スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ  (東映:深作 健太 監督)

 

Sukebandeka 懐かしいタイトルである。ほぼ20年前、フジテレビ系で放映され、パート3まで作られた人気少女アクション・ドラマ、久々の復活である。

 元々、セーラー服の美少女が特命刑事となって大暴れするという設定からして荒唐無稽、デタラメなお話である。しかも、シリーズが進むにつれ、そのデタラメさはエスカレートする一方。パート2では子供の時から鉄仮面をかぶせられ育った少女、パート3に至ってはなんと!忍者対忍者の対決に後半は魔界で電撃放つ暗黒皇帝と決戦(なんじゃ〜そりゃ??)、「スター・ウォーズ」のパロディも盛大に飛び出すハチャメチャ状態に至ったことは語り草(スケバンも刑事もどこかにすっ飛んでしまった(笑))。

 今回の新作は、そんな暴走を重ね収拾がつかなくなった後半シリーズから軌道修正、正統(?)路線のパート1のほぼ続編的なお話になっている。

 内容的にも、母の釈放との引き換え、爆弾魔、イジメ、クライマックスにおける宿敵美少女との対決…等々、パート1のストーリー骨子が巧みに散りばめられており、そのうえ、主人公の母親役を演じているのがパート1の麻宮サキ役、斉藤由貴なのだから、パート1を楽しんで見ていたファンにとっては懐かしさで胸一杯になることだろう。

 そういう展開を無理に当てはめたせいか、お話としてはやや纏まりに欠け、あちこち突っ込みどころの多い作品になってしまったようである。

 だが、所詮はB級アクション映画、余り細かい所にこだわらず、気楽に楽しめばいい。美少女、松浦亜弥と石川梨華の体ピチピチコスチュームによるヨーヨー対決アクション・シーンはなかなか色っぽく派手で楽しいし、シリーズお馴染みのサポート役、吉良(竹内力)との友情にも似た交流も爽やかな余韻を残す。(以下ネタバレです。ドラッグ反転させてください)

この吉良が、昔母を体を張って助けたことがあり(足を引きずっているのはそれが理由)、このことからあるいは吉良がサキ(娘の方)の父ではないかという事を匂わせている。それが、最後の別れの場面を引き立たせて、いい幕切れとなっている。
↑ネタバレここまで

 深作健太の演出は、手馴れて来たようで悪くはない。前作「同じ月を見ている」は中途半端に脚本を弄って凡作になってしまったが、本作はやや挽回、Vシネマをちょっと予算をかけた程度の、肩の凝らないB級アクションとしては普通の出来で(ラストの決闘場が廃工場―というのがまさにVシネマ的である)、むしろ冒頭の、レクター博士ばりの拘束衣とか、最初はヨーヨーの使い方が慣れず、おデコに当ててひっくり返る…などのお遊びに凝る余裕も見せ、なかなか楽しませてくれる。カメラワークもまずまずだが、ところどころ親父さんが得意とした手持ちカメラを使っているのが微笑ましくてニヤリとさせられた。

 当分はこの調子で気楽なアクション映画で腕を磨いて欲しい。本作は雇われ監督の域を出ておらず、その点では可もなし不可もなし…の出来であるが、どうしても親父さんと比べられてしまうのは仕方のない所。とにかく本数をこなして、そのうちいつか自分のスタイルを確立してくれる事を期待して、気長に待ちたいと思う。

 

 蛇足だが、本作のプロデューサーは、黒澤満氏、そして脚本がこれも久しぶりの丸山昇一!…とくれば映画ファンには懐かしい名前である。

 この二人が組んだ話題作としては、いずれも松田優作主演、「処刑遊戯」(丸山昇一劇場デビュー作)、「野獣死すべし」(共に村川透監督)、「ヨコハマBJブルース」(工藤栄一監督)、「ア・ホーマンス」(松田優作監督)などがあり、テレビの「探偵物語」もこのトリオの作品。またヒット・シリーズとなったテレビ「あぶない刑事」の初期スタイルを形作ったのも黒澤=丸山コンビである。

 一時期の、東映B級アクション・ワールドを着実に支えていたのが、この二人であった。

ちなみに、親父さん(深作欣二)のアクションの快作「いつかギラギラする日」も、丸山昇一脚本である。
 いつの日か、健太監督に「いつかギラギラする日」のようなアクション映画を撮って欲しい。…丸山昇一の名を見て、そんな事を思ってしまった。