第15回 特別企画 「加藤泰の世界 -あるいは失われた情念を求めて-」 (PLANET共催)

 
開催日: 1975年11月15日(土)〜16日(日)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 1:00

テーマ: 今回の特集は、根強いファンの多い加藤泰監督特集だが、いつもと大きく異なるのは、なんとなんと!土曜日の午後1時から翌日曜日の朝6時頃まで、加藤作品10本を連続上映し、ゲストに加藤泰監督と、加藤作品のレギュラー俳優、汐路章と任田順好の3方をお呼びして講演を行っていただくという、とんでもない企画である。これは映画資料図書館を運営する「PLANET」との共催で、加藤監督をお呼び出来たのもPLANETの尽力によるもの。しかしオールナイトも含めて計17時間にも及ぶマラソン映画会なんて、どこの自主上映会も思いつかないだろう。狂気の沙汰である(笑)。みんな若いとは言え、よく体が持ったものである。

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(作品紹介)

 ひよどり草紙

 製作:宝プロ=東映京都  配給=東映
 封切日:1952.10.23 上映時間:82分  白黒/スタンダード
 企画:衛藤一、マキノ眞三 
 監督:加藤 泰 
 原作:吉川英治 
 脚色:野島信吉 
 撮影:松井 鴻 
 音楽:高橋 半
 助監督:宮川孝至
 出演者:重光 彬、江見 渉、沢村マサヒコ、河野秋武、星美千子、益田喜頓、澤村國太郎

まず最初は東映と宝プロ提携で撮ったこの作品。お話は、紅ひよどりの脚に括り付けられた、徳川家康が江戸城に隠した軍用金の在処を記した地図を巡って敵味方入り乱れての争奪戦を描いた冒険活劇。予算も厳しく、スターもほとんどいない条件下にしてはテンポもよくまずまずの出来。まだ後のローアングルや奥行きのある映像などは確立していないが、初期の加藤泰の演出ぶりが確認出来るだけでも貴重な作品。
なおこの作品は35ミリフィルム版が残っておらず、16ミリフィルムでの上映となった為、画質はかなり悪かった。

 

 紅顔の密使

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1959.06.09 上映時間:89分  カラー/東映スコープ
 企画:杉井 進
 監督:加藤 泰 
 原作:千葉省三
 脚色:加藤 泰
 撮影:吉田貞次 
 音楽:高橋 半 
 助監督:長谷川安人、鈴木則文、山内鉄也
 出演者:大川橋蔵、一条珠実、故里やよい、伏見扇太郎、田崎 潤、吉田義夫、沢村宗之助

加藤泰作品にしては珍しい、スペクタクル戦争アクション。大川橋蔵がカッコよく、朝廷の密使としてジェームズ・ボンドばりの大活躍をする(笑)、理屈抜きの娯楽大作である。近くに自衛隊の演習場もある滋賀県の饗庭野の原野に城の大オープンセットを作りロケをしたが、粘る加藤演出に撮影は長引き、東映京撮の助監督が総出で手伝いに訪れ、中島貞夫は東映入社早々、いきなり長靴を持って現場に行けと言われたと(笑)述懐している。ラストのクライマックスでは敵の大将田崎潤と橋蔵との延々と続く死闘がなかなかの迫力。目立たないが、戦争によって犠牲となる庶民の悲哀をきっちり描いている辺りも加藤泰らしい。

 

 真田風雲録

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1963.06.02 上映時間:90分  カラー/東映スコープ
 企画:小川貴也、翁長孝雄 
 監督:加藤 泰 
 原作:福田善之 
 脚色:福田善之、小野竜之助、神波史男 
 撮影:古谷 伸 
 音楽:林 光
 美術: 井川徳道
 助監督:鈴木則文、菅 孝行
 出演者:中村錦之助、渡辺美佐子、常田富士男、ジェリー藤尾、米倉斉加年、ミッキー・カーチス、河原崎長一郎、千秋 実、佐藤 慶、 汐路 章 

後の加藤泰作品しか知らない観客は面食らうだろう。主人公猿飛佐助(中村錦之助)は宇宙から飛来した隕石の放射能のおかげで超能力が使えるし(笑)、霧隠才蔵(渡辺美佐子)は女性で佐助と恋仲になるし、ミッキー・カーチス扮する由利鎌之助はギターかき鳴らして政治風刺やってるし、極めつけは服部半蔵率いる徳川忍者軍団、なんと「ウエストサイド物語」風のモダンダンス踊りながらやって来る。もう抱腹絶倒、時代考証てんで無視のキテレツな作品である。よくこんなものを加藤泰が監督したものだと感心した。加藤さんによれば、最初は沢島忠が撮る予定だったらしい。ミュージカル・コメディ時代劇は沢島監督のおハコだから適任と言えるが、福田善之による原作は60年安保闘争の苦い挫折が裏テーマになっており、この原作の意図を生かすなら加藤監督で正解だったと思う。政治抗争の谷間で若者たちが無残に命を散らして行く、これはまさに加藤監督らしい戦国青春群像劇のカルト的傑作と言えるだろう。炎上する大坂城の中で佐藤慶扮する大野修理が、「アチィ!」と言って飛び上がった所でストップ・モーションとなるシーンは今や語り草。ただ当然ながら従来の東映時代劇ファン、錦之助ファンには不評で、興行的にはかなりの不入りを記録した。

実はこの映画の監督オファーと同時期に、東京撮影所からも三國連太郎主演の「無法松の一生」を撮らないかとの声があった。無法松大好きを自認する加藤さんはどっちも撮りたくて悩んだが、最終的にこちらを選び、「無法松の一生」は村山新治監督が撮る事となった。この無念は翌年の「車夫遊侠伝・喧嘩辰」で晴らす事となる。

タイトルバック   https://www.youtube.com/watch?v=D2dAnz4zTB4

 

 風の武士

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1964.01.15 上映時間:95分  カラー/東映スコープ
 企画:中村有隣、松平乗道 
 監督:加藤 泰 
 原作:司馬遼太郎 
 脚色:野上龍雄
 撮影:松井 鴻 
 音楽:木下忠司 
 美術:川島泰三
 助監督:本田達男、荒井美三雄
 出演者:大川橋蔵、久保菜穂子、桜町弘子、中原早苗、大木 実、野際陽子、進藤英太郎、西村 晃、 汐路 章 

当時東映で盛んに作られていた“忍者もの”の1本で、「梟の城」に続き司馬遼太郎原作による忍者アクション時代劇として企画された。黄金のありかを示した「にぶつ姫縁起」なる地図を巡っての争奪戦を描く、忍者ものと言うより“宝探し冒険活劇”である。しかしさすが加藤泰、アクションより橋蔵とヒロイン桜町弘子との悲恋を描いた恋愛メロドラマの色合いが強く出ている。興行的には加藤作品としては珍しくヒットして、前作の不入りで落ちていた社内での評判を挽回する結果となった。

 

 車夫遊侠伝・喧嘩辰

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1964.04.05 上映時間:99分  白黒/東映スコープ
 企画:坂巻辰男、日下部五朗 
 監督:加藤 泰
 原作:紙屋五平
 脚色:加藤 泰、鈴木則文 
 撮影:川崎新太郎 
 音楽:高橋 半
 美術: 井川徳道
 助監督:鈴木則文、篠塚正秀、関本郁夫
 出演者:内田良平、桜町弘子、河原崎長一郎、曽我廼家明蝶、千原しのぶ、藤 純子、汐路 章、北島三郎、近衛十四郎、大木 実

前述したように、これは「無法松の一生」を撮る事が出来なかった加藤監督が、明らかに無法松を思わせる人力車夫を主人公にして監督した、“任侠版無法松”とでも言うべき作品である。主役の辰五郎役は最初大川橋蔵がキャスティングされていたが諸事情で降板し、内田良平が主役を務める事となった。しかし映画を観れば、喧嘩っぱやくて武骨で一本気な辰五郎役は、美男スターの橋蔵より悪役も演じられる内田で正解だった。
東京で喧嘩し、大阪にやって来た主人公・辰五郎が、こちらでも客となった芸妓・喜美奴(桜町弘子)と大喧嘩し、川に叩き込んだ事がきっかけで彼女に一目惚れし、やがて些細な行き違いから三度も結婚式を挙げる破目となる、こちらも加藤さんらしい、男と女の切ないラブストーリーの秀作であり、個人的には加藤監督作品の中で最も愛着のある作品である。
当初の製作予算はそのままで、主演が橋蔵よりギャラの安い内田になった事で製作費が浮き、その分セットに十分な予算をつぎ込む事が出来たそうで、実際当時を再現した梅田ステーションや渡辺橋、その他のセットはかなり見事な出来栄えである。東映京撮一の美術監督・井川徳道さんが腕の冴えを見せている。

 

 幕末残酷物語

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1964.11.11 上映時間:99分  白黒/東映スコープ
 企画:岡田茂、玉木潤一郎、天尾完次 
 監督:加藤 泰 
 脚本:国弘威雄 
 撮影:鈴木重平 
 音楽:林 光 
 助監督:鈴木則文、清水 彰
 出演者:大川橋蔵、河原崎長一郎、藤 純子、中村竹弥、西村 晃、大友柳太朗、内田良平、木村 功、汐路 章 

洋画で大ヒットした「世界残酷物語」にあやかって、東映でも「武士道残酷物語」など残酷ものがいくつか作られたが、本作もその1本。新選組が舞台だが、過去の千恵蔵や右太衛門が近藤勇を演じたカッコいい新選組ものとは全く異なり、新選組を組織維持の為に粛清を繰り返す狂気の集団として描いているのがユニーク。橋蔵扮する江波が処刑人役を任され、最初は臆病だったのが、次第に人を斬る事に快感を覚えて行く辺りが不気味。そんな中で江波と藤純子扮するさとが愛を確かめ合って行くプロセスも丁寧に描かれている。最後は正体がバレた江波が沖田らによって無残に斬り殺される。その江波に必死に手を伸ばそうとして届かないさとの悲しみも涙を誘う。組織の中で人間はどこまで残酷になれるかを痛切に描いた力作だが、観客が抱く過去の新選組のイメージをぶち壊した本作はかなりの不入りとなり、前2作で挽回した信用をまた落としてしまったと加藤監督は語っている。

 

 沓掛時次郎・遊侠一匹

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1966.04.01 上映時間:90分  カラー/東映スコープ
 企画:小川三喜雄、三村敬三 
 監督:加藤 泰 
 原作:長谷川伸
 脚色:鈴木尚之、掛札昌裕
 撮影:古谷 伸 
 音楽:斎藤一郎
 美術: 井川徳道
 助監督:篠塚正秀、荒井美三雄
 出演者:中村錦之助、池内淳子、渥美 清、弓 恵子、三原葉子、東千代之介、岡崎二朗、阿部九洲男、清川虹子

そして翌年、加藤監督は任侠映画史上の傑作と評価の高い「明治侠客伝・三代目襲名」を作るが、この作品は既に当上映会の第11回「東映一家渡世十年」で上映済なので今回はパス。それに続いて監督したのが本作。「瞼の母」に次ぐ長谷川伸原作の股旅ものだが、加藤さん自身も「大好きな長谷川伸の名作である。心をこめて全力投球で撮った」と語っているだけあって、見事な傑作となった。加藤泰監督の最高作だと思う。
冒頭に、原作にない渥美清扮する身延の朝吉を登場させ、この気のいい男を無残に殺させる事によって、やくざ稼業のむなしさ、非情さと、それらをすべて知り尽くしながらも足を洗えない時次郎という渡世人の人物像をまず浮かび上がらせているのが出色。渥美清がコメディ・リリーフとして笑わせてくれるだけに、悲惨な死に様が余計際立っている。脚本はベテラン鈴木尚之と新進・掛札昌裕の共同で、この朝吉のエピソードは脚本通りである。
時次郎は一宿一飯の義理から、何の恨みもない六ツ田の三蔵(東千代之介)を斬ってしまうが、今際のきわに三蔵から頼まれ、三蔵の妻・おきぬ(池内淳子)とその息子を守って旅をすることとなる。夫を殺した憎い男に、いつしか思いを寄せるおきぬ、三蔵への義理が、いつしかおきぬへの思いに変わる時次郎…。ここでも掟と情念の間で揺れ動く男と女のラブストーリーを情感豊かに描く加藤演出が素晴らしい。旅先の宿屋でお女将に、友人の話としておきぬの事を語る時次郎を長回しで捉えたシーンがとてもいい。「人の心は手前でどうこう出来るもんじゃねえ。勝手に動き出しやがる」という時次郎の科白に、人の心の不思議さ、哀しさが表現されている。ラストシーンまで、身じろぎもせずに見てしまう、それほどに錦之助の演技、加藤泰の演出は共に素晴らしい。何度見直しても泣けて仕方がない、珠玉の名編である。

 

 男の顔は履歴書

 製作:松竹(大船撮影所) 
 封切日:1966.07.15 上映時間:89分  カラー/松竹グランドスコープ
 製作:升本喜年 
 監督:加藤 泰  
 脚本:星川清司、加藤 泰
 撮影:高羽哲夫 
 音楽:林 光 
 美術:梅田千代夫 
 助監督: 長谷部利朗、五十嵐敬司、三村晴彦
 出演者:安藤 昇、伊丹十三、中原早苗、中谷一郎、真理明美、沢 淑子、菅原文太、嵐寛寿郎 

加藤監督が松竹で撮った初めての作品で、同時に初めての近現代劇(主な舞台は回想による終戦直後)でもある。加藤監督のファンであった山田洋次と野村芳太郎両監督の是非松竹で1本をとのラブコールで実現した。加藤監督がいずれも安藤昇主演で撮った戦中戦後3部作の第1作でもある。なおこの年加藤監督は前記の「沓掛時次郎・遊侠一匹」も含め東映で2本、松竹で2本と計4本もの作品を監督している。
脚本は星川清司のオリジナルで、加藤泰が手を加えた。太平洋戦争敗戦後の日本で、闇市でマーケットを運営する商店側と、これを乗っ取ろうと企む三国人たちとの利権抗争を描いており、安藤扮する雨宮は戦後、無気力に生きる医者でマーケット抗争にも無関心だったが、雨宮の弟・俊次(伊丹一三)が三国人のアジトに殴り込み無残に殺された事から怒りに燃えて三国人グループに殴り込み、壊滅させるという物語。戦後の混乱期の中で、時代に翻弄されながらも必死に生きる名も無き人たちを厳しく、かつ優しく見つめた力作である。加藤監督らしく、俊次と真理明美扮する朝鮮人の娘との悲恋もしっとり丁寧に描かれる。戦後の焼け跡と闇市を舞台にした抗争劇という点で、後の「仁義なき戦い」を思わせるが、三国人の暴れん坊役で、当時松竹でくすぶっていた菅原文太が出演しているのが今観ると笑える。

 

 みな殺しの霊歌

 製作:松竹(大船撮影所) 
 封切日:1968.04.13 上映時間:90分  白黒/松竹グランドスコープ
 製作:沢村国男 
 監督:加藤 泰 
 原案:広見ただし 
 構成:山田洋次、加藤泰 
 脚本:三村晴彦 
 撮影:丸山恵司 
 音楽:鏑木 創 
 美術 森田郷平
 監督助手:白木慶二、梶浦政男、三村晴彦
 出演者:佐藤 允、倍賞千恵子、應 蘭芳、中原早苗、沢 淑子、菅井きん、河村有紀、松村達雄 

こちらもまた松竹作品。今度は純現代劇である。しかも5人の有閑マダムたちが次々と残忍な方法で殺されて行く猟奇連続殺人もの?である。元ネタは山本周五郎原作でやはり松竹で野村芳太郎監督が撮った「五辯の椿」の、一人の女が5人の男に復讐して行く物語の裏返しである。ポスターの惹句も「喜ばせてヒイヒイ泣かせて殺してやる!」。まあ企画としてはキワものである。しかし、構成を山田洋次が加藤泰と共同で行っているのがミソで(助演も山田映画常連の倍賞千恵子)、キワもの企画なのに、愛の純粋さ、美しいものを無残に散らしてしまう人間の欲望の浅ましさに強い憤怒の矛先を向けた、まさしく加藤泰映画になっているのが見事。人によっては加藤監督の最高作とする人もいる。
殺される5人を演じた應 蘭芳、中原早苗、沢 淑子、菅井きん、河村有紀らも、ゲスで傲慢で憎たらしい有閑マダム役を嬉々として怪演している。
名手丸山恵司による撮影も、パンフォーカス撮影と、コントラストが強調されたモノクロ映像が素晴らしい効果を出している。

予告編   「みな殺しの霊歌」予告編 - YouTube

 

 緋牡丹博徒・花札勝負

 製作:東映(京都撮影所) 
 封切日:1969.02.01 上映時間:98分  カラー/東映スコープ
 企画:俊藤浩滋、日下部五朗 
 監督:加藤 泰 
 脚本:鈴木則文、鳥居元宏 
 撮影:古谷 伸
 音楽:渡辺岳夫
 美術: 富田治郎
 助監督:本田達男、牧口雄二、関本郁夫
 出演者:藤 純子、高倉 健、嵐寛寿郎、小池朝雄、天津 敏、清川虹子、若山富三郎、沢 淑子、汐路 章、待田京介

さて、トリは藤純子主演の人気シリーズ「緋牡丹博徒」の第3作。シリーズの最高作は同じ加藤監督の「緋牡丹博徒・お竜参上」だが、これも「東映一家渡世十年」で上映済。本作もそれに次ぐ傑作である。
舞台は名古屋。例によって草鞋を脱いだ嵐寛寿郎率いる善玉の西之丸一家と、勧進賭博の利権を巡って対立する悪辣な組との争いに巻き込まれる。途中登場する健さん扮する花岡とお竜とがガード下で出会うシーンで、傘を渡す時、花岡の手がお竜の指に一瞬触れるややスローのシーンがいかにも加藤泰。これがラストにお竜の助っ人となった花岡の「あの時の指の温もりが、忘れていたお袋の温かさと同じだった」という名セリフに繋がる。
サブのエピソードとして印象的なのは、沢淑子(のち任田順好)扮するニセお竜・お時の存在で、冒頭目の見えないお時の娘・お君をお竜に救ってもらったものの、お君の目の治療費の為にニセお竜を続けざるを得ない苦悩が描かれ、やがて西之丸組長の息子を敵の組から助けた為に惨殺されてしまう。そのお時の亭主・バケ安を演じた汐路章も好演で、加藤作品常連のこのお二人(当上映会のゲストでもある)が揃って強い印象を残した作品としても忘れられない。

予告編   緋牡丹博徒 花札勝負【予告編】 - YouTube

 

(回想記)
PLANETと共同で、「加藤泰来館講演」を目玉に宣伝にも相当力を入れた事もあって、問い合わせも多く、当日の観客数もまずまずだった。さすがに余程の熱烈加藤泰ファンでもなければ、全10作をすべて観るのは時間的・体力的に難しいと思われたが、結構全作品に付き合った観客は多かったようだ。来館講演の時間になると、ほぼ9割方座席が埋まっていたと記憶している。ポスターには載っていなかったが、なんと映画評論家の山根貞男さんと数本の加藤作品の助監督を務めた関本郁夫まで飛び入り参加。山根さんには司会までお願いし、講演は大いに盛り上がった。豪華なゲストの講演を聞けて、10本もの加藤監督の代表作を鑑賞出来て、前売料金で1,000円とは当時の物価水準を考慮しても安い!上映が終わった明け方、さすがに疲労と寝不足でメンバーはフラフラだったが、やり遂げたという達成感で気分は高揚していたのであった。

 
 DVD/ビデオソフト紹介

 

「ひよどり草紙」

ソフトなし

 *VHSのみ

   


※次回プログラム 第16回 「独立 岡本喜八作戦」