恒例の、私の選んだ2014年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
選考基準は、2014年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。
順位 | 作 品 名 | 監 督 名 | 採 点 |
1 | そこのみにて光輝く | 呉 美保 | |
2 | ジャージー・ボーイズ | クリント・イーストウッド | |
3 | 0.5ミリ | 安藤 桃子 | |
4 | 祖谷物語 -おくのひと- | 蔦 哲一朗 | |
5 | インターステラー | クリストファー・ノーラン | |
6 | 野のなななのか | 大林 宣彦 | |
7 | アデル、ブルーは熱い色 | アブデラティフ・ケシシュ | |
8 | フューリー | デヴィッド・エアー | |
9 | 私の男 | 熊切 和嘉 | |
10 | ゴーン・ガール | デヴィッド・フィンチャー | |
11 | 小さいおうち | 山田 洋次 | |
12 | 悪魔は誰だ | チョン・グンソプ | |
13 | 6才のボクが、大人になるまで。 | リチャード・リンクレイター | |
14 | ほとりの朔子 | 深田 晃司 | |
15 | 天才スピヴェット | ジャン=ピエール・ジュネ | |
16 | 家路 | 久保田 直 | |
17 | 紙の月 | 吉田 大八 | |
18 | TATSUMI マンガに革命を起こした男 | エリック・クー | |
19 | それでも夜は明ける | スティーヴ・マックィーン | |
20 | 映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん | 高橋 渉 | |
次 | 新しき世界 | パク・フンジョン |
個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)
1位 そこのみにて光輝く
人生を見失っていた男が、社会の底辺で必死に生きている女と出会い、やがて生きる意味を見直して行くまでを、重厚かつ骨太に描いた傑作です。これが女性監督でかつ長編3作目とは思えない、腰の据わった静謐な演出力に唸らされました。米アカデミー外国語映画賞日本代表にも選ばれており、是非とも「おくりびと」に続く受賞を果して欲しいものです(注:先ごろ発表されたノミネートでは、残念ながら候補作5本には入らなかったようです)。
2位 ジャージー・ボーイズ
クリント・イーストウッドはどんなジャンルのものを撮っても、軽々と傑作に仕上げてしまいますね。84歳にもなって、まだ貪欲に新しいジャンルに挑戦し、成功させてしまうなんて、彼以外に誰が出来るでしょうか。もう神がかり的です。次回作ももうすぐ公開。ただただ敬服。
3位 0.5ミリ
これも女性監督の作品。西川美和さんも含めて、最近の女性監督の活躍は目覚ましい。3時間を越える長尺を少しもダレる事なくきちんと見せる演出力も凄い。
4位 祖谷物語 −おくのひと−
これも長尺だけど、見応えがありました。荘厳な自然と対峙し、生きて行く人間のたくましさが描かれた力作です。まったくの自主制作でこれだけの映画を作り上げた、若干29歳の新人監督、蔦哲一朗のエネルギッシュな行動力に敬服。
5位 インターステラー
さすがクリストファー・ノーラン。人類の未来への希望を、壮大な宇宙空間を舞台にスケール感豊かに描いた力作です。ワームホール、相対性理論、5次元空間という宇宙理論科学を、親子の深い愛情に結びつけて物語をまとめる構成も見事に成功しています。
6位 野のなななのか
大林宣彦監督は凄い。前作「この空の花 長岡花火物語」にも感心しましたが、これもそれに勝るとも劣らない感動作です。過去、現在を縦横に行き来し、さまざまな要素をジグソーパズルのように網羅し、ピタリとはめ込む力技に感服しました。76歳をこえてもなお、実験的な作品に取り組むそのパワー、若い監督は是非見習うべきです。
7位 アデル、ブルーは熱い色
これまた3時間に及ぶ長尺。当年度のベストテンは長尺ものが多い(笑)。それでも、女同士の激しい愛とその行方を追って、まったく飽きさせません。セックス・シーンがこれほど感動的に描かれた作品も稀有でしょう。
8位 フューリー
戦車もの戦争映画の傑作。本物のティーガー、シャーマン戦車を使っている事もあって、戦闘シーンの迫力は近年随一であり、全編を通し、戦争の非情な現実、人間を狂気に変える戦争の愚かしさを痛烈に描ききった力作です。デヴィッド・エアー監督は今後も注目です。
9位 私の男
熊切和嘉監督は3年前の「海炭市叙景」も素晴らしかったけれど、本作でさらに進化しましたね。原作の時間軸を根本から組み替えた脚本(宇治田隆史)がいいし、浅野忠信、二階堂ふみ、藤竜也ら主演陣の演技も見事。そして名手近藤龍人さんの撮影がまた見事(1位の「そこのみにて光輝く」も担当しています)。人間の業の深さと悲しさをきっちりと表現した熊切監督は、今後も期待大です。
10位 ゴーン・ガール
女はコワい、とつくづく思わされますね。デヴィッド・フィンチャー監督は相変わらずおぞましいミステリーを撮らせたら当代随一ですね。
11位 小さいおうち
山田洋次監督も、80歳を超えてもなお新しいジャンルに挑戦し、秀作に仕上げる点で、2位のイーストウッド監督と並び、尊敬に値する偉大な監督ですね。今回はミステリー要素を絡めながら、日本の昭和史をきっちりと総括した点がいかにも山田監督らしいですね。これからも映画を作り続けていただく事を期待いたします。
12位 悪魔は誰だ
誘拐サスペンスものの秀作。どんでん返しあり、母の深い愛と哀しみあり。堪能しました。
13位 6才のボクが、大人になるまで。
なんと12年間もかけて、一人の少年が大人にになるまでをそのまま観察した点で、フィクションでもありドキュメンタリーでもある実にユニークな作品です。発想が凄いし、それを成功させてしまうリチャード・リンクレイター監督の根気と粘り強さにも敬服。しかし少年を演じ続けたエラー・コルトレーン君、途中で降りたり、デブになったりしてたら映画が水の泡になるところ。いい青年になってて、観終わってホッとしました(笑)。
14位 ほとりの朔子
一人の少女が、ひと夏の経験を通して大人になって行く姿を瑞々しく描いた秀作です。二階堂ふみがここでも素晴らしい。新鋭・深田晃司監督の丁寧な演出も見応えあり。プロデューサーと助演を担当した杉野希妃さんの名前も、覚えておいて欲しいですね。
15位 天才スピヴェット
「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督のまたまた素晴らしい作品。天才少年スピヴェットの冒険と旅を通して、大人への風刺、家族愛をコミカルに描いた、いかにもジュネ監督らしい秀作です。これを3Dで作るという発想もユニーク。スピヴェット少年の脳内世界を3Dで映像化したシーンは堪りませんねぇ。
16位 家路
3.11後の福島を正面から描いた力作。土地に生きるしかない福島の人たちの哀しみと明日への希望が力強く描かれています。松山ケンイチ、田中裕子、そして安藤サクラ、みんな味わい深い名演です。これが劇映画デビュー作となる新進久保田直監督の今後にも注目です。
17位 紙の月
「八日目の蝉」に続いて、またも角田光代原作による、犯罪を犯す女が主人公の作品です。今回も力作。最初は気弱でおとなしかった主人公・梨花(宮沢りえ)が、横領という行為を通して、次第に強い意志を持って自立し、やがては自分自身を開放して行くまでの物語が、見応えたっぷりに描かれます。非難されるべき犯罪者が主人公なのに、応援したくなるのは演出の冴えによる所が大きいでしょう。さすが「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
(2007)で、たくましく生きる女性をパンチ力ある演出で描いた吉田大八監督ならではです。無論、宮沢りえの熱演も大いに貢献しています。原作にない、梨花の心の内に潜む、天使と悪魔を暗喩した二人の同僚の女(小林聡美と大島優子)を創案した脚本(早船歌江子)も秀逸。
18位 TATSUMI マンガに革命を起こした男
辰巳ヨシヒロという、大人が見るべき、劇画というジャンルを開拓しながらも、これまで忘れられて来た天才漫画家に光を当てたドキュメンタリー的アニメーションの秀作。これが日本でなく外国で作られた事は、日本人として反省すべきでしょう。
19位 それでも夜は明ける
これで自由黒人という存在を初めて知りました。差別の愚劣さ、人間の尊厳と生きる勇気を堂々の正攻法で描いたスティーヴ・マックィーン監督の力強い演出に圧倒されました。もっと上位にしたかったけれど、時間が経つとこんな位置になってしまいました。
20位 映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
これは原恵一監督の「アッパレ!戦国大合戦」以来のしんちゃん映画の秀作ですね。新進高橋渉監督の名前は要チェックです。
…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。
21位 新しき世界 観た時はもっと上位に入れる予定でしたが…。
22位 あいときぼうのまち
23位 プリズナーズ
24位 チョコレートドーナツ
25位 スガラムルディの魔女
26位 るろうに剣心 京都大火編
27位 オオカミは嘘をつく
28位 リアリティのダンス
29位 少女は自転車にのって
30位 ミニスキュル 〜森の小さな仲間たち〜
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まだまだあって、30本でも収まらない。以下31位以下を挙げると…
じんわり心に沁みる「ぼくたちの家族」、「私の、息子」、「ソウォン/願い」、観終わった後でほっこりした気分になれる「怪しい彼女」、「LIFE!」、ちょっと不思議な味わいだけど魅力的な「グランド・ブタペスト・ホテル」、「嗤う分身」、「フランシス・ハ」、そして、楽しかったけど見る前の予想とまるで違った「ベイマックス」。圏外になったのは、例えるなら「トトロ」が途中から「カリオストロ」になったような構成に少し違和感があった為です。
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さてお次は、恒例となった、楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」。今回もベスト5のみです。
1位 アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー
*ロジャー・コーマン健在。それだけで十分。
2位 荒野はつらいよ
〜アリゾナより愛をこめて〜 *下品さの中に心意気あり。
3位 西遊記 はじまりのはじまり *チャウ・シンチー・テイスト満載。
4位 ミスターGO!
*ゴリラをプロ野球選手にする発想が楽しい。
5位 ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う *エドガー・ライトにしてはやや物足りないが…
1位は、他愛ないし過去のコーマン作品の焼き直しなんだけど、それでもここまでおバカに徹したコメディを今もなお製作しているコーマンに敬意を表して。2位は、下品でバカバカしいけれど、ハートがあるのです。3位、「少林サッカー」には及ばないけれど、パート2への期待値も含めて。4位、CGに予算をかけて、こんなおバカな映画を作る韓国映画界も凄い。5位、「ホット・ファズ」に感心したので、やや期待値が高過ぎたか。それでもやっぱり面白い。
※ ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。