恒例の、私の選んだ2016年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、2016年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
この世界の片隅に 片渕 須直
君の名は。 新海 誠
リップヴァンウインクルの花嫁 岩井 俊二
レヴェナント 蘇えりし者 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ハッピーアワー 濱口 竜介
永い言い訳 西川 美和
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 ジェイ・ローチ
ズートピア バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
湯を沸かすほどの熱い愛 中野 量太
10 シン・ゴジラ (総監督)庵野 秀明
11 ハドソン川の奇跡 クリント・イーストウッド
12 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ギャレス・エドワーズ
13 ストレイト・アウタ・コンプトン F・ゲイリー・グレイ
14 サウルの息子 ネメシュ・ラースロー
15 怒り 李 相日
16 淵に立つ 深田 晃司
17 手紙は憶えている アトム・エゴヤン
18 ちはやふる -上の句- 小泉 徳宏
19 葛城事件 赤堀 雅秋
20 ダゲレオタイプの女 黒沢 清
オーバー・フェンス 山下 敦弘

 

 個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

1位 この世界の片隅に
 文句なしの第1位。以前から応援していた片渕須直監督が、これまでのうっぷんを晴らすかの如く、素晴らしい傑作を作り上げた事を素直に喜びたいですね。

2位 君の名は。
 これも、以前からアニメ・ファンの間では注目されていたけれどマイナーな地位に甘んじていた新海誠監督が、やっとメジャーに躍り出た事が嬉しいですね。1位、2位をアニメが占めてしまいましたが、こんな事、長い私のベスト20でも記憶にありません。

3位 リップヴァンウィンクルの花嫁
 「LOVE LETTER」以来、ずっと応援している岩井俊二監督が、本当に久しぶりに見事な力作を送り出してくれました。応援している監督が、長い低迷を乗り越えて復活を成し遂げた事は、本当に嬉しいですね。…それにしても、ベスト3がすべて日本映画とはね。

4位 レヴェナント 蘇えりし者
 昨年も「バードマン…」という傑作を作ったイニャリトゥ監督、またまた前作を上回る傑作を作り上げました。凄いとした言いようがありません。例年なら1位でもおかしくない出来なのにこの位置。いかに本年度の日本映画のグレードが高いか分かります。

5位 ハッピーアワー
 キネマ旬報等では昨年度のベストテンに入っていますが、当地では2016年正月に公開されましたので本年度の選考対象としました。5時間17分という超長時間を飽きさせない演出力も見事です。それにしても、観た時は間違いなく本年度ベストワンと思ったのにこの位置。1位から5位まで、どれも例年のベストワン級です。

6位 永い言い訳
 西川美和監督のこれまた久しぶりの復活。どうしようもない人間が主人公なのに、なんか愛おしくなって来る、その見事な脚本・演出力を堪能しました。これも、もっと上位にしたかったのですが。

7位 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
 赤狩り旋風の中で、屈服せず、折れる事無く、己を貫き通したトランボの不屈の戦いに涙します。おフザケ・コメディが多かったジェイ・ローチ監督が、こんな力作を作ったとはちょっと信じられないくらいですが、これもトランボという人間の生き方そのものが奇跡を呼んだのかも知れません。なんかまた、いやな空気が漂い始めた今の時代だからこそ、作られるべくして作られた映画と言えるでしょう。

8位 ズートピア
 ディズニー・アニメとバカにしてはいけません。差別と偏見、不寛容に対する問題を提起した、鋭い時代批判精神を盛り込みながら、大人も子供も楽しめるウエルメイドなエンタティンメントになっている、これも奇跡の傑作と言えるでしょう。

9位 湯を沸かすほどの熱い愛
 余命宣告を受けながらも、熱い愛を振り撒き、ポジティブに、元気に人生をまっとうする母の姿を描いている点が出色です。新人中野量太監督、今後が大いに楽しみです。これも例年ならベスト3に入ってもおかしくない出来。

10位 シン・ゴジラ
 長く続いて来たゴジラ・シリーズの1本でありながら、これまでのシリーズとは一線を画す飛び抜けた傑作であり、かつ今の時代を鋭く照射した問題作でもあります。多分ゴジラ映画で初めてキネ旬ベストテンに入るかも知れません。本当に本年度の日本映画は豊作ですね。

11位 ハドソン川の奇跡
   イーストウッド監督、毎回言ってますがあのお歳で軽々と傑作を作り上げてしまう、題名通り奇跡のような名監督ですね。

12位 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
 これも「シン・ゴジラ」同様、長く続く人気娯楽SFシリーズの1本でありながら、今の時代の空気に対する鋭い批判を盛り込んだ、堂々たる力作になっています。本年度は、こうした、過去の常識を打ち破る奇跡のような傑作(「君の名は。」「ズートピア」も)が多数登場した年として記憶に残るかも知れませんね。

13位 ストレイト・アウタ・コンプトン
 ただのピップポップ映画かと思っていたら、どっこい、これまた当時の時代への鋭い批判を盛り込んだ、単なる音楽伝記映画を超えた秀作でありました。青春映画としての一面もあり、いろんな楽しみ方も出来る力作です。

14位 サウルの息子
 ネメシュ・ラースロー監督によるハンガリー映画で、テーマはナチス・ホロコースト。ホロコーストものはこれまで多数作られていますが、ユニークなのは、主人公が収容所の死体処理係という点。その男の行動を追い続ける中で、収容所の蛮行をあからさまにしつつ、彼が息子と思い込んでいる少年の死体埋葬処理を通して、男が人間的心を取り戻して行くという物語。凄いのは、ずっとカメラが男の背中に、まるで張り付いたかのようにピタリ密着したまま追い続けるだけで全編が進んで行く演出です。ラースロー監督はこれがデビュー作というのも凄い。息を呑んで見つめました。傑作です。

15位 怒り
 李相日監督は、今や日本映画界の重鎮とも呼べる名匠になりましたね。難しい題材ですが、堂々たる風格の秀作になっています。これも例年ならもっと上位になってたと思います。

16位 淵に立つ
 深田晃司監督は「ほとりの朔子」が面白かったし、本物のアンドロイドを使ったSF「さようなら」がこれまた不思議な味わいだが心に沁みる佳作でした。そして本作も期待にたがわぬ秀作になっています。小さな金属加工工場を営む古舘寛治の前に現れた浅野忠信が、まるでパゾリーニ監督の「テオレマ」を思わせる不気味な侵入者を怪演。平和だった家庭の中に、不安感がジワジワと醸成されて行く演出が見事です。題名の意味は、人間はいつ落ちるか分からない淵に、常に立たされている存在ではないだろうかという事なのでしょう。筒井真理子も鬼気迫る熱演でした。

17位 手紙は憶えている
 これはやられました。ホロコーストの記憶と執念とも思える復讐、という重苦しいテーマが、ラスト5分でひっくり返る、その鮮やかな展開。戦後71年を経過した今の時代でなければ作れない、タイムリーな作品でしたね。

18位 ちはやふる -上の句-
 小泉徳宏監督も私が昔から応援している俊英です。これまではマイナーな作品ばかりで、実力の割りに過小評価だと思っていたのですが、本作で作品的にも興行的にも成功し、ようやくメジャーに昇格したようで嬉しいですね。今年公開される予定のパート3(サブタイトルは何になるのでしょうか?)も期待大です。小泉監督といい片渕監督といい中野量太監督といい、昨年は私の期待していた監督が次々とメジャーに躍り出たという点で、記念すべき年になったと言えそうです。

19位 葛城事件
 三浦友和の演技がいいですね。時代に取り残されて行くかのような哀しい父親を絶妙の熱演。赤堀監督の前作「その夜の侍」も好きな作品で、本作でまた飛躍、今後がますます楽しみです。

20位 ダゲレオタイプの女
 黒沢清監督がフランスで撮った作品ですが、きっちり黒沢監督らしい作品になっていますね。ダゲレオタイプという古い撮影手法を持って来たアイデアが秀逸。作品のテーマにピッタリ嵌っています。ちょっと溝口の「雨月物語」や、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が101歳で撮った「アンジェリカの微笑」あたりをも思わせる怪談映画の秀作です。

…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。

21位 オーバー・フェンス
22位 聖の青春
23位 SCOOP!
24位 
ザ・ギフト
25位 
日本で一番悪い奴ら
26位 
ラサへの歩き方〜祈りの2400km
27位 
ヘイトフル・エイト
28位 
PK ピーケイ
29位 
映画「聲の形」
30位 
シング・ストリート 未来へのうた

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まだまだあって、特に本年度は傑作揃い。31位以下も順不同で挙げておきます。例年ならベスト20に入ってもおかしくない作品ばかり。もったいない。
 団地
 64(ロクヨン)前編
 イレブン・ミニッツ
 ヴィクトリア
 ヤクザと憲法
 ひそひそ星
 海よりもまだ深く
 ケンとカズ
 あなた、その川を渡らないで
 最愛の子

ベスト20のうち日本映画は11本、21〜40位の中にも日本映画が11本。やはり日本映画が頑張った1年でありました。

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さてお次は、恒例、クダラないけど楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」。今回は少なくて4本だけです。

1位 ソーセージ・パーティ   とにかくくだらない。バカの極み。
2位 世界の果てまでヒャッハー! ちょっと「ハングオーバー」を思い出した。
3位 ミラクル・ニール!モンティ・パイソンは永遠です。
4位 シャークトパスVS狼鯨   ロジャー・コーマン!それ以外言う事なし!

1位は、小規模公開ですが劇場がずっと満員。エロネタ、下品ネタが満載で大笑いしました。こういうくだらない話を、CGアニメで丁寧に作るあたりがさすがですね。2位もバカバカしいお話をPOV的に実に手間かけて作ってます。飛行機から飛び降りて着水し陸に上がるまでをワンカットで撮影したかのように見せている所など唸りました。3位はサイモン・ペッグのおトボケ演技が最高。何より、「モンティ・パイソン」のテリー・ジョーンズ監督久々の復活がファンとしては嬉しいです。4位、ロジャーコーマン製作のまたまた昨年の「シャークトパスVSプテラクーダ」の続編登場。クジラと狼をくっつける、その発想にはただただ唖然。こうなりゃトコトンついて行きます(笑)。

  
   ※ ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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