時をかける少女   (角川ヘラルド:細田 守 監督)  

 

 かつて大林宣彦監督、角川春樹監督によって2度も映画化された、筒井康隆原作のジュブナイルSFファンタジーの3度目のリメイク。
・・・とは言っても、前2作と大きく異なるのは、まずアニメである事と、次に主人公もストーリーもまったく原作と異なる。簡単に言えば、題名と、少女がタイムスリップするという設定のみを借りた、オリジナル作品と言ってもいい。
 この夏の某アニメも原作を大幅に変えて顰蹙を買っているので、ちょっと不安になったが、結論から言って、面白く、そして感動した。これは意外な拾い物(と言っては失礼になるか)の秀作である。
 主人公、紺野真琴は元気な高校生。何故か千昭と功介という2人の同級生の男の子とキャッチボールをするのが趣味。
 ある日、自転車で学校から帰宅途中、坂道でブレーキが利かず踏切に激突、電車に撥ねられる…と思った瞬間、彼女は数分前に戻っていた。
 この時から以降、真琴は思いっきり跳んだ時に過去に戻れることを知り、その能力に夢中になって何度も過去に戻る事を楽しむようになる(タイムスリップではなく、“タイムリープ”と劇中では呼ばれる)。
 笑えるのは、せっかくの超能力を得た…というのに、真琴が利用するのは、妹に食べられたプリンを過去に戻って先に食べる…とか、カラオケに行って、何度もリープして長時間歌い続ける…とか、セコイ(笑)ことばかり。
 タイムリープしたい時に、毎回ジャンプした後、派手にひっくり返ってはどんがらがっしゃんと扉やロッカーにぶち当る描写もいかにもアニメ的で笑える。生身の人間が演じたら痛そうであまり笑えるものではない(宣材でよく見る左の絵は、実はとんでもない所からのジャンプである。これには大笑いした)。
 また、千昭と功介との三人模様の微妙なバランスが、功介を好きな少女が現われ、千昭からは愛の告白をされるなどで崩れそうになると、その都度リセットする…という真琴の心理も面白い。タイムリープは、そうした“三人の友情をいつまでも続けたい”と願う真琴の思いの具現化―と言えるのかも知れない。
 そうした、ドタバタコメディ調の前半から、後半は一転、サスペンスと、少女の切ない思いに感動する展開となる。緩急をうまくミックスした細田守監督の演出は見事である。
 
 何度も過去にタイムリープするという話では、昨年「バタフライ・エフェクト」という傑作があった。
 今起きた事をなかった事にしたい為に過去に戻るが、却って状況を悪くしては又リセットし、しかしそれが又違う悪い結果をもたらす…という展開も「バタフライ…」と似ている。
 しかし、こちらの作品はもっと楽しい。躍動感がある。笑いがある。そしてラストでは切なくなり、ホロッとさせられる
 映画とは、やはりこうあるべきである。・・・・ましてや、子供や若い人が観るアニメならなおさらである。
 くどいようだが、某アニメ(どうせ分かるから言ってしまうと「ゲド戦記」のこと)、がダメなのは、こうしたアニメ(を含むエンタティンメント)に不可欠な笑い、躍動感、楽しさ、明るさ、そして夢…が決定的に欠けているからである。
 この夏のアニメ対決…は、圧倒的に「時をかける少女」の勝ちである(でも興行的には「ゲド−」の方が上なんでしょうね。悔しいけど)。