恒例の、私の選んだ2013年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、2013年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
はじまりのみち 原 恵一
愛、アムール ミヒャエル・ハネケ
ペコロスの母に会いに行く 森崎 東
かぐや姫の物語 高畑 勲
さよなら渓谷 大森 立嗣
風立ちぬ 宮崎 駿
ゼロ・グラビティ アルフォンソ・キュアロン
ジャンゴ 繋がれざる者 クエンティン・タランティーノ
そして父になる 是枝 裕和
10 ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 アン・リー
11 クラウド・アトラス ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクバ
12 セデック・バレ 太陽旗/虹の橋 ウェイ・ダーション
13 百年の時計 金子 修介
14 凶悪 白石 和彌
15 地獄でなぜ悪い 園 子温
16 ゼロ・ダーク・サーティ キャスリン・ビグロー
17 横道世之介 沖田 修一
18 舟を編む 石井 裕也
19 パシフィック・リム ギレルモ・デル・トロ
20 許されざる者 李 相日
東京家族 山田 洋次

 

 個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

hajimarinomichi1位 はじまりのみち
 原恵一監督の、木下恵介・及びその監督作品に対する熱い思いと深い敬意に感動しました。もう一度、じっくり木下作品を見直してみようという気になりました。それから後に本作を再見すれば、なお感動が深まるかも知れません。個人的には、一生の宝物にしたいような愛着ある作品になりました。

2位 愛、アムール
 夫婦の、強い絆と深い愛情。だが、それが悲劇に繋がってしまう悲しさに胸打たれます。名優お二人の風格漂う演技も素晴らしい。昨年の園子温監督の秀作「希望の国」と、“認知症”、“夫婦愛”、“悲劇の結末”等、似た要素が多いのは偶然でなく、これからの時代、人がみな考えて行かざるを得ないテーマだからでしょう。

3位 ペコロスの母に会いに行く
 こちらも認知症がテーマの作品。しかし上の作品とは正反対に、明るくユーモラスで、生きる勇気が湧いて来るハッピーな作品になっているのが素晴らしい。同時にまたこれは、“記憶”をめぐるファンタジーでもあります。86歳になっても衰えぬ森崎東監督の創作意欲には敬服するしかありません。

4位 かぐや姫の物語
 高畑勲監督が製作に8年もかけた渾身の力作。まるで王朝絵巻物が動き出したような、筆で描いた絵の躍動感にも驚嘆しましたが、かぐや姫の成長を、多感な少女時代、悩みと怒りの間で揺れ動く青春時代を通して自由奔放に描き、かぐや姫をはじめて、血の通った人間として表現する事に成功しています。アニメーションの極北の到達点とでも言える傑作ではないでしょうか。これを上回るアニメは、当分出て来ないのではないかと思えます。

5位 さよなら渓谷
 成瀬巳喜男監督「浮雲」(55)以来、日本映画の一つの流れである、“腐れ縁で結ばれた男女の数奇な運命”の物語を、骨太に描いた秀作。大森立嗣監督のこれまでの最高作だと思います。

6位 風立ちぬ
 空を飛ぶあこがれ、美しい少女への愛、美しい飛行機を作り上げる夢…。宮崎駿アニメの集大成でしょう。風に乗って飛び立つ夢から始まり、草原を吹き抜ける風でエンディングを迎える、まさに“風”の物語。The answer is blowin' in the wind... これが宮崎さんの最後の長編になるのでしょうか。

7位 ゼロ・グラビティ
 CGで描かれた迫真の宇宙空間の映像と、まさにスリリングで息の詰まりそうな描写に圧倒されます。是非3Dで観るべき。が、それだけに留まらず、生きる勇気、命の大切さを訴える、深いテーマを持った作品だと思います。重力(グラビティ)があるからこそ、人間は地に足をつけて生きているのだと改めて思いました。

8位 ジャンゴ 繋がれざる者
 シンドい作品が並ぶ中で、息抜きに思いっきり笑ってスカッとする快作です。マカロニ・ウエスタン好きにはたまりませんね。ただおバカなだけでなく、人種差別批判テーマもしっかり描かれてます。

9位 そして父になる
 父であるとはどういう事なのか。親と子との絆とは…。さまざまな事を考えさせてくれる力作です。是枝監督は、子供を描かせたらうまいですね。

10位 ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日
 これも、3D・CGの美しさに圧倒されます。孤独にさいなまれながらも、必死に生きる人間の素晴らしさ…。「ゼロ・グラビティ」と共通する所が多いですね。

11位 クラウド・アトラス
 観終わって、崇高な気分にさせられる作品ですね。“人間の歴史”についても考えさせられます。何年か後に、評価が高まりそうな予感がします。

12位 セデック・バレ 太陽旗/虹の橋
 台湾の歴史と、日本が過去に行って来た事について深く考えさせられる、壮大なスケールの作品です。主人公を演じた役者(リン・チンタイ)も素晴らしい。一部・二部合わせて4時間半にも及ぶ大長編ですが、ほとんどダレ場がありません。食い入るように見てしまいました。

13位 百年の時計
 ご当地ムービーに留まらず、時間の儚さ、人の運命、生きる事の素晴らしさを感じさせてくれる、素敵な作品。ロケ地に個人的に思い入れがあるので余計泣けました。

14位 凶悪
 これは2013年度の、思いがけない収穫。悪人、それを追及する方、どちらにも内在する狂気を抉り出した問題作。園子温監督の「冷たい熱帯魚」と似た要素もあります。新人・白石和彌監督の今後に注目したいですね。

15位 地獄でなぜ悪い
 その、園監督の(ややこしい(笑))、今度は思いっきり笑える痛快作。“映画”への熱い愛にも感動しました。

16位 ゼロ・ダーク・サーティ
 キャスリン・ビグロー監督は相変わらず凄い。事実をありのままに追っているのですが、ビンラディンを殺したからといって、決して正義の勝利、としては描かれていない所が秀逸。そんな作品を堂々と作り、公開出来るアメリカという国の自由さにも敬服。日本では絶対に作れない種類の作品でしょうね。ジェシカ・チャスティンの最後の涙にも感動しました。

17位 横道世之介
 '80年代、という時代の空気がよく出ています。不器用だけどまっすぐに生きた青春が丁寧に描かれた秀作です。吉高由里子がとても可愛い。沖田修一監督は着実に実力を蓄えて来ましたね。

18位 舟を編む
 “辞書作り”という地味な題材を、スリリングかつ感動的にまとめ上げた演出力は大いに評価。こちらも新進石井裕也監督の今後に期待です。

19位 パシフィック・リム
 怪獣・巨大ロボット好きには応えられませんね。日本の怪獣映画−特に本多猪四郎監督への深い敬意に感動。

20位 許されざる者
 イーストウッド監督の傑作を、日本の風土に違和感なく融和させ、見応えあるドラマに昇華させた李相日監督のアダプテーション力に感服。多少の難点はあれど、誰もが失敗して来た“傑作のリメイク”を見事成功させた点は大いに評価したいですね。

 

…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。

21位 東京家族  観た時はベストに入れようと思ってたのに…。
22位 リンカーン  
23位 
日本の悲劇
24位 
もう一人の息子
25位 
キャプテン・フィリップス
26位 
きっと、うまくいく
27位 LOOPER/ルーパー
28位 飛べ!ダコタ
29位 蠢動 -しゅんどう-
30位 
草原の椅子

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あと、上記以外にも、楽しくて心温まる「アンコール!!」「タイピスト!」「オーム・シャンティ・オーム 恋する輪廻」、じんわり心に沁みる「クロワッサンで朝食を」等の佳作も捨て難い。その他、「ハッシュパピー バスタブ島の少女」「塀の中のジュリアス・シーザー」「42 世界を変えた男」と、例年ならベストに入るような力作も洩れてしまいました。2013年度は本当に傑作、力作揃いでしたね。

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さてお次は、恒例となった、楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」ベストテン…と行きたいところですが、今回も10本集まりませんでしたので、ベスト5だけ発表しておきます。

1位 アイアン・フィスト  *タランティーノ印てんこ盛りのカンフー・オマージュ作
2位 燃えよ!じじいドラゴン 竜虎激闘  *こちらも香港カンフー映画ファンなら泣けます
3位 武器人間    *B級感バリバリのポスターが気に入った
4位 デッド寿司    *やっぱり井口昇監督作は面白い
5位 マッキー     *ハエのダンスに大笑い

1位は、ラッセル・クロウやルーシー・リューなど大物スターが出てるので、決しておバカ映画ではないのですが、アメリカ映画なのにまんま香港カンフー映画を作ってしまったRZAの熱い思いは、まさに最高の映画バカと呼ぶにふさわしいからです。2位も、ブルース・リャン以下、今は老人になったカンフー・スターへのリスペクトに感動しました。3位は、おバカ度では本年一番でしょう。それにしても、第二次大戦を舞台にしたフェイク・ドキュメントという発想には唖然。

  
   ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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