コープス・ブライド    (ワーナー:ティム・バートン/マイク・ジョンソン 監督)

 「チャーリーとチョコレート工場」がヒットしているティム・バートン監督だが、その「チョコレート工場」と並行して製作・完成させたのが本作。これはまたバートン監督が愛してやまない、ストップモーション・アニメである。人形を1コマづつ動かして撮影するので、わずか2秒程度のシーンの撮影に12時間もかかったという。CGならもっと簡単に出来る今の時代に、それほどの手間をかける目的はどこにあるかと言えば、それはこの映画を観れば分かる。ひと言で言えば、“手作りの温か味”であろうか。人形であるにも拘らず、人間よりも人間らしい、バートンによって命を吹き込まれた彼らのキュートさ、演技の素晴らしさ。これは秀作だった「チョコレート工場」をも上回る見応えのある力作である。
 親同士の思惑で結婚することになった内気な青年ビクター(声:ジョニー・デップ)。相手の娘・ビクトリアの可憐さに惹かれるが、リハーサルでは失敗ばかり。その為、暗い森で練習していたところ、誤解から亡霊の花嫁(コープス・ブライド)エミリーがプロポーズされたと思い込み、黄泉の国で式を挙げようとする。最初は何とか逃れようとしていたビクターだが、一途な思いのエミリーにもやがて心惹かれるようになる。さて、ビクターはこの難問をどう乗り越え、ビクトリアとは果たして結ばれるのか…。
 現実世界がほとんどモノクロで、霊界が明るいカラーというのもバートンらしい皮肉である。実際現世の人たちは、ビクトリアを除いて皆冷たくて打算的なエゴイストばかりである。対して、霊界のガイコツたちは、底抜けに陽気で人間味(?)に溢れている。身体が半分腐っているエミリーに対しても、次第にビクターも、我々観客ですら愛おしく思えて来る。人形アニメにしたのは大正解。生身の人間が演じたなら、不気味すぎてついて行けないだろう。霊界で再会したビクターの愛犬も、骸骨であるにも拘らずとても可愛らしい。
 そしてクライマックス、エミリーを殺した犯人が判明し、気弱だったビクターは勇気を振り絞って犯人の男と戦う。ラストはあえて書かないが、エミリーの悲しい思いやりと決断に観客は涙することだろう。観終わって爽やかな感動に包まれること請け合いである。
 作家は常に原点に回帰すると言うが、元々ディズニーのアニメーター出身であったバートンが、アニメに渾身の熱意を示すのもそういう意味ではよく分かる。そして気弱なビクターにはデビュー作のアニメ「ヴィンセント」の主人公が投影されているようだし、骸骨の愛犬は2作目の「フランケンウィニー」を、死者たちの陽気なバカ騒ぎは「ビートルジュース」、人間と異形の怪物との切なく悲しい愛は「シザーハンズ」をそれぞれ彷彿とさせる。そういう意味では、本作はバートン映画の集大成であるとも言えるだろう。楽しくて、笑えて、ラストはホロリと泣けて感動する、これは本年屈指の傑作である。必見。