恒例の、2007年度の私の選んだワーストテンを発表します。例年の通り、単にくだらない作品よりも、この人なら活躍するはずだ…と期待している作家がその期待を大きく裏切った場合に、厳しく採点しているケースがあります。対象期間はベスト20と同様、'2007年1月〜12月。なお、ベスト20と同様、アンダーライン付の作品名なら、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
俺は、君のためにこそ死ににいく 新城 卓
天国は待ってくれる 土岐 善将
大日本人 松本 人志
女帝 −エンペラー− フォン・シャオガン
ミッドナイト イーグル 成島 出
サンシャイン2057 ダニー・ボイル
蒼き狼 地果て海尽きるまで 澤井 信一郎
オリヲン座からの招待状 三枝 健起
椿三十郎 森田 芳光
10 愛の流刑地 鶴橋 康夫
大統領暗殺 ガブリエル・レンジ

 

 ワーストワンは文句なし。「俺は、君のためにこそ死ににいく」。問題点は作品評を参照。ヒドい脚本にヒドい演出。もっとまともな映画作ってください。ついでだが題名は、「死ににいく」じゃなくて「死にに行く」が正しいと思う。

 2位の「天国は待ってくれる」もお粗末な出来。ルビッチュの名作の題名拝借するなら、あの作品をじっくり見直してリスペクトでもしてくれてたら面白かったのだが。新人監督だから大目に見たい所だが、昨年度で、あまりのつまらなさに席を立ちたくなったのがこれと3位の2本だけだったので。

 その3位「大日本人」。これも作品評参照。何を狙ったのか意味不明。お笑いなら、徹底して笑わせて欲しい。笑うに笑えない個人のマスターベーション・ムービーを見せられても困ってしまう。一般劇場でなく、ファンの集いで個人上映会でも勝手にやってください。

 4位女帝 −エンペラー−」。ハムレットを下敷にした歴史ドラマ。…のはずだが、ワイヤー・アクションてんこ盛りの荒唐無稽ドラマにしてしまってどうする? ましてや、公開処刑シーンまでワイヤーでサーカスやってるのには、これはコメディか?と絶句した。ワイヤー・アクションって、本来ナンセンス極まりないマンガチックなもので、そのハシリとも言える「スウォーズマン」なんかを観れば一目瞭然(チャン・イーモウ「HERO<英雄>」は武侠アクションだからまだ見れた)。昨年のチェン・カイコー作品「PROMISE」もおんなじミスやらかしたのにまだ懲りていない。ついでだが、邦題も“女帝”ならエンプレスだろう。とことん人をバカにした珍品である。

 5位「ミッドナイト イーグル」。映画を見てて、いっぱい疑問符が頭に浮かぶのでは困る。原作ではちゃんと出てる、北の国名をボカしているのもダラシがない。とにかく、泣きのシーンを延々ダラダラやるのはもうこれっきりにして欲しいものである。

 6位「サンシャイン2057」。以前作られた「クライシス2050」の2番煎じ企画。ご丁寧にもどっちにも日本人俳優が1人参加している。まあそれでも出だしは「2001年宇宙の旅」風でちょっと期待させられたが、後半突然ホラーになるのには参った。要するに、あれもこれもといろんな要素をゴッタ煮に詰め込んで収拾不能になったようである。一番困るのは、毎度の事ながら何でも“核爆弾ぶちこめばすべて解決”というイージーな設定。そんなに都合よく、地球にほどほどの太陽光線が回復すると思ってる所がノー天気(それより、太陽が放射能で汚染されてしまう。そっちの方が余計コワいと思うが…)。この設定だけでワーストの資格は十分である。

 7位「蒼き狼 地果て海尽きるまで」。ずっと昔、井上靖の原作を読んで感動し、これは是非映画にして欲しい…と願っていた作品である。しかし題名こそ同じだが、原作は井上靖でなく森村誠一。嫌な予感がしたが、案の定、井上文学の感動とは程遠い退屈な作品になっていた。なんで井上靖原作を使わなかったのか。一番残念なのは、監督が澤井信一郎だったという事。澤井監督は私のお気に入りで、「野菊の墓」「Wの悲劇」「わが愛の譜 滝廉太郎物語」「時雨の記」などの素敵な作品を作って来た人である。「アラビアのロレンス」ばりのスケール感と風格ある歴史ロマンを期待するのは当然である。映画もがっかりだったが、澤井さんとも思えない雑な作りに、むしろ澤井監督のスランプを心配してしまう(ここ数年の作品もロクなのがない)。こういう名匠に、資質に合った意欲作を作らせない日本映画界の現状こそ問題である。

 8位「オリヲン座からの招待状」。これも作品評参照。いい題材で、いい役者が揃ってるのにもったいない。

 9位「椿三十郎」。う〜ん、ワーストに入れるほどの事はない…とは思いつつも、黒澤チームが練りに練って精魂込めて作り上げた名シナリオなのに、そのポイントを読み違えている森田芳光監督の中途半端な演出にガッカリ(詳細は作品評および別項参照)。チャンバラ映画は、チャンバラを撮り慣れた監督にまかせるべきだった(と言ってもなかなかいないが。深作欣二が健在なら適任だった)。森田は天才だと今でも思ってるし、いつも期待しているからこそ辛口評価となる。映画史に残る大傑作をいつか作ってよ、気長に待ってるから。

 10位「愛の流刑地」。鶴橋康夫さんは期待してるのに、こんなフヤけたもの作っちゃいかんでしょう。テレビで見せた骨太の人間観察眼はどこへいっちゃったんでしょう。だいたい、「赤目四十八瀧心中未遂」「バイブレータ」であれほど見事な演技を見せた寺島しのぶが(濡れ場は凄いけど)、気のせいかも一つ存在感がない。まあ原作もエロ描写ばかりでヒドいものですが(笑)。

 次点「大統領暗殺」。ドキュメンタリー映像を使って、ドキュメンタリー風トンデモ・フィクションを作ると言う発想は面白かったのだが、後半はてんで尻すぼみ。現役のブッシュ大統領を殺してしまうのだから、どうせなら全編ブラック・ユーモアで統一し、国家や権威を笑い飛ばせば凄い傑作になったかも知れないのに、もったいない話である。
 

 で、テンを見直せば、10本中8本が日本映画。まあ、私も忙しくてワースト該当作を見つける余裕がなかった事もあるが、こんな事をやってるから今年はまたもや日本映画の興行収入シェアが外国映画に負けてしまったのである。映画の出来はともかく、「茶々 天涯の貴妃(おんな)」(この題名のセンスもヒドい)製作に至る東映首脳陣の迷走ぶりもワースト賞ものである。そう言えばワーストワンも東映作品だ。
そんな諸々で、今年は、特別賞を東映株式会社に進呈したい(笑)。

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