恒例の、私の選んだ2009年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
 選考基準は、2009年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。

順位 作  品  名 監  督  名 採 点
グラン・トリノ クリント・イーストウッド
愛のむきだし 園 子温
母なる証明 ポン・ジュノ
剱岳 点の記 木村 大作
チェンジリング クリント・イーストウッド
マイマイ新子と千年の魔法 片渕 須直
アバター ジェームズ・キャメロン
チェイサー ナ・ホンジン
ベンジャミン・バトン −数奇な人生− デヴィッド・フィンチャー
10 ディア・ドクター 西川 美和
11 3時10分、決断のとき ジェームズ・マンゴールド
12 レスラー ダーレン・アロノフスキー
13 ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜 根岸 吉太郎
14 スラムドッグ$ミリオネア ダニー・ボイル
15 扉をたたく人 トム・マッカーシー
16 空気人形 是枝 裕和
17 カールじいさんの空飛ぶ家 ピート・ドクター
18 サマー・ウォーズ 細田 守
19 イングロリアス・バスターズ クエンティン・タランティーノ
20 レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで サム・メンデス
人生に乾杯! ガーボル・ロホニ

 

 個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)

 

1位 グラン・トリノ
 文句なしですね。男とはどう生き、どう死ぬべきかを描いた、イーストウッド流、男の美学にシビれ、涙しました。2009年のみならず、00年代を通しての最高傑作です。

2位 愛のむきだし
 これも強烈でした。4時間近く、ハイテンションで持続する園子温監督の演出パワーに声もなく魅入りました。満島ひかりの体当たり演技も素晴らしい。終ってもしばらく席が立てませんでした。

3位 母なる証明
 これまた強烈。ポン・ジュノ監督、「殺人の追憶」以来、作る作品がすべて傑作ばかりというのも凄い。観る度に打ちのめされます。イーストウッドと並んで、00年代を駆け抜けた天才だと言えるでしょう。脱帽です。

4位 劔岳 点の記
 こちらは一転、荘厳な映像の美しさに酔わされる名品。木村大作という、本物にこだわり続けるガチンコ・キャメラマンの男の生き様そのもののような映画です。大画面のスクリーンでこそ観るべき作品ですね。

5位 チェンジリング
 もう1本、イーストウッドの傑作。子を思い続ける母の強さに胸が熱くなります。アンジェリーナ・ジョリーから、こんなに静かでかつ力強い母親の怒りと悲しみの演技を引き出したイーストウッドの演出(演技指導)力には、心から敬服せざるを得ません。

6位 マイマイ新子と千年の魔法
 年末ギリギリにようやく観る事が出来た秀作アニメです。こういう秀作をきちんと宣伝し、多くの人に見せる努力を払わない配給会社は怠慢だ!

7位 アバター
 3DCG映像の見事さに圧倒されます。大画面で観ないとこの映画の凄さは伝わらないでしょう。ただ、3Dメガネはもっと改良の余地あり。軽くて明るくて疲れないメガネ(あるいはメガネなしでの3D上映)が開発されたら、もっとこの映画の素晴らしさが多くの人に伝わるでしょうに。それが残念。

8位 チェイサー
 韓国映画は次々新人で凄い才能を持った人が出て来ています。それがまた、本国では大ヒットするという現実も羨ましい。映画を堪能しながらも、日本映画の将来が不安になってしまったのも事実です。

9位 ベンジャミン・バトン -数奇な人生-
 奇想天外なお話を、落ち着いた風格ある演出で描いて、人生とは何なのかを考えさせてくれる力作です。デヴィッド・フィンチャーはもう名匠の域に到達したようですね。

10位 ディア・ドクター
 「ゆれる」でも真実と虚構の狭間を絶妙のストーリー・テリングで描いた西川美和監督。本作もまたニセ物と本物の境界とは何処にあるのかを問いかけ、人間そのものを鋭く見つめる姿勢は揺るぎありません。日本映画界で今一番安定感のある監督ではないでしょうか。

11位 3時10分、決断のとき
 久々に登場した西部劇の傑作。主人公の男の生き様と決断に泣けました。そしてラッセル・クロウがいい。任侠映画にも似た、男同士の心意気に惚れる映画でもあります。

12位 レスラー
 これもまた、不器用な生き方しか出来ない男の心意気に泣ける映画です。ミッキー・ロークの復活に拍手を。

13位 ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜 (監督:根岸 吉太郎)
 ベテラン、根岸吉太郎監督と、これまたベテラン脚本家、田中陽造による、これぞプロの作った大人の映画。数本の原作短編を巧みに撚り合わせて構築した田中のシナリオが素晴らしい。最近、日本映画の脚本の酷さにうんざりしていただけに、こういう風格あるシナリオに接するとホッとします。浅野忠信、松たか子の主役二人の演技も出色。まさに文学的香りのする、本物の映画です。

14位 スラムドッグ$ミリオネア
 夢のおとぎ話を、説得力あるスリリングな見せ場のある映画に構築したサイモン・ビューフォイ(「フル・モンティ」)の脚本が出色。ラストのミュージカル・シーンも素敵。こういう低予算でノースターの地味な映画にアカデミー賞を与えるアメリカ映画界はまだまだ捨てたもんじゃないですね。

15位 扉をたたく人
 これも、地味だけれど、いろんな事を考えさせてくれる素敵な映画です。CG超大作がある一方で、こうした地味な映画が作られ、徐々に観客を集めてスマッシュ・ヒットとなるアメリカという国の懐の深さ、観客のアンテナの鋭さにも感心する事しきりです。

16位 空気人形
 ペ・ドゥナが素晴らしい。ラブドールという危なっかしい題材を、格調ある演出で見事な映画に仕立て上げた是枝監督の仕事ぶりが光ります。これもまた、プロの仕事と言えましょう。

17位 カールじいさんの空飛ぶ家
 ピクサーのCGアニメはいつもレベルが高いですが、本作も、老いるとは、夢を追い求める事とは、という深いテーマを内包しながら、後半は楽しい冒険エンタティンメントに持って行って、ちゃんと観客を楽しませてくれます。冒頭10分のセリフのない、夫婦の人生ドラマが特に見事で、後半のアクションに違和感を感じる人もいるようですが、あの冒頭の調子で進んだら地味で楽しくないお話になったでしょう。その、観客をとことん楽しませるサービス精神を支持したいと思います。

18位 サマーウォーズ (監督:細田 守)
 田舎ののどかな風物と、ヴァーチャル・ネットワーク上のバトルが交差するという難しい展開を、ちゃんとパワフルなエンタティンメントとして成立させた細田守の手腕は相変わらず冴えています。「アバター」が観た時にはピンと来ませんでしたが、今観たらよく分かります(笑)。お婆ちゃんの声を担当した富司純子の凛とした台詞回しに花札の乱舞が、緋牡丹のお竜さんを思い出させておかしかった。ただ個人的には、「時をかける少女」ほどには、観終わった後まで心に残る作品にはならなかったようです。

19位 イングロリアス・バスターズ  (監督:クエンティン・タランティーノ)
 いかにもタランティーノらしい、さまざまな戦争映画からの引用、音楽はマカロニ西部劇や「アラモ」の主題歌まで使用し、史実などくそくらえとばかりに展開される盛大なホラ話にはいつもながら大笑い。そして、可燃性のフィルムの山を使った爆破テロには、“映画の復讐”という主題が浮かび上がります。映画がとことん好きな男による、映画愛に溢れた映画の為の映画と言えるでしょう。

20位 レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで  (監督:サム・メンデス)
 夫婦とは、人生とは、と考えさせられる力作。ケイト・ウィンスレットの役者としての成長がめざましい。…が、時間が経って、今思い起こすと、あまり印象に残っていないのは何故でしょうか。

 
…さて、以上がベスト20ですが、例によってまだまだ入れたい作品が目白押しですので、もう10本、ベスト30まで紹介しておきます(タイトルのみ)。

21位 人生に乾杯!
22位 
重力ピエロ
23位 
のんちゃんのり弁
24位 
チョコレート・ファイター
25位 
牛の鈴音          (監督:イ・チョンニョル)
26位
 誰も守ってくれない
27位 
チェ 39歳 別れの手紙
 (監督:スティーブン・ソダーバーグ)
28位 
ウルトラミラクルラブストーリー
29位 
パイレーツ・ロック    (監督:リチャード・カーティス)
30位 
愛を読むひと     
  (監督:スティーブン・ダルドリー)

――邦洋のシェアでは、20位内に日本映画は7本、外国映画は13本と、日本映画が苦戦。30位まででも、日本映画11本、外国映画19本と、ますます差は開いています。日本映画は、興行面では頑張っていても、質的には外国映画にかなり遅れをとっているのが実態です。今年は挽回していただきたいものです。

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さて、昨年は、腹を抱えて笑った、楽しいおバカB級映画を集めて、「愛すべきB級映画大賞」ベストテンを発表しましたが、本年度は残念ながら10本も集まりませんでしたので、ベスト3だけ発表しておきます。

1位 ロボゲイシャ
2位 ヤッターマン   (監督:三池 崇史)
3位 モンスターVSエイリアン   *作品そのものはB級じゃないんですが、昔のB級SF映画へのオマージュが満載なのが楽しい。 

  
   ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。

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