある。深作は、任侠映画は自分の肌に合わないと思ってずっと撮らなかったが、会社に押し切られる形で引き受けた作品。それでも、コンビナート建設の利権とか、鶴田が身を寄せる先がスラム街(!)とか、深作らしさは残っている。コンビナートの巨大ガスタンクを背景に、鶴田と丹波哲郎の着流しヤクザ同士が対決するという構図もユニーク。ラストは鶴田が敵陣に斬り込む任侠映画パターンとなるものの、ロケした埋立地が実は「狼と豚と人間」のロケ地と同じだとか、そこを市川好郎たちチンピラが走り回ったり、カメラもその「狼と豚−」の星島一郎が担当しているとか、随所に深作のゲリラ的抵抗が垣間見えるのが楽しい。ちなみに、深作監督作品に着流し姿の主人公が登場するのは多分これ1本きり。その点でも希少価値の高い作品と言えるだろう。

 

 君が若者なら

 製作:新星映画社=文学座/配給:松竹 
 封切日:1970.05.27 上映時間:90分  カラー/シネマスコープ
 企画:松丸清史、其田則夫、武藤三郎
 監督:深作欣二
 脚本:中島丈博、松本孝二、深作欣二
 撮影:江連高元
 音楽:いずみたく 
 助監督:久保治男
 出演者:石立鉄男、前田吟、河原崎長一郎、寺田路恵、峰岸隆之介(徹)、太地喜和子、小川真由美

プログラムのトリを務めるのは、これまた深作作品では珍しい、働く若者たちが主人公の作品。製作が独立プロの新星映画社という事もあり、また題名からしても、森川時久監督の「若者たち」シリーズに傾向として近い作品である。お話としては、集団就職で上京した5人の若者たちが団結して共同でトラックを買い、独立して働こうとするが、さまざまな困難と挫折の末に夢が破れ去るという結末。凡庸な監督が撮ったらつまらない出来になりかねない所だが、さすが深作、荒々しい画面作りで最後まで飽きさせない。特に若者たちが酔って暴れるくだりで、短いフラッシュ・カットを重ねる編集が「イージー・ライダー」を思わせたり、ラスト、脱獄して逃げて来た河原崎長一郎に海を見せる為、前田吟が彼をトラックに乗せ走る場面で、やがて車内で息を引き取る河原崎の姿が、「真夜中のカーボーイ」のラストの、バスの車内で死んでしまうダスティン・ホフマンの姿とそっくりに見える等、随所にアメリカン・ニューシネマへのオマージュ(?)が仕込まれているのが楽しい。こういう作品もソツなく撮れる、深作の演出力の確かさを再確認する意味でも観ておくべき作品だと言えよう。
ちなみに、この作品で縁が出来た新星映画社の製作で、深作は後にあの傑作「軍旗はためく下に」を撮る事となるのである。

 

(回想記)
サブタイトル通り、「仁義なき戦い」に至るまでの、深作欣二の歩みを振り返る企画で、それ以前の深作映画を知らない新しいファン向けには恰好のプログラムだと我々は自負しているが、上映作品の地味さが災いしてか、観客動員は102人と少々厳しい結果となり、また赤字を増やしてしまった。若さにまかせて仲間と始めたものの、現実の厳しさを思い知らされるのは、何やら「君が若者なら」の主人公たちと似ている気が…と思ってるのは私だけ?(笑)。
まあ、赤字は慣れっこ。映画と違って我々はへこたれない。ぼちぼち固定ファンも増えて来ており、ブレる事なくユニークな番組作りを今後も続けて行く意欲は変らないのであった。

 
 DVD/ビデオソフト紹介

 

   

※次回プログラム 第8回 「笑和狂画傳−ナンセンス大行進−」