サウンド・オブ・サンダー  (ワーナー:ピーター・ハイアムス 監督)

 SF界の大御所、レイ・ブラッドベリの短編小説の映画化。監督は秀作「カプリコン・1」をはじめ、「2010」、「アウトランド」、「タイムコップ」など、SF映画は得意のピーター・ハイアムス。

 西暦2055年、タイムトラベルが可能となった時代、旅行社が6,500万年前の白亜紀に恐竜ハンティングに行くツァーを企画する。歴史を変えたら大変な事になるので、もともと現地で死ぬ運命にある恐竜を倒すだけとし、過去からは何も持って帰ってはならない等の厳しい条件でツァーを行っている。ところが、客の一人がうっかりあるものを持ち帰ったために、地球の進化が大きく狂い、人類全滅の危機が訪れる。果たして人類は過去を復元し、歴史を元に戻す事が出来るのか…。
 まあ、このパターンは昔からよく使われており、有名な所では「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」でも、スポーツ年鑑を過去に持ち込んだ為に、現代が大変な事になっていた。藤子・F・不二雄原作の映画「ドラえもん・のび太のパラレル西遊記」も、同じような話であった。1952年に書かれたブラッドベリの原作は、現代が大変な状況になった所で終わっており、原作にない、再び過去に戻って時間軸を元に戻そうとするくだりは、どうも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をパクっているフシがうかがえる。まあ「バック・トゥ−」自身もブラッドベリ原作を前半部分のヒントにしたかも知れないのでおあいこと言えなくもないが(笑)。
 クランクイン後、製作会社が倒産したりで一時は製作中止寸前にまで追い込まれたようだ。そんな事情もあってか、SFXは最近のSF作品に比べたらかなり雑で安っぽい。その点をとらえて、ネットレビュー等では相当酷評されているようだ。しかし私はSFXがチープだろうが、大した問題ではないと思っている。要は、映画そのものが面白いかどうかという点にあるのだから。むしろ、SFXは凄いけど、映画はてんでつまらない作品の方がよっぽど腹が立つ。「ザ・コア」とか「ステルス」などはその典型である。
 本作は、私の独断と偏見だが、製作時のトラブルを逆手に取って、あえてB級映画的な面白さを狙ったのではないかと思っている。大量の虫(?)に襲われたり、ヒヒと爬虫類のアイの子のような怪物が大暴れしたりするシーンは、まさにかつてロジャー・コーマンが量産していたB級SF映画のノリである。未来都市の造形や、車のデザインなど、細部にもなかなかのこだわりが見られ(それらの造形スタッフとして、あの「ブレード・ランナー」のシド・ミードの名もクレジットに見る事が出来る)、私は結構楽しめた。ラストはちょっと甘い気もするが、トラブルを乗り越えここまで仕上げた職人ピーター・ハイアムスの頑張りに免じて許そう。    (