チャーリーとチョコレート工場    (ワーナー:ティム・バートン 監督)

 短篇小説集「あなたに似た人」や、映画「チキ・チキ・バン・バン」(原作はイアン・フレミング)の脚色などでも知られるロアルド・ダールの同名ベストセラー童話を、ティム・バートン監督がほぼ原作に忠実に映画化。
 ある日、ウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)という、ちょっと変わった男が経営するチョコレート工場に、世界で5人の子供たちが招待されることになり、貧しい少年チャーリーはやっとの思いでその5人の一人に選ばれる。付き添いの大人を含めた10人は、チョコレートとお菓子に溢れた不思議な工場内を見学することになるのだが…。
 ウォンカを演じるデップのぶっ飛んだキャラクターが楽しいし、工場内の極彩色のメルヘンチックなビジュアルも素敵。チャーリーを除く、食い意地張ってたり、金持ちやエリートの傲慢な子供たちが工場内で酷い目に遭うあたりのえげつない描写がいかにもバートンらしい。そして最高に楽しいのが、工場で働く小人族・ウンパ・ルンパの歌って踊るミュージカル・シーン。ここはあのエスター・ウィリアムズ主演のMGMミュージカルの名シーンを絶妙にパロっているので映画ファンには応えられないだろう。他にも、「2001年宇宙の旅」やら、何やら、いろんな映画のパロディが随所に出てくるので、映画ファンは片時も目を離さないように(バートン遊んでるなぁ。しかし、子供や初心者映画ファンには分かるまい(笑))。―そしてラスト。ここは原作と異なっている。観ていない人のためにここでは触れないが、とても爽やかで、私はこのラストが好きである。
 これまでにも、「シザー・ハンズ」、「ビートルジュース」、「ジャイアント・ピーチ」(製作のみ。ちなみにこれも原作はロアルド・ダール)などのキッチュでブラックなファンタジーを作って来たバートンらしく、子供向けの童話であるにも拘らず、大人の観客がニヤリとするブラックな笑いに満ちた快作になっている。しかし反面、前作「ビッグ・フィッシュ」にも感じられた、“父親への思いを中心とした家族愛”というテーマも本作に満ちており、単なる童話の映画化を超えて、見応えあるドラマになっている(本作に登場する、ウォンカの少年時代と父親のエピソードは原作にはないオリジナル)。ファンタジー映画としては最近の中で最も楽しめる作品である。おススメ。      


   
原作本
    柳瀬尚紀・翻訳
         
    柳瀬翻訳は、登場人物の名前を「イボダラーケ」とか「ブクブクスキー」とか、ちょっとふざけたものに変えてあります。
    評価は分かれる所ですが、読まれる方はそのつもりで…。