チーム★アメリカ/ワールドポリス  パラマウント:トレイ・パーカー 監督)

 下品なカルト・アニメ「サウスパーク」を作ったトレイ・パーカーとマット・ストーン(今回は製作と脚本のみ)コンビによる、やっぱり下品でエゲツない人形劇映画の怪作。

 前作はアニメーションだったが、今回は昔懐かしいマリオネットによる人形劇仕様。観れば分かるが、かつて人気を誇り、最近は実写でリメイクもされた「サンダーバード」のオマージュ(と言うかパロディ)になっている。題名通り、世界の警察として活躍する国際警備組織“チーム・アメリカ”の活躍を描く…わけなのだが、テロリスト壊滅の名目で、所かまわずロケット砲やミサイルをぶっ放し、パリにおいてエッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館から、はてはエジプトのスフィンクスや古代遺跡に至るまで、次々破壊してしまう。これはまさに“世界の警察”を自認し、実際にはなかった大量破壊兵器所持を理由にイラクを攻撃し、爆撃で施設を破壊し、多くの死者をだしたアメリカ(ブッシュ大統領)のやり方を徹底的に批判しているわけなのだが、映画はそれだけに留まらず、北朝鮮の金正日(実名で登場!)、返す刀で「華氏911」のマイケル・ムーア、リベラル映画人のアレック・ボールドウィン、ショーン・ペンその他まで、(すべて実名で)容赦なく血祭りに上げて行く。まさに怖いもの知らず、主人公は盛大にゲロを吐くし、人形同士のセックス・シーンもありと、あらゆるタブーをぶち破って行く。あまりの下品さと過激さに、体調の悪い人は気分が悪くなるかも知れない。しかし、ブラック・ジョークが分かる人には絶対に楽しい、ここまで行くと却って爽快にさえ思えるくらいの、超過激おバカ・ムービーである。「サウスパーク」と同様、ミュージカル仕立てで、特に金正日が権力者としての寂しさを歌うナンバーは必聴。エンディングでは、マイケル・ベイ監督の「パール・ハーバー」を徹底的にコキ下ろすナンバーが歌われ、これも同感である私にはとても楽しかった(笑)。マリオネットは糸がまる見え、歩き方がモタついているのもすべてワザとである。昔のマリオネットはみんなあんな感じだった。「サンダーバード」や「スーパーカー」などのマリオネット・TVドラマを楽しんだ我々世代にとってはとりわけ懐かしく、しかしそうしたレトロな、のんびりと平和だった時代はもう帰って来ない事を認識して余計心に沁みた。そんなわけで、個人的には好きな作品であるが、「サウスパーク」を楽しめた方以外にはお奨めできない劇薬ムービーであると忠告しておこう。