恒例の、私の選んだ2011年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、2011年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
八日目の蝉 成島 出
冷たい熱帯魚 園 子温
アジョシ イ・ジョンボム
英国王のスピーチ トム・フーパー
大鹿村騒動記 阪本 順治
ブラック・スワン ダーレン・アロノフスキー
ダンシング・チャップリン 周防 正行
恋の罪 園 子温
ヒア・アフター クリント・イーストウッド
10 トゥルー・グリット ジョエル&イーサン・コーエン
11 海炭市叙景 熊切 和嘉
12 私を離さないで マーク・ロマネク
13 探偵はBARにいる 橋本 一
14 塔の上のラプンツェル ネイサン・グレノ、バイロン・ハワード
15 リアル・スティール ショーン・レビ
16 マイ・バック・ページ 山下 敦弘
17 宇宙人ポール グレッグ・モットーラ
18 ミッシン:8ミニッツ ダンカン・ジョーンズ
19 僕たちは世界を変えることができない。But, We wanna build a school in Cambodia 深作 健太
20 カリーナの林檎〜チェルノブイリの森 今関 あきよし
1枚のハガキ 新藤 兼人

 

 個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

 

1位 八日目の蝉
 昨年のベストワン「悪人」に続いて、またも本年度のマイ・ベストワンは“逃避行を続ける犯罪者が主人公”の作品になりました。過去と現在を巧みに往還した奥寺佐渡子さんの脚本、成島出監督の丁寧な演出、小豆島の美しい自然を捕えたカメラ、永作博美の母親になり切った渾身の演技、どれも完璧です。

2位 冷たい熱帯魚
 温和な顔の下に潜む人間の狂気を見事に体現したでんでんの演技が出色。園子温監督の力で押し切る演出にも圧倒されました。園監督は、もはや日本映画の枠を超えた高みに達した感があります。どこまで昇り詰めるか、とことん付き合わせていただきます。

3位 アジョシ
 またまた韓国映画界から、強烈な個性を持った新人監督の登場です。ただのバイオレンスだけでなく、人間同士の心の交流もきちんと描いている点も見事です。それにしても、次々とパワフルな演出力を持った新人監督が登場する韓国映画界を見ていると、日本映画は大丈夫かな、と不安になってしまいます。

4位 英国王のスピーチ
 コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュの演技合戦も楽しいけれど、ジョージ6世が難局において、ブレることなく国を率いて行こうと決意するるラストは、今の日本の状況を眺むるに多いに考えさせられます。それを差引いても、エンタティンメントとしても、人間ドラマとしても、完璧な出来の傑作ですね。

5位 大鹿村騒動記
 今の時代に珍しい、人間群像喜劇の秀作。こういう楽しい映画がもっと作られるべきですね。多くの映画で私たちを楽しませてくれた原田芳雄さん、安らかに…。

6位 ブラック・スワン
 ナタリー・ポートマンが素晴らしい。アロノフスキー演出はどんどん凄くなって来ています。

7位 ダンシング・チャップリン
 チャップリン大好きの私としては、点が甘くなってしまいます。ルイジ・ボニーノのダンスはもはや重要無形文化財ですね。手元において何度も繰り返し見たくなる作品です。

8位 恋の罪
 園子温監督作品がもう1本。1年に2本も、こんなヘヴィな作品が作れる、そのエネルギッシュなパワーにはひたすら平伏。

9位 ヒア・アフター
 80歳を超えても、常に新しいジャンルに挑戦し、軽々水準作を作ってしまうクリント・イーストウッド監督、やはり凄い。正月の新作も楽しみです。

10位 トゥルー・グリット
 コーエン兄弟もまた、新しいジャンルに挑戦し続ける異才ですね。オリジナルも好きですが、本作はそれを超えましたね。賛美歌「主の御手に頼る日は」がいつまでも耳に残ります。

11位 海炭市叙景
 熊切和嘉監督は、本作で見事一流監督の仲間入りを果たしましたね。厳しく、優しく人間の営みを見守る視線に泣かされました。今の時代に、作られるべくして作られた秀作です。

12位 わたしを離さないで
 批評にも書きましたが、東北大震災を経過した今の時代に、原作者が打ち出そうとしたテーマを、今一度じっくり見直す必要がありそうです。奥は深いと思います。

13位 探偵はBARにいる
 こちらは楽しい探偵映画の快作。大泉洋を、初めていい役者だと思いました(笑)。「カリオストロの城」を意識した橋本一演出も快調。パート2も楽しみです。

14位 塔の上のラプンツェル
 この所ディズニー・アニメが好調です。テンポ、ギャグ、笑い、そして感動、と、まさにこれぞディズニー・アニメ。製作総指揮を担当したジョン・ラセターの功績は大ですね。ランタンが宙に舞うシーンの美しさは筆舌に尽くしがたい。

15位 リアル・スティール
 スピルバーグ率いるドリームワークス作品ですが、配給はこちらもディズニー。父と子のが次第に回復すると同時に、失った栄光と夢を取り戻して行くプロセスが丁寧に描かれた、SFでありながらも古典的な王道物語になっているのがいいですね。期せずして昨年の漢字“絆”を象徴する秀作です。

16位 マイ・バック・ページ
 1970年代の、反体制運動が瓦解して行った時代の空気をきちんと捉えた力作です。原作の不足点を絶妙に補った向井康介の脚本の見事さが光ります。

17位 宇宙人ポール
 イギリス人の目から、アメリカをシニカルに辛辣に描きつつも、見事なスピルバーグ・オマージュ作品になっているのが秀逸。ユルいコメディなのに、最後は泣けます。ある意味スゴい作品です。

18位 ミッション:8ミニッツ
 こちらもイギリス出身のダンカン・ジョーンズ監督の、SFであり、時間サスペンスであり、かつ奇跡のファンタジー的味わいも併せ持つ、不思議な魅力を持った作品です。

19位 僕たちは世界を変えることができない。But, We wanna build a school in Cambodia
 ボランティア活動を通して、主人公が世界を知り、世の中の不条理を知り、また自分自身をも見つめ直し、人間的に成長して行く、爽やかな味わいの力作です。深作健太監督もまた本作を体験して、大きく成長した事でしょう。深作監督が今後どのような映画作りをして行くのか、その先にも大いに興味が湧いて来ます。

20位 カリーナの林檎〜チェルノブイリの森
 題名からも想像されるように、チェルノブイリ原発事故をテーマにした作品。今関あきよし監督が、「少女カリーナに捧ぐ」として2004年に一度完成させたものの、自身のトラブル等で公開の目処が立たずにいた作品を再編集し、ようやく2011年に劇場公開となったものですが、期せずして福島原発事故が起き、タイムリーな作品になってしまいました。
 原発事故が、いかに人間の幸福を、子供の未来を奪って行くか、という重いテーマを、声高にでなく、少女のあどけない日常生活を淡々と描く事によって静かに訴える演出が見事に成功しています。最後は涙が止りませんでした。是非多くの人に見てもらいたいと思います。

 

…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます。

21位 1枚のハガキ      もっと上位にしたかったけれど。「裸の島」オマージュは余計でした。
22位 ツリー・オブ・ライフ  愛着ある作品ですけど、洩れてしまいました。
23位 マネーボール
24位 この愛のために撃て
25位 ゴースト・ライター
26位 猿の惑星:創世記(ジェネシス)
27位 エッセンシャル・キリング
28位 スマグラー おまえの未来を運べ
29位 イリュージョニスト
30位 サンザシの樹の下で

 
――今年も1位は日本映画が獲得。2位も邦画「冷たい熱帯魚」が僅差でつけてますが、3位以下は外国映画がやや優勢。それでも20位までは邦洋ちょうど半分づつ分け合ってます。が、21〜30位は10本中8本が洋画でした。震災の影響が出て来ているのかも知れません。昨年は30本中4本あった邦画の時代劇が、今年はゼロというのも寂しいですね。

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さてお次は、恒例となった、楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」ベストテンです。久しぶりに10本が集まりました。

 1位 ムカデ人間
 2位 宇宙人ポール
 3位 スーパー!
 4位 ピラニア 3D
 5位 ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える
 6位 大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇
 7位 電人ザボーガー
 8位 スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団
 9位 アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!
10位 ガリバー旅行記

――栄えある1位は、「ムカデ人間」に決定。まさしく究極のバカ映画! 続編も待機しているようで、これも楽しみ。2位はベスト20に入れたほどの傑作ですが、でもこっちにも入れたくなっちゃう愛すべき作品です。3、4位も文句なし。5位は昨年度のここでのベストワンの続編。インパクトは薄れたけど、やっぱり楽しい。

  
   ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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