PART 1 (No.1〜20) |
子供の時からいろんな映画を見てきて、気がつけばもう 50年(!)近くにもなる(う〜ん、そんなになるか・・・ (^
^; )。 映画が誕生してから100年を超え、1昨年には20世紀も終わった・・・。そういう節目のせいか、ここ数年、いろんな著名人の方が『私の選んだ100本の映画』なるものを発表している。小林信彦さん(「2001年映画の旅」文藝春秋社・刊)、双葉十三郎さん(「文藝春秋」および「キネマ旬報」掲載)、など。たしか井上ひさしさんもどこかに発表していたような・・・。 そういうスタンスで、以下私の、生涯忘れられない作品を選んで見ました。一応の基準としては、極力ビデオでなく劇場で見た作品であること(ビデオだけでは、本当にその作品の良さが理解できたとは言えないと思うからです。一部例外はありますが…)、そして時間が経っても風化せず、今見ても面白い作品であること…とし、それらを作られた年代順に並べてみました。 |
No | ベ ス ト 作 品 | ご 参 考 |
1 |
「雄呂血」 ('25) 阪妻プロ/監督:二川 文太郎
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双葉さんのベスト100: (1)「街の手品師」 ('25 監督:村田 実) (2)「雄呂血」 (左参照) (3)「紙人形春の囁き」 ('26 監督:溝口 健二) (4)「狂った一頁」 ('26 監督:衣笠 貞之助) (5)「足にさはった女」 ('26 監督:阿部 豊) (6)「忠次旅日記(3部作)」 ('27 監督:伊藤 大輔) (7)「十字路」 ('28 監督:衣笠 貞之助) (8)「新版大岡政談」 ('28 監督:伊藤 大輔) (9)「浪人街」 ('28 監督:マキノ正博) (10)「生ける人形」 ('29 監督:内田 吐夢) (11)「傘張剣法」 ('29 監督:辻 吉朗) *この時代の作品はあまり見ていない。上のうち、見ているのは「雄呂血」と「狂った一頁」くらいである。ビデオでもほとんど見られない。残念である。 |
2 |
「生れてはみたけれど」 ('32) 松竹/監督:小津 安二郎
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双葉さんのベスト100:
(12)「何が彼女をさうさせたか」 ('30 監督:鈴木 重吉) (13)「瞼の母」 ('31 監督:稲垣 浩) (14)「お誂次郎吉格子」 ('31 監督:伊藤 大輔) (15)「國士無双」 ('32 監督:伊丹 万作) (16)「抱寝の長脇差」 ('32 監督:山中 貞雄) (17)「弥太郎笠」 ('32 監督:稲垣 浩) (18)「熊の八ツ切り事件」 ('32 監督:斎藤寅次郎) (19)「生れてはみたけれど」 (左参照) (20)「伊豆の踊子」 ('33 監督:五所平之助) (21)「出来ごころ」 ('33 監督:小津安二郎) (22)「浮草物語」 ('34 監督:小津安二郎) *上で見ているのは「生れては−」以外では「瞼の母」(千恵蔵主演)「お誂次郎吉格子」。どちらも楽しめる作品。 |
3 |
「丹下左膳餘話・百萬両の壷」 ('35) 日活/監督:山中 貞雄
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双葉さんのベスト100:
(23)「雪之丞変化」 ('35 監督:衣笠貞之助) (24)「妻よ薔薇のやうに」 ('35 監督:成瀬巳喜男) 小林さんのベスト100: (1)「マダムと女房」 ('31 監督:五所平之助) (2)「隣の八重ちゃん」 ('34 監督:島津保次郎) (3)「妻よ薔薇のやうに」 (4)「噂の娘」 ('35 監督:成瀬巳喜男) (5)「丹下左膳餘話・ 百萬両の壷」 (左参照) (6)「河内山宗俊」 ('36 監督:山中 貞雄)
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4 |
「赤西蠣太」 ('36) 日活/監督:伊丹 万作 これも映画サークル上映会で見ている。記録を調べたら、昭和48年大阪毎日ホールで、なんと前述の「生れてはみたけれど」「百萬両の壷」と、これの豪華!3本立で見ている。ビデオ時代とは言え、こうした自主上映会がほとんど無くなったのは残念無念。 |
双葉さんのベスト100:
(25)「人生劇場」 ('36 監督:内田 吐夢) (26)「家族会議」 ('36 監督:島津保次郎) (付記)左で、伊丹万作の、現在見られる多分唯一の作品と書いたが、その後調べたら「巨人伝」(38)もVHSビデオが出ており、私は図書館で借りて見る事が出来た。またドイツとの合作「新しき土」(37)の日本版も監督しており、これもビデオが出ている。参考までに。
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5 |
「有りがたうさん」 ('36) 松竹/監督:清水 宏 清水宏はあまり知られていないが、小津安二郎や伊丹万作と並ぶ名監督だと言われている。近年ようやく再評価の声があがって来た。もっと高く評価されてもいいと思う(なにしろ、小林信彦さんのベスト100に3本も入っているのだ)。私もあんまり見ている方ではないが、「按摩と女」(38)を見ていっぺんに気に入った。トボけた、のどかな味わいながらふとした隙間に人間の心の奥を覗くような鋭い視点が感じられる。戦後は「蜂の巣の子供たち」などの子供を扱った作品が多く、私は「しいのみ学園」「次郎物語」を見ているはずだがほとんど記憶に残っていない。やはり戦前の作品に傑作が多いようだ。 |
双葉さんのベスト100:
(27)「浪華悲歌」 ('36 監督:溝口 健二) (28)「祇園の姉妹」 ('36 監督:溝口 健二) (29)「限りなき前進」 ('37 監督:内田 吐夢) (30)「風の中の子供」 ('37 監督:清水 宏)
小林さんのベスト100:
*'37年の阪東妻三郎主演「血煙高田の馬場」(監督・マキノ正博・稲垣浩)が楽しい。これはトーキーなのだが、音声がかなり痛んでいるという事で、私が劇場で見たのはなんと楽団生演奏に弁士付きという、無声映画スタイル。結構盛り上がって楽しく見れました。こういう体験も貴重である。ちなみに、阪妻が高田の馬場に駆けつける途中で土手の上を猛スピードで走るシーンはCMにも使われた。 |
6 |
「人情紙風船」 ('37) P・C・L/監督:山中 貞雄
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双葉さんのベスト100:
(31)「人情紙風船」 (左参照)
小林さんのベスト100: |
7 |
おしどり
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双葉さんのベスト100:
小林さんのベスト100: |
8 |
「戸田家の兄妹」 ('41) 松竹/監督:小津 安二郎 これはつい最近、名画上映会で見た。戦前の作品だが、年老いた母の面倒を見るのを、兄妹たちが嫌がってタライ回しにする…というストーリーを聞けば分かるように、これは小津の後の代表作「東京物語」の原型とも言える作品である。兄姉たちの母に対する仕打ちに、大陸から帰った次男の佐分利信が猛烈に怒る展開も面白い。ラストは、自分の結婚話にテレた佐分利が、あわてて浜辺に逃げだす…というオチで、ほほえましくも楽しい。軽妙な独特の語り口の中に、日本の家族問題をサラリと提示してみせた、小津を語る上で見逃せない秀作である。 |
双葉さんのベスト100:
(36)「父ありき」 ('42 監督:小津安二郎) 小林さんのベスト100: (19)「簪 (かんざし)」 ('41 監督:清水 宏) (20)「待って居た男」 ('42 監督:マキノ正博) (21)「父ありき」 *山本嘉次郎監督「馬」(41)はビデオで見ている。高峰秀子が可愛らしい。名作という事だが、ビデオではその良さは感じられない。劇場できちんと見たいものである。 *同じく山本嘉次郎「ハワイ・マレー沖海戦」(42)は再映で劇場で見た。円谷英二の特撮が凄い。 |
9 |
「無法松の一生」 ('43) 大映/監督:稲垣 浩
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双葉さんのベスト100:
(37)「姿三四郎」 ('43 監督:黒澤 明) 小林さんのベスト100: (22)「姿三四郎」 (23)「無法松の一生」 (左参照) (24)「雷撃隊出動」 ('44 監督:山本嘉次郎) *黒澤明の「姿三四郎」は無論、何度も見ているし、凄い傑作だと思う。じゃ何故ベストに入れないかと言うと、他に黒澤作品が多過ぎて、黒澤作品ばかりになってしまうので泣く泣くはずしただけの話である。100本に収めるというのは、井上ひさしさんも書いているが、まさに地獄の苦しみ(?)である。 |
10 |
「安城家の舞踏会」 ('47) 松竹/監督:吉村 公三郎
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双葉さんのベスト100:
(38)「安城家の舞踏会」 (左参照) 小林さんのベスト100: (25)「大曾根家の朝」 ('46 監督:木下 恵介) (26)「銀嶺の果て」 ('47 監督:谷口 千吉) (27)「安城家の舞踏会」 (左参照) |
11 |
「酔いどれ天使」 ('48) 東宝/監督:黒澤 明 言うことなし。黒澤明監督と三船敏郎の記念すべき初コンビ作品であり、これもまた戦後の混沌と、そこから湧き上がる希望を描いた、時代の空気を見事に伝える力作である。それを度外視しても、一種のヤクザ映画のハシリ…としてみても面白い。粋がって羽振りを利かせていたヤクザが、落ち目になってくると見向きもされなくなって行き、ついには悪玉ボスの所への殴り込み…というラストを見てもそういった要素が感じられる。ペンキで滑ってこけつまろびつ…という演出はアクションのお手本として、後の渡哲也の「無頼」シリーズにも応用された…というのは私の勝手な思い込み?である。三船敏郎が強烈な印象を残す。あまりに三船が素晴らしいので、本来ヤクザ否定の話だったのがどんどん三船を魅力的に描くようになってしまい、ホンモノのヤクザが三船を見てあこがれた…というエピソードがあるくらいである。 |
小林さんのベスト100: (28)「酔いどれ天使」 (左参照) (29)「王将」 ('48 監督:伊藤 大輔) *黒澤明「わが青春に悔いなし」(46)も見応えがあった。原節子がやはりいい。 *これも黒澤明「素晴らしき日曜日」(47)も好きな作品。入れたいんですけどね。 *黒澤が脚本を書いた「銀嶺の果て」(47・谷口千吉)もダイナミックで見応えあり。三船敏郎のデビュー作。 *他に見た'47年度作品…「長屋紳士録」(小津)、「象を喰った連中」(吉村公三郎)、「素浪人罷通る」(伊藤大輔) |
12 |
「お嬢さん乾杯」 ('49) 松竹/監督:木下 恵介
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小林さんのベスト100: (30)「お嬢さん乾杯」 (左参照) *「王将」(48・伊藤大輔) 阪妻の坂田三吉が絶品。とにかくうまい。阪妻の芸を楽しむだけでも値打ちあり。 *その他の'48年度作品…「誘惑」「わが生涯のかがやける日」共に吉村公三郎監督。この頃の吉村作品は充実している。 |
13 |
「青い山脈」(前・後編) ('49) 東宝/監督:今井 正
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小林さんのベスト100: (31)「青い山脈」 (左参照) *木下恵介監督、阪東妻三郎主演「破れ太鼓」(49)が面白い。晩年の阪妻の名演が見どころ。音楽の木下忠司が出演しているシーンも見逃せない。ギリギリ選外。 *「嫉妬」(49・吉村公三郎) 佐分利信の暴君亭主が嫉妬から自滅して行く。ラストの情けない佐分利が愉快。名作とは言えないが楽しめます。 |
14 |
「晩 春」 ('49) 松竹/監督:小津 安二郎
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小林さんのベスト100: (32)「晩 春」 (左参照) *黒澤明「静かなる決闘」(49)も悪くない。ただ三船の主人公が悩み苦しむシーンが続くのでややシンドイか。 *「ジャコ万と鉄」(49・谷口千吉) 黒澤明との協同脚本。三船と月形龍之介の対決が見どころの男性アクション。 *「悲しき口笛」(49・家城巳代治)歌って踊る可愛らしい美空ひばりが見られる。菅井一郎が好演。 *「痴人の愛」(49・木村恵吾)京マチ子がキュート。彼女の虜になってしまう宇野重吉もいい。 |
15 |
「野良犬」 ('49) 新東宝/監督:黒澤 明 犯罪サスペンス映画のお手本のような名作である。若い刑事にベテラン刑事が付いて、捜査のプロセスを縦軸に、若い刑事が失敗しながらも成長して行く…というドラマを横軸とした展開は、その後の内外のいろんなこの種の映画に応用されている。背景はやはり戦後の混乱期である。ドキュメンタリー的な映像も見事。今もって日本映画史上に残る刑事ドラマの傑作である。黒澤作品で犯罪サスペンス刑事ドラマはこれと「天国と地獄」のたった2本しかないが、もっとこうしたタッチの作品を作って欲しかったと思う。 |
小林さんのベスト100: (33)「野良犬」 (左参照) |
16 |
「羅生門」 ('50) 大映/監督:黒澤 明
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双葉さんのベスト100:
(39)「また逢う日まで」 ('50 監督:今井 正) 小林さんのベスト100: (34)「暴力の街」 ('50 監督:山本 薩夫) *「また逢う日まで」(今井正)。昔見ているのだが、いま一つ印象が薄い。もう一度じっくり見直したい作品である。 *「醜聞」(50)黒澤明の、マスコミ・ゴシップを批判した話題作。やや通俗的になったのが惜しい。山口淑子が美しい。 *「暁の脱走」(50・谷口千吉)こちらも山口淑子がいい。これは後に鈴木清順監督が「春婦伝」のタイトルでリメイクした。 |
17 |
「麦 秋」 ('51) 松竹/監督:小津 安二郎
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双葉さんのベスト100:
(40)「カルメン故郷に帰る」 ('51 監督:木下 恵介) (41)「麦 秋」 (左参照) (42)「め し」 ('51 監督:成瀬巳喜男) 小林さんのベスト100: (35)「麦 秋」 (左参照) *成瀬の「めし」、木下の「カルメン故郷に帰る」共にビデオで見たせいか、も一つ感銘が薄かった。やはり劇場でちゃんと見たいですね。 *「偽れる盛装」(51・吉村公三郎)も、あと一歩で入選。 |
18 |
「西鶴一代女」 ('52) 新東宝/監督:溝口 健二 運命に翻弄される、一人の女の流転の生きざまを描いた溝口健二の傑作。田中絹代が神がかり的な名演技を見せる。当時の国内の評価は意外と低く、キネ旬ベストテンでも9位留まりであった。ベネチア映画祭国際賞を受賞し、国際的に評価が高まって、ようやく日本でも評価されるようになった。『羅生門』と同様、日本映画の本当の良さを、日本人が理解できないというのは悲しい事である。ここでも、菅井一郎、三船敏郎、進藤英太郎をはじめ、役者がみんな素晴らしい。 |
双葉さんのベスト100:
(43)「本日休診」 ('52 監督:渋谷 実) 小林さんのベスト100: (36)「西鶴一代女」 (左参照) (37)「本日休診」 *「白痴」(51・黒澤明)。名画鑑賞会で見たが、途中で眠くなってしまった。正直な所、あまり面白くないですね。 |
19 |
「生きる」 ('52) 東宝/監督:黒澤 明
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小林さんのベスト100: (38)「原爆の子」 ('52 監督:新藤 兼人) (39)「稲 妻」 ('52 監督:成瀬巳喜男) (40)「生きる」 (左参照) *この年、ようやく黒澤明の「虎の尾を踏む男達」公開。まあまあ楽しめました。エノケンがいい。 *黒澤が脚本を書いた「荒木又右衛門・決闘鍵屋の辻」(52・森一生)が思わぬ拾い物です。スリリングな実録チャンバラものの佳作です。おススメ。 |
20 |
「雨月物語」 ('53) 大映/監督:溝口 健二 この時期、次々と海外受賞作を連発していた大映の優秀なスタッフと、『西鶴一代女』で復活した溝口健二が手を結んだだけに、その幽玄の映像美だけでも必見である。撮影・宮川一夫、照明・岡本健一、録音・大谷巌、音楽・早坂文雄、主演:森雅之・京マチ子…と、『羅生門』と同じスタッフ・出演者が結集している点にも注目。特に墨絵のようなグレー・トーンのカメラは秀逸。美術も当時の最高の美術監督・伊藤熹朔(『地獄門』等)。本当に贅沢なスタッフである。ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞したのも当然のような気がする。 |
双葉さんのベスト100:
(44)「あに・いもうと」 ('53 監督:成瀬巳喜男) 小林さんのベスト100: (41)「にごりえ」 ('53 監督:今井 正) (42)「ひめゆりの塔」 ('53 監督:今井 正) |