恒例の、2009年度の私の選んだワーストテンを発表します。例年の通り、単に出来の悪い作品よりも、期待している作家がその期待を大きく裏切った場合に、厳しく採点しているケースがあります。対象期間はベスト20と同様、'2009年1月〜12月大阪公開作品。なお、ベスト20と同様、アンダーライン付の作品名なら、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
しんぼる 松本 人志
スノープリンス 禁じられた恋のメロディ 松岡 錠司
山形スクリーム 竹中 直人
MW −ムウ− 岩本 仁志
TAJOMARU 中野 裕之
笑う警官 角川 春樹
アサルトガールズ 押井 守
GOEMON 紀里谷 和明
7つの贈り物 ガブリエレ・ムッチーノ
10 アマルフィ 女神の報酬 西谷 弘
ROOKIES −卒業− 平川 雄一朗

 
 1位の「しんぼる」は文句なし。作品の出来の酷さもさることながら、いくら人気者が監督したからといって、こういった観客をおきざりにする駄作が、メジャー系で堂々全国公開されてしまい、そこそこ観客動員してしまう現状にも、暗澹たる気持にならざるを得ない。

 2位のスノープリンス 禁じられた恋のメロディも酷い出来だが、「おくりびと」という傑作の脚本を手掛け、これからの日本映画の希望の星、と期待していた小山薫堂が、一転してこんなスカスカの脚本を書いたという事にも大いに失望した。「映画秘宝」で“最低作品賞”を受賞したのも当然だが、それでも私の怒りは収まらない。「おくりびと」に感動して、その名前だけでわざわざ映画館に出向いた、私も含めた多くの映画ファンを失望させた罪は大きい。猛反省を促したい。

 3位の「山形スクリーム」も、失望度合いでは2位といい勝負である。竹中直人は監督としては、「無能の人」以来、「東京日和」、「連弾」と、丁寧な佳作を連発し、私も評価していただけに、ことの他ガッカリである。俳優としては達者なコメディ演技ぶりを見せているが、監督としてはコメディは向いていないようだ。次の監督作は是非、前述のような、丁寧でしっとりした作風に戻って欲しい。

 4位「MW −ムウ−」は何とも言いようがない。手塚治虫があの作品に込めた狙いが全然判っていない。あの作品を今のこの時代に映画化するなら、作者が企図した、時代に対する深い絶望と、人間の心の闇に切り込まなければいけない。その覚悟がないなら映画化すべきではない。監督はテレビディレクターのようだが、映画としての実績がまったくないテレビディレクターに、こんな難しいテーマのある作品を安易に監督させないで欲しい。手塚治虫が地下で泣いている事だろう。

 5位「TAJOMARU」、8位「GOEMON」。時代劇なのになんでアルファベット題名にする?「GOEMON」、ゲームみたいなケバいビジュアル、どぎついカラー、ありゃ何ですかね。若い人向けに新しさを強調する為?バカですね。かえって作品が薄っぺらくなってる事に気付いていない。判り易く言えば、西部劇で派手派手衣裳だとかカラフルな画面作りして、西部劇ファンが喜ぶか?「3時10分、決断のとき」が面白かったのは、きちんと西部劇の約束ごとを押さえ、古い西部劇の伝統を守っているからなのである。それにしても、「REDSHADOW 赤影」や「CASSHERN」などの出来損ないを作った中野裕之や紀里谷和明が、性懲りもなく同じ失敗を繰り返してるのには、ほとほと愛想が尽きる。

 6位の「笑う警官」。佐々木譲の原作はなかなか読み応えがあった(当初刊行時の題名は「うたう警官」)。きちんと作れば、似た題材の「ガントレット」(イーストウッド監督)、や「16ブロック」並みのスリリングな秀作になったかも知れない。が、角川春樹の演出はモタつくは、無関係なジャズ演奏シーンを入れるは、人物設定をいじってしまうは、あげくにラストで唐突に笑う警官が登場する(笑)はの支離滅裂の珍作になってしまった。“笑う”とは、別の意味が隠されてると思ったのだが、それだったら元の「うたう警官」の題名だったら本当に警官が歌い出すのか、と突っ込んだ人がいたのにはこっちも笑った。これで当たると思っていた春樹さん、本当に大丈夫だろうか。「TAJOMARU」の山本又一朗プロデューサーといい、かつて私たち映画ファンの心を熱くさせてくれた名プロデューサーたちの、最近の迷走ぶりには悲しくなってしまう。もうこれ以上期待を裏切らないで欲しい。角川春樹は当たらなければ引退すると言ったそうだが、もう勝手にしてくれと言いたい。

 7位「アサルトガールズ」もつらい。押井守は、アニメには力作が多いのに、実写作品だと急につまらなくなる。冒頭の長い演説もまったく不要。ちゃんとしたドラマを作って欲しい。押井は「アバター」を観て「笑えるほど完敗だった」と言ったそうだが、笑ってる場合か。そもそも予算の問題じゃないだろう。観客が共鳴し、興奮し、感動するエンタティンメントを作ろう、とする心構えの問題だと思うのだが。

 9位、やっと洋画の「7つの贈り物」。作者たち、何か勘違いしてる。“贖罪”とはどうする事なのかは、クリント・イーストウッドの諸作を観て、じっくりと研究して欲しい。ラストのクラゲには、これはコメディかと思ってしまった。

 10位の「アマルフィ 女神の報酬」のダメさは作品評を参照。

 次点の「ROOKIES −卒業−」も酷い。そもそもテレビドラマを見なければさっぱり分からないような映画は作るべきでない。映画にするなら、もう一度最初から描き直しても、2時間もあれば十分だろう。ダラダラしてるだけで全然面白くない。ラストの別れのシーンでは、席を蹴って帰りたくなった。こんな凡作が、日本映画の興行収入第1位だというのだから何をか言わんや。嗚呼…

 
 さて、11本ワースト作品を選んだが、今年はまだテンに入れたいワースト作品は一杯ある。題名だけ挙げておく。

 「感染列島」「ハルフウェイ」「ラスト・ブラッド」「真夏のオリオン」「カムイ外伝」「鈍獣」「さまよう刃」「曲がれ!スプーン」

(なお、他で槍玉に挙がっている「20世紀少年・第2章/第3章」「蟹工船」「レインフォール/雨の牙」「群青 愛が沈んだ海の色」等は、幸いにして観ていない。これらも観てれば多分ワーストに入れる可能性が高いだろう。裏ワーストテンも作りたいくらいだ(笑))

 例年ならテンに入れておかしくない駄作がこんなにあるのも、困った話である。脚本の段階で、出来の悪さを見抜けないプロデューサーも問題だが、元の脚本は出来は悪くないと聞く「TAJOMARU」や「アマルフィ」が、プロデューサーがいじりまくってダメにしてしまったり、原作は面白いのに、映画になると駄作になってしまった「MW−ムウ−」、「笑う警官」、「真夏のオリオン」、「さまよう刃」の例など、どこかにシステムの欠陥があるに違いない。真剣に考えてもらわないと、せっかく持ち直している日本映画に、再び“二番底”が来ないとも限らない。映画関係者に、対策を切に望みたい。

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