恒例の、私の選んだ2010年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、2010年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
悪人 李 相日
息もできない ヤン・イクチュン
オーケストラ! ラデュ・ミヘイレアニュ
インビクタス/負けざる者たち クリント・イーストウッド
トイ・ストーリー3 リー・アンクリッチ
最後の忠臣蔵 杉田 成道
ハート・ロッカー キャスリン・ビグロー
キャタピラー 若松 孝二
今度は愛妻家 行定 勲
10 ヘヴンズ ストーリー 瀬々 敬久
11 冬の小鳥 ウニー・ルコント
12 第9地区 ニール・ブロムカンプ
13 カラフル 原 恵一
14 十三人の刺客 三池 崇史
15 孤高のメス 成島 出
16 告白 中島 哲也
17 春との旅 小林 政広
18 川の底からこんにちは 石井 裕也
19 武士の家計簿 森田 芳光
20 カティンの森 アンジェイ・ワイダ
おとうと 山田 洋次

 

 個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

 

1位 悪人
 文句なしのベストワン。殺人犯の妻夫木だけでなく、さまざまな周辺の人物やマスコミ等の行動を通して、現代に蔓延する悪意を多面的に炙り出した脚本・演出が見事。まさに時代を照射した傑作です。李相日監督の次回作も目が離せません。

2位 息もできない
 韓国映画界から、また新しい才能が輩出しました。粗暴で荒れまくるが、実は内面に人間的な弱さと優しさを秘めた主人公の造型が出色。まさに息もできないほどの感銘を受けました。

3位 オーケストラ!
 ダメチームが、最後に大逆転勝利を収めるという、娯楽映画の王道を行くエンタティンメント作品でありつつ、さまざまな社会的、政治的テーマをも自在に網羅した、なんとも盛りだくさんな内容の傑作。ラストの12分間の感動は今も忘れられません。観終わって、本年一番号泣した作品です。

4位 インビクタス/負けざる者たち
 国をどうまとめて行くのか。いがみ合う人たちをどう融和し、力を合わせて行くべきか…。重いテーマを、爽快なスポーツ・エンタティンメントとして仕上げ、深い感動を呼ぶという離れ業をやってのけたイーストウッドは、いつもながら凄い。迷走を続ける我が国の政治家諸氏(特にトップリーダー)に、是非観ていただきたい作品でもあります。

5位 トイ・ストーリー3
 人間は、大人になればどうしても捨てて行かざるを得ないものがある。その捨てられる側の悲しみをきちんと描いた点でも、これは奥深いテーマを持った秀作です。3部作を通して、1本も駄作がない稀有なシリーズと言えましょう。

6位 最後の忠臣蔵
 年末ギリギリに飛び込んだ、本年屈指の力作。武士の使命と、生きざま、その狭間で揺れ動く人間模様を描いて出色の感動ドラマとなりました。期待していなかった分、意外な拾い物…と言っては失礼でしょうか。ベテラン脚本家・田中陽造は今年もいい仕事をしてくれました。杉田成道監督、今まであまり評価していなかったのですが、楷書のような丁寧な演出ぶりに唸りました。お見事です。

7位 ハート・ロッカー
 爆発物処理に取り付かれた主人公の造型が出色。サスペンスフルな展開の中に、戦争の狂気、矛盾を描き切ったキャスリン・ビグローの絶妙な演出が光ります。

8位 キャタピラー
 単なる反戦映画ではなく、国家や権威を笑い飛ばすブラック・ユーモア作品として楽しめました。若松監督の一貫してブレない製作姿勢にも敬意を表します。

9位 今度は愛妻家
 行定勲監督の、久々の復活に乾杯。夫婦とは何なのか、妻とは、夫とはどういう存在なのか…。側にいなくなって、初めてその存在の有難さが分かる、その事をしみじみ噛みしめたくなる、素敵な映画でした。

10位 ヘヴンズ・ストーリー
 4時間半もある長い映画ですが、身じろぎもせず画面を眺めていました。家族を殺され、残された人たちの地獄の苦しみはどうすれば癒されるのか。復讐はその苦しみを解決する答になりうるのか。魂の彷徨の末に、人はどこに到達しようとしているのか…。重い問いかけを、映画は我々観客に投げかけて来ます。本年一番、考えさせられた映画でした。

11位 冬の小鳥
 悲しい運命を背負った小さな少女の、それでも必死に新しい人生を生きて行く姿に泣かされます。9歳のジニを演じたキム・セロンちゃんの名演技にも1票。

12位 第9地区
 難民エイリアンという着想が秀逸。随所に仕込まれた現代文明批判も鋭い。大型新人、ニール・ブロムカンプの次回作が楽しみです。

13位 カラフル
 「クレしん」を卒業しても、原恵一監督、相変わらずクオリティの高い作品を次々生み出してくれます。毎回、作る度に違うタイプの作品にチャレンジする姿勢にも頭が下がります。まさに“カラフル”な原恵一ワールドにどっぷり浸らせていただきました。

14位 十三人の刺客
 オリジナルは時代劇史上に残る傑作ですが、果敢にチャレンジし、オリジナルとはまた違った味わいの秀作に仕上げた点は大いに評価に値します。時代劇史上かつてない強烈な悪・松平斉韶を造形した脚本・演出のアイデアにも唸りましたが、その期待に応えた稲垣吾郎もお見事です。

15位 孤高のメス
 医療制度への批判や、命の尊さを描きつつも、全体としてウエルメイドなエンタティンメントに仕上げた脚本・演出のプロの仕事ぶりに堪能しました。

16位 告白
 これまでの極彩色に塗りたくられた作風から一転、自然光を使ったドキュメンタルな映像の中に、現代の底知れぬ悪意、人間のエゴを鮮烈に切り取った中島哲也監督の演出に唸りました。やや難があるのは、森口悠子がどうやって犯人を割り出したのかがあいまいな点。そこがちょっとだけ減点です。

17位 春との旅
 脚本が周到に練られています。仲代達矢が、「約150本の出演作品の中で、5本の指に入る脚本」と言ったのも納得です。いろんな謎が随所に配置され、見終わった時に、その謎の正体が浮かび上がって来て、改めて感銘を受けます(詳細は私の作品評参照)。意外とあなどれない力作だと思います。

18位 川の底からこんにちは
 満島ひかりは相変わらずうまい。“中の下”から開き直って、ポジティブに変身して行くプロセスが爽快。元気になれる映画であると言えましょう。あの“社歌”には爆笑しました。

19位 武士の家計簿
 学術書から着想を得て、心温まる家族の物語に再構成した脚本(柏田道夫)が見事。ほとんど脚本の勝利と言えます。森田芳光は、余計なギミックを入れずにそのまま演出したのが良かった(笑)のでしょうね。

20位 カティンの森
 アンジェイ・ワイダ監督の50年にもわたる執念に心打たれます。心して見るべき秀作でしょう。

 
…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。

21位 おとうと
22位 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
23位 
インセプション
24位 
パーマネント野ばら

25位
 ヒックとドラゴン
26位 リトル・ランボーズ
27位 
オカンの嫁入り
28位 
必死剣 鳥刺し

29位 
借りぐらしのアリエッティ
30位 
モンガに散る 

――1位は日本映画が獲得しましたが、2〜5位を外国映画が独占。つまり邦画は2位以下が弱いというわけです。それでも20位内では日本映画は12本がランクインし、本数的には健闘したと言えます。30位まででは、日本映画17本、外国映画13本と、同様に頑張ってます。昨年は外国映画が30位以内で19本もあった事を思うと、本年度はその雪辱を果たしたと言えるでしょう。時代劇の秀作が多かった事も、日本映画躍進の原動力になった気がします。さて、今年はどうなりますやら。

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さて、今年も恒例、楽しいおバカB級映画を集めた、「愛すべきB級映画大賞」を発表いたします。1位は本当はベスト20に入れたかったくらいの傑作なのですが。

1位 ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
2位 キック・アス
3位 ゾンビランド
4位 ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲 
5位 マチェーテ

  
   ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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