Mr.インクレディブル  (ピクサー=ディズニー:ブラッド・バード 監督)

 いまやすっかり信頼ブランドとなった、ピクサー社のCGアニメ最新作。今回は同社作品として、初めての“人間”が主人公のドラマ。そして監督が、あの秀作「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バードである。この組み合わせは大期待であった。そして本作は期待にたがわぬ楽しい快作となっている。
 着想が面白い。スーパー・ヒーローがそのパワーの勢い余ってトラブルを頻発させた結果、社会から逆に非難され、今ではそのパワーを封印して社会人として暮している。子供たちもその超能力が使えずフラストレーションを溜めている。…そんな時、普通の人間なのにヒーローになりたい男が、彼らに復讐を始める。そしてMr.インクレディブル一家は敢然と彼と対決することとなる。
 「アイアン・ジャイアント」でも、自己のアイデンティティに悩むジャイアントの姿が哀愁味を誘ったが、本作でも単なるノー天気なアクションになっていない。ヒーローはどうあるべきか、家庭を守り、家族を愛する父親としてどう戦うべきなのか―。そうしたテーマを踏まえつつ、全編007とか「ミッション・インポッシブル」のパロディや、派手なアクション、そしてスーパー・ヒーローもののパターンをひねったギャグを満載し、スカッと楽しめ、かつ家族愛にちょっぴりホロッとさせてもくれる。エンタティンメントとしては申し分ない出来になっている。前作「ファインディング・ニモ」は私にはもう一つつまらない出来であったが、本作はそれを挽回する面白さである。ケッサクなのは、スーパー・ヒーローにつきもののマントが重要な伏線になっている点。これは本編をこれから観られる方は是非頭に留めといてください。