恒例の、私の選んだ2017年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
選考基準は、2017年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。
順位 | 作 品 名 | 監 督 名 | 採 点 |
1 | あゝ、荒野 前・後編 | 岸 善幸 | |
2 | ラ.ラ.ランド | デイミアン・チャゼル | |
3 | メッセージ | ドゥニ・ビルヌーブ | |
4 | 幼な子われらに生まれ | 三島 有紀子 | |
5 | ダンケルク | クリストファー・ノーラン | |
6 | ベイビー・ドライバー | エドガー・ライト | |
7 | キングコング:髑髏島の巨神 | ジョーダン・ヴォート=ロバーツ | |
8 | ローサは密告された | ブリランテ・メンドーサ | |
9 | 彼女がその名を知らない鳥たち | 白石 和彌 | |
10 | 人生フルーツ | 伏原 健之 | |
11 | ハクソー・リッジ | メル・ギブソン | |
12 | 禅と骨 Zen and Bones | 中村 高寛 | |
13 | 沈黙 -サイレンス- | マーティン・スコセッシ | |
14 | KUBO/クボ 二本の弦の秘密 | トラビス・ナイト | |
15 | ドリーム | セオドア・メルフィ | |
16 | 三度目の殺人 | 是枝 裕和 | |
17 | 愚行録 | 石川 慶 | |
18 | ブレードランナー 2049 | ドゥニ・ビルヌーブ | |
19 | 光 | 大森 立嗣 | |
20 | 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ | 石井 裕也 | |
次 | おじいちゃん、死んじゃったって。 | 森ガキ 侑大 |
個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)
1位 あゝ、荒野 前・後編
凄いものを観た。それに尽きますね。前後編合わせて5時間を超えますが、まったくダレる事なく、食い入るように観てしまいました。圧倒されました。監督2作目でこんな凄い作品を作った岸善幸監督、お見事です。
2位 ラ.ラ.ランド
いやーもう最高。ミュージカル映画大好きの私にはこたえられない素敵な作品ですね。楽しいシーンも沢山あるけれど、ラストにちょっぴりほろ苦さを滲ませた事に、より感動しました。全編に散りばめられた過去の名作へのオマージュも見どころです。
3位 メッセージ
エイリアンものでありながら、人類は宇宙全体にとってどんな存在か、という哲学的なテーマと、人間の人生とは何だろうか、というテーマを巧妙に融合させた、とても奥の深いSF映画の秀作です。ドゥニ・ビルヌーブ監督、どんどん進化していますね。
4位 幼な子われらに生まれ
20年前に書かれたという荒井晴彦の脚本がまず素晴らしいですが、これを現代的にアレンジして、家族の繋がりとは何か、というテーマに深く切り込み、見ごたえあるドラマに仕上げた三島有紀子監督の演出が出色。俳優陣の演技もみな素晴らしい。三島監督の次作にも期待大です。
5位 ダンケルク
33万人の命が救われたダンケルク撤退作戦を、史実を基に3つのエピソードを重層的、多面的に組み合わせたクリストファー・ノーラン監督の秀作。IMAXシアターで観たから余計感動しました。普通のシネスコ版で観たらもう少し順位は下がったかも。
6位 ベイビー・ドライバー
ノリのいい音楽のテンポに乗せた演出が快調。音楽のビートとスピーディなアクション演出を相乗効果的に融合させた、新しいタイプの娯楽映画と言えます。エドガー・ライト監督の最高傑作でしょう。
7位 キングコング:髑髏島の巨神
キングコングを、島の荒ぶる守護神とした設定が秀逸。しかもアクションは見せ場に次ぐ見せ場。こんな威厳があってカッコいいキングコングは、歴代コング映画の中でも初めてでしょう。怪獣映画はこうあるべきというお手本です。
8位 ローサは密告された
フィリピン映画の実力を示した人間ドラマの傑作。理不尽な状況に追い込まれた一家の困難に必死で立ち向かうローサという人物を見事に演じきったジャクリン・ホセという女優が素晴らしい。
9位 彼女がその名を知らない鳥たち
イヤミス系の原作なのに、最後には感動して泣けました。白石和彌監督は1作ごとに違うジャンルに挑戦し、いずれも傑作に仕上げている所は見事です。
10位 人生フルーツ
自然とともに、こつこつと生きる津端修一さん夫妻の生き方、人生を追ったドキュメンタリー。東海テレビの作るドキュメンタリーはいつも見ごたえがあります。
11位 ハクソー・リッジ
戦争の残酷さと、その中で自分の信念を通した男の生きざまを重厚に描いた力作です。メル・ギブソンの監督としての復活もうれしい。
12位 禅と骨 Zen
and Bones
ヘンリ・ミトワという、青年時代は数奇な人生を歩み、老年になってからも破天荒かつエネルギッシュな行動で周囲を振り回す日系ハーフの禅僧の生涯を多面的に追ったドキュメンタリーの傑作。製作に8年もかけた中村高寛監督の執念も凄い。
13位 沈黙
-サイレンス-
遠藤周作の原作は前に篠田正浩監督によって一度映画化されてますが、マーティン・スコセッシ監督はまた違う切り口でこれを格調高い作品に仕上げています。信仰とは何なのか、人間は何にすがって生きるべきなのか。外国映画なのに、日本人が観ても違和感はありません。老齢(75歳)になってもエネルギッシュに映画を作り続けるスコセッシ監督はやはり凄い。
14位 KUBO/クボ
二本の弦の秘密
優雅かつダイナミックで、ストップモーション・アニメなのに滑らかな動きに驚嘆。随所に見られる日本の伝統美のうつくしさにも惚れ惚れします。…しかし上の「沈黙
-サイレンス-」と本作と、日本を舞台に日本人が登場する外国映画の秀作が続くと、日本人としては複雑な心境ですね。
15位 ドリーム
差別を乗り越え、黒人女性(二重の差別)がNASAでその実力を認めさせるまでの実話が、時にユーモラス時に感動的に描かれ見ごたえがあります。題名通り彼女たちは“ドリームガールズ”になったわけですね。そう言えば女性黒人グループが音楽業界で成功して行くお話の「ドリーム・ガールズ」も3人の黒人女性が主人公でした。監督のセオドア・メルフィ、「ヴィンセントが教えてくれたこと」でも注目しましたが、ホップステップジャンプで一気に一流監督の仲間入りですね。今後が楽しみです。
16位 三度目の殺人
是枝裕和監督は脂が乗り切ってますね。ミステリー・タッチのサスペンスドラマという新ジャンルでも軽々秀作を作り上げました。人間の複雑さ、心の闇を丁寧に描いた力作です。
17位 愚行録
映像化が難しい原作を大胆にアレンジした向井康介の脚本もいいですが、これがデビュー作となる石川
慶監督の演出も、新人とは思えないしっかりとした出来で舌を巻きます。凄い新人監督の登場ですね。
18位 ブレードランナー
2049
「メッセージ」を3位にしたのに、またまたドゥニ・ビルヌーブ監督、やってくれました。個人的にはリドリー・スコット監督の前作が、ちょっとハードボイルド・ミステリー・タッチもあって好きなのですが、こちらは一転、静謐なイメージでよりSF的な内容に仕上がっています。それにしても1年に2本も傑作SF映画を発表するなんて、ビルヌーブ監督のパワーも凄い。
19位 光 (大森立嗣監督)
冒頭からの不協和音のような音楽に、これから始まるドラマの重苦しさが予感される巧妙な出だし。お話の方もやはり、過去の大森監督作品と同様重く暗い。それでもパワフルな演出に圧倒されます。そして見事だったのが、「リングサイド☆ストーリー」、「ミックス。」のおチャラけた演技からは想像もつかない瑛太の凄みのある演技。こんないい役者だったのですね。
それにしても、同じ年に同じ題名(「光」。片方は河瀬直美監督)の映画が2本も公開されるとはねぇ。紛らわしい。ベストテン選考でも困るでしょうね。ウディ・アレン作品のように「大森立嗣の光」と監督名を題名に入れるわけには行かないんでしょうかねえ。
20位 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
久々の石井裕也監督。今度も見事な力作を発表しました。都会の片隅で生きる若者たちの心情を情感豊かに繊細に描いて行きます。同名の詩集が原作という事ですが、そこからこんなドラマを紡ぎ出した石井監督(脚本も)、やはり天才だ、と言っておきましょう。
…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。
21位 おじいちゃん、死んじゃったって。
22位 ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦
23位 新感染 ファイナル・エクスプレス
24位 エンドレス・ポエトリー
25位 彼女の人生は間違いじゃない
26位 セールスマン
27位 マンチェスター・バイ・ザ・シー
28位 ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命
29位 彼らが本気で編むときは、
30位 わたしは、ダニエル・ブレイク
・・・・・・・・・・・・・・
まだまだあります。31位以下も順不同で挙げておきます。
X夜に生きる
X光 (河瀬直美監督)
Xパッセンジャー
X草原の河
Xありがとう、トニ・エルドマン
X婚約者の友人
Xザ・コンサルタント
Xはじまりへの旅
X美女と野獣
Xノー・エスケープ 自由への国境
こうやって見てみると、昨年は日本映画が上位の3本以外はやや低調でしたね。特に下位になると洋画ばかり。21位から40位までに日本映画はたった4本。一昨年、日本映画が絶好調だった反動が来たのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・
さてお次は、恒例、クダラないけど楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」。今回は該当する作品があまりなし。3本だけ挙げておきますが、2位はB級とは言えない佳作です。
1位 真夜中のパリでヒャッハー! 昨年の「世界の果てまで−」の前作。こちらも面白い。
2位 ボン・ボヤージュ〜家族旅行は大暴走〜 本年で一番笑えました。
3位 コンビニ・ウォーズ
バイトJK VSミニナチ軍団 まあこっちは正真正銘おバカ映画です。
※ ワーストテンはこちら。