番外編第3回 「蔵原惟繕監督特集」
・場所: シギノ大劇
・上映開始: PM 10:40
・テーマ: 早くも「番外編」の第3回となった。今回は当シネマ自由区代表の依田さん主催による蔵原惟繕監督特集。番外編第1回、第2回とも俳優特集だったので、監督特集は番外編では初めてとなる。蔵原監督のファンである依田さんらしい5本立てと言えるだろう。
・当日プログラム(PDF) ※ご覧になるには Adobe.Readerのインストールが必要です。
(注)プログラムはすべてB4サイズです。印刷したい場合はB4が印刷出来るプリンターなら問題ありませんが、A4プリンターであれば、B4→A4への縮小プリントを行ってください。
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(作品紹介)
狂熱の季節
製作:日活
封切日:1960.09.03 上映時間:75分 白黒/日活スコープ
企画:山本武
監督:蔵原惟繕
原作:河野典生
脚色:山田信夫
撮影:間宮義雄
音楽:黛敏郎
美術:千葉一彦
助監督:西村昭五郎
出演者:川地民夫、郷^治、松本典子、千代侑子、長門裕之、チコ・ローランド
河野典生の小説「狂熱のデュエット」の映画化。少年鑑別所を出た2人の若者たちの刹那的な生き方を描く。主人公・明(メイ)役は川地民夫、相棒の勝はこれがデビュー作となる郷^治が演じている。モダンジャズに浸り、車を盗み、女を誘って行きあたりばったりの行動を繰り返す明たちの姿を鮮烈に描いたこの作品は公開当時、ゴダール監督の「勝手にしやがれ」の日本版とも言われた。蔵原惟繕監督はデビュー当時、「俺は待ってるぜ」や「風速40米」等の石原裕次郎主演作を中心にアクション系エンタメ作品を撮っていたが、やがて新進脚本家・山田信夫と組んで時代に反抗する男たちを描く渋い人間ドラマを多く作るようになる。本作はその奔りであり、蔵原監督の初期の代表作と言えよう。
硝子のジョニー 野獣のように見えて
製作:日活
封切日:1962.09.30 上映時間:106分 白黒/日活スコープ
企画:水の江滝子
監督:蔵原惟繕
脚本:山田信夫
撮影:間宮義雄
音楽:黛敏郎
美術:木村威夫
助監督:藤田繁夫(藤田敏八)
出演者:宍戸錠、芦川いづみ、アイ・ジョージ、平田大三郎、南田洋子
この作品の紹介については、第1回上映会「五社監督列伝」に掲載済に付き、ここでは省略します。お読みになりたい場合は、左のリンクバナーをクリックしてください(左の目次からも参照出来ます)。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=2tPIvR5toS0 (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
何か面白いことないか
製作:日活
封切日:1963.03.03 上映時間:115分 カラー/日活スコープ
企画:水の江滝子
監督:蔵原惟繕
脚本:山田信夫
撮影:間宮義雄
音楽:黛敏郎
美術: 千葉和彦
助監督:神代辰巳
出演者:石原裕次郎、浅丘ルリ子、武内亨、川地民夫、加藤武、信欣三、森川信、滝沢修
蔵原監督の代表作として評価の高い「憎いあンちくしょう」の姉妹編とも言える作品。ありきたりの日常と平凡な婚約者に倦怠感を覚え始めた浅丘ルリ子が、こちらも安定した地位に退屈と倦怠を感じていた裕次郎と出会い、互いに反撥し合いながらも愛し合うようになるという、「憎い−」と似たテーマの作品。前作は1台のジープが重要なアイテムだったが、本作はセスナ機が物語の中心となる。面白いのだが後半はやや強引な展開で、前作よりは落ちる出来である。まあチャレンジ精神は買いたい。なお題名の「面白い」は「おもろい」と読む。
黒い太陽
製作:日活
封切日:1964.04.19 上映時間:95分 白黒/日活スコープ
企画: 大塚和、久保圭之介
監督:蔵原惟繕
原作:河野典生
脚色:山田信夫
撮影:金宇満司
音楽:黛敏郎
美術:千葉和彦
助監督:大木嶛史、近藤幸彦
出演者:川地民夫、チコ・ローランド、千代侑子、新田昌玄、大滝秀治、藤竜也
前掲の「狂熱の季節」と同じ原作・河野典生、脚本・山田信夫で出演者の名前も川地民夫は明(メイ)、千代侑子=ユキ、チコ・ローランドもギルと全く同じ。しかし物語も前記3人のキャラクターも「狂熱の季節」とはかなり異なる。こちらの主人公、明は熱烈なジャズ愛好家で、特に黒人のジャズを敬愛している。そんな明がたまたま白人を殺して逃亡中の黒人兵ギルと出会い、黒人に憧れる明は近寄ろうとするもギルは疑心暗鬼の構えを崩そうとしない。反撥したり銃器を奪い合ったりしながらも、やがて二人は強い絆で結ばれ、共に逃亡を続けて行く、というお話。ちょっとスタンリー・クレイマー監督「手錠のままの脱獄」に似てなくもない。ラストは明がアドバルーンにギルを乗せて空に舞い上がらせる。閉塞感からの脱出願望と警察・米軍への反感・抵抗という基本ラインは後の日活ニューアクション、特に「野良猫ロック」シリーズの遥かな先駆けと言えるかも知れない。その「野良猫ロック」全作に主演した藤竜也が本作に出演しているのも不思議な縁である。
執
炎
製作:日活
封切日:1964.11.22 上映時間:120分 白黒/日活スコープ
企画:大塚和
監督:蔵原惟繕
原作:加茂菖子
脚色:山田信夫
撮影:間宮義雄
音楽:黛敏郎
美術:松山崇
助監督:神代辰巳
出演者:浅丘ルリ子、伊丹一三、松尾嘉代、細川ちか子、信欣三、宇野重吉、平田大三郎、奈良岡朋子、芦川いづみ
最後は前4作とは一転して、戦争下の男女の悲恋を描く文芸ものである。平家部落という出自を持つ女、きよの(浅丘ルリ子)は、彼女が運命的に出会った男・拓司(伊丹一三)を恋し、結婚するも拓司は召集され戦地に赴き、重傷を負うがきよのの必死の看病で命を取りとめる。回復した拓司は再び戦地に送られ、帰らぬ人となる。夫を失った哀しみのあまり、きよのは崖の上から海に身を投げる。戦争が生んだ悲劇であるが、女の一途な情念を浅丘ルリ子が渾身の熱演。彼女の代表作と言えるだろう。蔵原監督はこの辺りから、それまでの反抗的青春路線から重厚な文芸路線・骨太の人間ドラマ路線に舵を切り替えたようである。
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=fmJeMl2pNIA (※ Internet Explorerでは閲覧できません。 Microsoft Edgeでアクセスしてください)
(回想記)
こうやって、蔵原監督の日活時代の代表作5本を並べてみると、なんと全て脚本は山田信夫。山田脚本はこの他にも日活時代の最高作とも言える「憎いあンちくしょう」もあり、まさに最強コンビと言えるだろう。蔵原監督ファンなら満足出来る番組であったが、地味過ぎてかなり厳しい観客数だった。まあこんな渋い番組を実現させた依田さんの熱意には素直に敬意を表したいと思う。
DVD/ビデオソフト/配信作品紹介
※次回プログラム 第17回 「現代女優列伝・PartU」