恒例の、私の選んだ2007年度・ベスト20を発表します。例年通り、邦画・洋画の区別なしに20本の作品を選び、順位をつけてみました。
選考基準は、2007年1月〜12月の間に大阪にて公開されたものが対象となっております。
順位 | 作 品 名 | 監 督 名 | 採 点 |
1 | 善き人のためのソナタ | フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク | |
2 | 河童のクゥと夏休み | 原 恵一 | |
3 | パンズ・ラビリンス | ギレルモ・デル・トロ | |
4 | それでもボクはやってない | 周防 正行 | |
5 | 天然コケッコー | 山下 敦弘 | |
6 | ボルベール<帰郷> | ペドロ・アルモドバル | |
7 | バベル | アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ | |
8 | ALWAYS 続・三丁目の夕日 | 山崎 貴 | |
9 | ヘアスプレー | アダム・シャンクマン | |
10 | ドリームガールズ | ビル・コンドン | |
11 | キサラギ | 佐藤 祐市 | |
12 | 夕凪の街 桜の国 | 佐々部 清 | |
13 | ブラックブック | ポール・ヴァーホーヴェン | |
14 | ボビー | エミリオ・エステベス | |
15 | 自虐の詩 | 堤 幸彦 | |
16 | デス・プルーフ in グラインドハウス | クエンティン・タランティーノ | |
17 | スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ | 三池 崇史 | |
18 | あるいは裏切りという名の犬 | オリヴィエ・マルシャル | |
19 | めがね | 荻上 直子 | |
20 | シッコ | マイケル・ムーア | |
次 | パッチギ! Love&Peace | 井筒 和幸 |
個々の作品評については、以下の文中のリンクバー付タイトルをクリックすると、それぞれの批評ページに飛びますのでそちらを参照してください。 (ここに戻る場合はツールバーの「戻る」を使ってください)
私のベストワンは、「善き人のためのソナタ」。激動の歴史の一断面を描きながら、人間ドラマとしても、サスペンス・ドラマとしても見事な出来。特にラストシーンは、“見事に決まったエンディング”のベストテン(そんなのがあればの話ですが(笑))に入れたいくらいの出色の出来です。
2位は「河童のクゥと夏休み」。原恵一監督は「クレヨンしんちゃん」以来、ずっと新作を楽しみにしていた監督。子供も大人も楽しめて、しかも人間の存在についても深く考えさせてくれる秀作…というのはめったにありません。貴重な逸材です。キネ旬のベストテンでも5位にランクインしましたが、キネ旬ベストテン邦画部門で、スタジオ・ジブリ作品以外のアニメ作品がベストテンに入ったのは史上初めてとか。まさに快挙です。
3位はギレルモ・デル・トロ監督の、これも激動の歴史とファンタジーをリンクさせた傑作「パンズ・ラビリンス」。…それにしても、日本映画でも、これら洋画1〜2位作品のような、激動の歴史をテーマに、ズシリと胸に響く秀作を作って欲しいものです。
4位は、あらゆる映画賞を総ナメにしている周防正行監督の「それでもボクはやってない」。テーマの取り上げ方のユニークさと、それをきっちりエンタティンメントにして、しかも考えさせられる問題作に仕上げる映画作りのうまさは、師匠とも言える伊丹十三監督を超えた…と言えるでしょう。―それにしても、11年ものブランクは日本映画にとってももったいない事です。年1作くらいのペースで、どんどん映画を作ってください。
5位は山下敦弘監督「天然コケッコー」。凄いペースで、映画作りがどんどんうまくなって来た天才監督。まだ若いだけに、どこまで伸びるか、目が離せません。次回作が楽しみです。
6位「ボルベール<帰郷>」。よく考えれば、殺人、放火、死体遺棄…と、凄い事やってるのですが、スッとぼけたユーモラスな語り口でほのぼのとした気分にさせられるのが監督の魔術と言えましょう。うまい。
7位「バベル」。これも語り口のうまさで見せる力作。振り返れば、3位、6位、本作と、スペイン・メキシコ系監督が目立った1年と言えましょう。
8位に「ALWAYS 続・三丁目の夕日」。さすがに前作よりは落ちますが、やっぱりドッと泣かせてくれるツボがうまく配置され、楽しめた作品です。パート3も作って欲しいですね。
9位の「ヘアスプレー」は、楽しさでは本年随一でしょう。気分が落ち込んだ時などに見直せば、元気が湧いて来るかも知れません。10位もミュージカル「ドリームガールズ」。ジェニファー・ハドソンの熱唱は惚れ惚れします。やっぱりミュージカルは最高!…以上、ベストテンです。
11位「キサラギ」。脚本の勝利でしょう。古沢良太(脚本)は今後も注目です。
12位は「夕凪の街 桜の国」。静かに戦争の恐ろしさを訴える良心作。13位「ブラックブック」も戦争の空しさを描いてますが、国や監督が変わるとこうも違うという見本。いろんな戦争映画が作られ、みんなで考えて行く事はいつの時代でも必要だと思います。
14位「ボビー」。映画もいいですが、ボビーの語りかける名言をじっくり噛みしめたい作品でもあります。
15位「自虐の詩」。原作の味わいをうまく映画的にアダプトした堤幸彦監督の演出がお見事。
16位「デス・プルーフ
in グラインドハウス」、17位「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」は、日米おバカ映画対決。自分たちも楽しそうに、かつ観客も楽しませようと、あの手この手のサービスで映画の魅力を振り撒いています。もっともっと映画を楽しみましょう。
18位「あるいは裏切りという名の犬」。邦題を考えた配給会社もお見事。最近、こういったハードボイルドな題名の作品になかなか出会えません。原題そのままのカタカナ題名はちっと考えてもらいたいですね。
19位「めがね」。「かもめ食堂」に比べたらいま一つですが、でもやっぱり見終わると心がホッコリして来ます。こういう映画が、年に1本は作られて欲しいと思います。
20位「シッコ」。やはりマイケル・ムーアは着眼点がうまい。医療制度の問題点を、皮肉と笑いを取り混ぜ暴いて行く演出は、ドキュメンタリーとは思えない程見事にエンタティンメントしてます。日本でもこういうタイプのドキュメンタリーが作られないものでしょうか。
次点は井筒和幸監督「パッチギ!
Love&Peace」。難点はあるし、前作と比べればかなり落ちますが、批評にも書いたように、納得できない事に怒りをぶつける作家が今の時代、貴重である故に支持したいと思います。
以上でベスト21の紹介は終りですが、例によってテンから洩れた捨てがたい作品を以下に紹介いたします。
22位「ロッキー・ザ・ファイナル」。団塊世代としては応援したい作品。23位「世界最速のインディアン」、24位「サイドカーに犬」。は共に劇場で見逃し、DVDで観ました。どちらも素晴らしい出来で、ベストに入れたいとは思うのですが、昨年も書いた通り、基本的には劇場で観ないと映画の本当の良さは分からない…と思っておりますので残念ながらこんな位置に。
25位「プラネット・テラー in
グラインドハウス」。こういうおバカな映画も好きですね。26位「不都合な真実」。こちらはぐっと真面目に環境問題に取り組んだ力作ドキュメンタリー。27位「リトル・ミス・サンシャイン」。ホームドラマでロードムービーという変わった作品。好きですね。
28位「松ヶ根乱射事件」。山下敦弘監督のちょっと変わった味わいの佳作。新井浩文がいいです。日本版「ファーゴ」。
29位「転々」。三木聡監督の映画は始めて。過去の作品やテレビドラマ「時効警察」を見てればもっと楽しめるんでしょうけどね。でも独特のトボけたムードは捨て難いですね。彼の旧作も追いかけることにしましょう。
30位「今宵、フィッツジェラルド劇場で」。追悼、ロバート・アルトマン監督。 …以上、30位までです。
さて、例年やってますので、参考記録としてあと8本だけ追加しておきます。
31位「しゃべれども しゃべれども」、 32位「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語」、33位「陸に上がった軍艦」、34位「レミーのおいしいレストラン」、35位「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」、36位「ホリディ」、37位「ダイ・ハード
4.0」、38位「プレステージ」。
なお、諸事情で多忙であった為、かなりの数の重要な作品を見逃しており、不完全なベスト作品選出である事をお断りしておきます。参考として、観ておればベスト20に入ったかも知れない作品名を一応列挙しておきます。
「サッド・ヴァケイション」(監督・青山真治)、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(監督・吉田大八)、「長江哀歌」(監督・ジャ・ジャンクー)、「クィーン」(監督・スティーブン・フリアーズ)、「ゾディアック」(監督・デヴィッド・フィンチャー)。
その他に、番外として、深作健太監督「エクスクロス 魔境伝説」に、おバカ映画大賞を謹んで献上いたします(笑)。
※ ワーストテンもUPしましたので、そちらもご覧ください。