男たちの大和 YAMATO    (東映:佐藤 純彌 監督)

 作家の辺見じゅんが、終戦間際、片道燃料で出航し、壮絶な戦闘の末に轟沈した戦艦大和の生き残り兵や遺族から聞き取った話をまとめた同名のドキュメントをもとに、角川春樹が製作し、ベテラン佐藤純彌監督がメガホンを取った戦記大作。
 終戦後60年という節目の年にふさわしい、あの戦争と正面から向き合った力作である。監督の佐藤純彌は「陸軍残虐物語」でデビューし、「最後の特攻隊」という骨太の戦争映画も手掛けた人。最近はやや低調気味だったが、さすが、こういうジャンルの作品だと水を得た魚の如く、往年のダイナミックな演出タッチを復活させており、見応えがあった。興行的にもいい数字を出しているようで、まずは喜ばしいことである。
 戦争映画を作るということは、案外難しい。「ローレライ」のようなゲーム感覚的エンタティンメントならともかく、生真面目に悲壮感たっぷりに描くと暗くてやりきれないし、描き方によっては左・右どちらかの陣営から非難が浴びせられる。本作はその点、大和に乗り込んだ少年兵・神尾(松山ケンイチ)の目を通して、あくまで下級の若い兵士たちの群像劇として描いており、地獄のような戦場の只中で、上層部が引き起こした戦争によって翻弄され、それでも愛する人たちを守るために戦い続ける男たちの心情、そして、彼らに「生きて帰って欲しい」と願い続ける女たちの悲痛な思い…をそれぞれ的確に伝えることに成功している。
 戦闘シーンは、酸鼻を極める惨たらしさで、CGを駆使したSFXも臨場感たっぷり。戦争とは、これほどに過酷で、愛する人たちの命を酷く、はかなく奪い取って行くものなのである。そうした名もなき兵士や女たちのほとばしる命の輝きに比して、艦長や司令官たちの(渡哲也などの実力派が演じているにもかかわらず)なんたる影の薄さよ。さすがは、「陸軍残虐物語」で軍隊の非人間性を鋭く追及した佐藤監督ならではである。
 現在のシーンにおいて、生き残った神尾(仲代達矢)とともに大和の沈没地点に到達した少年(かつての神尾たちと同じ15歳)が、神尾の思い出話を聞いて、何かを学んだように毅然と舵を取るシーンに、この映画のテーマが凝縮されている。そう、戦争を体験した世代は、その真実を次の世代に伝えて行くべきなのである。「今まで生きて来た、その意味がようやく分かった」とつぶやく神尾の言葉が、それ故重く心に響く。
 戦争映画としては、同じ東映の「二百三高地」(舛田利雄監督)に次ぐ秀作である。       (

 

  小説・男たちの大和――映画とほぼ内容は同じです       こちらは批評でも紹介した佐藤純彌監督作品(いずれもDVD)